初めて…
〈エミ視点〉
アキラ「さてと…警察呼ぶか?」
シュウ「・・・どうする?」
シュウ先輩と多分アキラ先輩の声が聞こえて
沙優ちゃんが先輩達を連れて来てくれたんだと分かった
沙優ちゃんにもありがとうって…
遅くにごめんねって言いたいけど…
今はこのままが良かった…
カオル先輩のあの香水の匂いのする
この腕の中で何も考えずにただ目を閉じていたかった…
皆んなの声が段々と遠く聞こえ出し
カオル先輩のゆっくりと穏やかに流れる
心臓の音だけが聞こえている
( ・・・・気持ちいい… )
頭を優しく撫でられている感触にゆっくりと目を開けると
辺りは暗く自分の体が横になっている事に気付いた
「・・・カオル…先輩?」
目の前にあるのはきっとカオル先輩の胸元だろうと思い
そう呟くと「起きたんだね」と先輩の優しい声が聞こえた
髪を撫でる手は止まらないままで
心地良い気分だったから前の様にカオル先輩の胸に顔を擦り寄せた
ここが何処なのかも予想はついていて
先輩の胸の中で2ヶ月前のあの日の事を思い出していると…
( ・・・ぁっ… )
「・・・カオル先輩…」
カオル「ん?」
「・・・ぉ誕生日……おめでとうこまざいます…」
ずっと言えないままで…
もう直接言うのは無理かもしれないなと
思っていた言葉で…
やっと言えた気がする…
どうしても伝えたかった…
19歳の私の誕生日にこの人は
0時に電話をかけてきてくれて…
この部屋で甘いケーキと甘いお酒と…
甘い時間をくれたから…
だから…おめでとうと伝えたかった…
カオル「・・・・誕生日プレゼント…俺もワガママ言ってもいい?」
「ワガママですか?」
カオル「そう…ワガママ1つ聞いて…笑実ちゃん」
カオル先輩は髪を撫でていた手を止めると
ギュッと抱きしめてきて小さな声でゴメンねと聞こえた
カオル「あの日の事許して」
「・・・・・」
カオル「仲直りしよう…」
あんな風に私の腕を掴んで怖い顔で睨みながら
酷い言葉を私に浴びせた先輩の口から
「仲直り」だなんて可愛い言葉が出てきたから
何だか可笑しく感じて「ふふ…」と小さく笑った
「許してあげます…笑」
カオル「ふっ…益々生意気になったね…笑」
この日が初めてだった…
キスもせずただ抱きしめられるのは…
ただずっとお互いのなんて事のない話をしていて…
初めて、カオル先輩から
ペットとしてじゃなく女の子として扱われた日だった
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