好きな人…

〈エミ視点〉







シュウ先輩が煙草が切れたから買ってくると立ち上がり

「沙優ちゃんにも豆乳買ってやろうか?笑」と

笑いながら揶揄うから「美味しいんですよ…」と呟くと

アハハと笑って沙優ちゃんと買い物に出て行った





カオル「それ本当に美味しい?笑」





私も豆乳はそんなに好きじゃないけど

イチゴ味がしっかりとついていて

この豆乳ジュースは美味しく感じていたから

「美味しいです」と答えた




カオル先輩は「絶対ウソだよ」と笑いながら立ち上がって

入り口にある照明スイッチをパチンと消し

ほんの少し暗くなった部屋でカオル先輩が

何をしようとしているのかも何となく分かった…





先輩は私の脇に手を入れて持ち上げようとするから

「えっ!?」と驚き抵抗するように動くと

「暴れないの!メッ!笑」とまるで犬か幼児に

言うかの様に私に言うからムッとして睨むと…





カオル「悪いけど全然怖くないよ」





そう笑いながらソファー型の椅子に腰を降ろして

私を向かい合う形で足の上に座らせた…




( ・・・・この体制…なんだか… )





数時間前にあのお店で見たショータイム中の体制に似ていて

なんとなく嫌だと感じ

足から降りようとするけれど

先輩が腰を押さえていてビクッともしなかった…





カオル「・・・・さっきは…ごめんね?」





カオル先輩の顔からあの笑顔は消えていて

ジッと私の目を見つめながら言ってきた…





カオル「沙優ちゃんから全部聞いたよ…」





「えっ??」





いつ聞いたんだろうと不思議に思ったけど

カラオケ屋に来て30分程してから沙優ちゃんが

トイレに行ったまま10分近く戻らなかった事を思い出した






カオル「体験入店をしなかったのは正解だよ?笑」





「・・・・なんでですか?」




カオル「笑実ちゃんの…可愛い胸だと…笑

   そういうのが好きな怖い奴らの

  餌食になっただろうからね?」

 




「・・・・・・」






やっぱりあの日…

胸を触った時に小さい胸だと思っていたんだと知り

自分の顔がムクれていくのが分かった…






カオル「触っていい?笑」





「・・・・ダメです…」





カオル「まだ一本目だしね?笑」






後ろのテーブルにある豆乳をチラッと見て

そう言う先輩の肩を軽くペシっと叩くと

「本当に美味しいか確認させてよ」と言って

私の頭の後ろに手を当てて先輩の方に近づけるから

初めてそっと目を閉じた…





嬉しかったから…

怖かったけど…あのバイトをするなと言ってくれた事が

嬉しくて初めて先輩のキスをちゃんと受け入れた…





カオル先輩の唇を感じると直ぐに舌が口内に

侵入してきた事が分かり「ンッ…」と小さく声が漏れ

腰と頭に添えられている手にギュッと力が入り

抱きしめられているみたいにお互いの身体がくっついていく





カオル「本当にイチゴの味だね…笑」





チュッと音を立てて唇を離すと

カオル先輩はテーブルに手を伸ばして

先輩のハイボールのグラスを手に取りゴクゴクッと飲むと

「少しずつお酒の味も覚えようか?」と言って

もう一度口付けてきたキスは大人な味がした…






( ・・・・多分…もうダメだ… )






カオル「次また、あんな店に出入りしてるの見つたら   

   カオル先輩がお仕置きするからね?笑」





「・・・・・・」






私だって別の子と遊んでばかりだとお仕置きしますよと

言いたいけど言えない…




だって私はカオル先輩の彼女でも何でもないから…

こんな風にキスをしてても先輩の特別な人ではないから…






( でも…カオル先輩は…私にとって… )






カオル「そろそろシュウ達が帰って来ちゃうから

    もう一度イチゴ味のキスさせてよ?」





私は身体を外らせて豆乳ジュースの入った紙パックを

手に取ってストローで一口吸って飲んでから

カオル先輩の顔を見つめると「いい子だね」と言って

頭を数回撫でてからまた抱きしめる様にキスをしてきた…





( ・・・私は…きっと先輩に恋をしているんだ… )






先輩に全くその気は無いし

明日にはまた別の子達とこんな事をしているんだろう…



きっと沢山泣くし

沢山傷付ついて…辛い片想いになると思う…






( それでも…カオル先輩が好きだから… )








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