〈サユ視点〉









お店に着き1階の店舗を覗くと中の明かりはついていて

「笑実ちゃん」と呼びながらドアを叩くけど

誰の姿も見えずなんだか怖くなった…





( 普通…何にもなかったら出てくるんじゃ… )





スマホを取り出して笑実ちゃんに発信するけど

電話は繋がらなくてアキラ先輩が車の中で言っていた事が

現実になっているんじゃないかと不安になってきていると

シュウ先輩が「上も系列だったな」

とエレベーターの方へと行き

ドグン、ドグンと苦しくなる胸元を押さえながら

笑実ちゃんに発信し続けた





エレベーターから降りて直ぐ目の前にある

ドアを引くと鍵はかかってなく

中から笑実ちゃんのスマホの音が聞こえたから

ここにいるんだとホッとしながら

「笑実ちゃん」と名前んだ





部屋の奥にあるトイレから物音が聞こえ

行こうとするとシュウ先輩から腕を掴まれて

「危ないからここにいろ」と止められた




「でも…」と言いかけた瞬間トイレの方から

凄い音が聞こえてきてパッとシュウ先輩の顔を見ると

先輩も眉を寄せて様子を伺っているようだった






カオル先輩の笑実ちゃんを呼ぶ声が聞こえ

一歩ずつシュウ先輩の手を握ったまま近づいて行くと

カオル先輩の胸に顔を埋めて泣いている笑実ちゃんの姿が

目に入ってきた後にトイレの奥の壁にうずくまっている

店長の姿が見えシュウ先輩の手をギュッと掴んで

今頃になって涙が流れてきた…




自分の周りで…

しかも相手も知っている人で…




つい昨日までは「店長ってお父さんみたい」

といいながら慕っていたのに

まさか笑実ちゃんに変な事をしようとしていたなんて…

初めは信じられなかったけれど

この建物にたどり着いてから「まさか」って怖かった…





( ・・・・気持ち悪い… )





親子のような年齢差のある笑実ちゃんを

そんな目で見ていたなんて…気持ち悪く感じた…




そしてきっと笑実ちゃんはずっとその感情を持ったまま

働いていたんだろうと思うとまた涙が止まらなくなった…





「・・・・沙優ちゃん…あのね…」





きっといつも言いかけていたのはこの事だったんだろう…

笑実ちゃんはきっとこうなる日がくるような気がしていたんだ…





カオル先輩が笑実ちゃんを立たせようとすると

首を横に振って先輩の胸から

顔を離そうとしない笑実ちゃんに先輩は

「もう大丈夫だから一緒に帰ろう」

と言って優しくなだめていた





( あの日とは別人みたい… )




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