終われる

〈エミ視点〉









サユ「遅くなってゴメンね?」




「ううん、ドライブできて楽しかったよ!笑」





沙優ちゃんは今回お母さんから車を譲ってもらう事になり

実家からコッチまで一人で運転するのが緊張するからと

沙優ちゃんの実家に一緒に行き車に乗って帰って来た





サユ「お礼に夕飯ご馳走するよ」





隣りの県から高速に乗れば直ぐだけど

いきなり高速の運転はハードルが高いからと

ずっと下道を通って帰り

もうすぐ20時半になろうとしていた





「じゃー学校近くのファミレスでご馳走になろうかな?笑」





お昼に皆んなでたまに行く

学校から徒歩10程度にある

チェーンファミレスに寄る事にしたけど…




「・・・・なっ…なんか…」




駐車場に入るとファミレスの入り口付近に

7〜8人の男の子達が座っていて

ヤンキーとかではないけど

何となくガラもそんなに良さ気には見えず…




コッチを見て何かを話しながら笑っているから

「違う所に行こうか?」と駐車場をグルッと回って

出て行こうとしたら男の子数人が車に近づいて来て

「なになに!?」と怖くなり

無視をして駐車場から出て行った





サユ「ビックリした…隣りの大学生かな?」




「車で良かったね?」と話していると

沙優ちゃんがミラーで後ろを見て「はっ?」と言い出し

振り返るとさっきのファミレスから出てきた車が

凄いスピードで追いかけてきて隣りに並ぶと

さっき近づいて来た数人の男の子達だった





サユ「えっ?何??追いかけて来てるの??」





その車は私達が曲がれば同じ方向へと曲がり

明らかにずっとついてくるから

段々と怖くなりだし「どうしよう…」と

逃げる様に角を曲がり続けると

学園通りからどんどん離れていて

街灯も人通りも少なくなっていき…





「交番かどこかに… 」




サユ「この辺りの交番分からない…」





いつも徒歩圏内しか歩かないし

知らない道に段々と不安になっていくと

沙優ちゃんが誰かに連絡しようと言い出し

スマホを開いて里奈ちゃん達に電話をするけど繋がらず

「どうしよう」と呟くと「シュウ先輩!」と隣りで言い出し





サユ「笑実ちゃん

  アタシのスマホとってシュウ先輩に電話して」





と半泣きな状態でいう沙優ちゃんに「うん」と返事をして

後部座席からバックを取ろうと振り返ると

追いかけてくる車が目に入り一気に怖さが倍増してきた…






沙優ちゃんのLINEをひらき

シュウ先輩に発信ボタンを押しながら

最後のやり取りの日付けがあの飲み会の日になっているのを

見て少し不安になった…





( ・・・・出てくれるのかな… )





楽しんだら「はい、サヨナラ」みたいな先輩達が

助けてくれるなんて想像も出来ないし

今頃また女の子と楽しく過ごしているんじゃないかと思い

期待はしないまま発信したけど…

女子短大生の私たちには男性の友達もいなくて

こんな時に連絡ができる相手はいなかったから

お願いだから出てくださいと祈る様に

コール中の画面を見ていると






シュウ「もしもし?」





繋がった声に安心していると

沙優ちゃんが「先輩、助けてください」と泣き出した…





シュウ「ん?何々!?どうした?」





サユ「ファミレスからずっと変な車がついてきてて

  道も暗いしどこかもわからないです」






半分叫ぶように説明している

沙優ちゃんを見ながら何処かも分からず迷っているんだと

初めて知りスマホを握る私の手も震え出した





シュウ先輩は「はっ?」と言った後

ガヤガヤと騒ぐ音がなくなり

「今どの辺り?てか車?」と初めて聞く真剣な口調に

来てくれるのかなと沙優ちゃんと話しつづける会話を

黙って聞いていた






シュウ「車の車種とナンバー分かる?」






沙優ちゃんがチラッと私を見るから

小さく頷いて後ろの車を見るが黒い軽自動車としか分からず

ナンバーはライトの反射で見えなかった…






シュウ「ん?誰かいんの??」






沙優ちゃんが泣きながら車には

私と2人だけしかおらず怖いと言うと

「えみちゃん?スマホのナビアプリ起動できる?」

と言われ「ハイッ」と返事をして位置情報で

自分達のいる住所名を話すと






シュウ「結構離れたね…

  今から言う住所を設定して

  ナビの言う通りに車走らせろ、いいな?」





サユ「はい…」






ペーパードライバーで慣れない運転を

数時間し続けた後にこんなカーレースみたいな事を

していて私よりもいっぱい、いっぱいな

沙優ちゃんの顔は涙で濡れきっていて

横で座って震えていた自分が情けなく感じた






シュウ「そこにいるから頑張って運転しろ」






電話を切ろうとするのが分かり「切らないで」と泣く

沙優ちゃんに「5分後には折り返すから大丈夫だ」

と言って電話は切れ一気に心許無く感じながら

先輩の言う場所に二人で向かった




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