朝帰り

〈エミ視点〉









ゆっくりと部屋のドアノブを開けるとキィーと

音が鳴り後ろに顔を向けると目を閉じて顔を半分

毛布に埋めている寝顔が見えホッとしながら

部屋から出て行き静まりかえっている

リビングの半開きのドアを人差し指で引いて中を覗くと

所々から寝息やイビキが聞こえている





自分の荷物がある場所までそっと歩いていくと

上半身が少し乱れたまま男の人と眠っている友人が目に入り

なんとも言えない気分でバックとトレンチコートを手に取り

アパートの外に出ると「はぁ…」と安堵の息を吐き

コートを羽織ってから明るくなり出した空を見ながら

自分のアパートへと歩いて帰った





部屋には朝ごはんになりそうな物は何もなく

本来ならコンビニに寄りたいけれど…

一刻も早く自分の部屋に帰り

歯磨きをしてシャワーを浴びたかった…





小走りで20分ほどかけてアパートに帰り着くと

着替えを持って浴室へと向かい洋服を投げる様に脱ぎすて

熱いシャワーを頭から浴びて歯ブラシに歯磨き粉を

タップリとつけてカシカシカシといつもよりも念入りに

磨きあげ口の中も泡だらけになった





頭の上から足の先まで洗わないと

汚いような気がしたから…





カオル先輩は約束通り

キス以上の事はしなかったけれど…





「・・・・きす?」





初めこそはドラマとかで見る

唇と唇が触れ合うキスだったけれど

カオル先輩は段々と舌を絡めだしたり

私の唇を舌で一舐めしたりと

戸惑う私の反応を見て面白がっていて…

彼が寝たのは3時半前だった…





それも腕も脚も私の体の上に乗せて

抱きしめるかの様に眠り

自分の身体にカオル先輩の香水の匂いが

移っているのが分かり

昨日の記憶と一緒に洗い流してしまいたかった





全身を洗い終わった後に

脱衣室に脱ぎ散らかした中のあるモノを思い出し

ドアを開けて床に落ちているソレを手に取り

少し眉間にシワを寄せながら手揉み洗いをした…





男の人とあんな事をするのは初めてで…

でも全く何も知らないほど純情なわけでもなく…

下着を汚したモノがなんなのかも分かっていて…






「・・・・ファースキスが……アレなの?」






ガッカリと落ちる気分はあるものの

初体験までは失わなくてよかったと

「はぁ…」と息を溢した…


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る