〈エミ視点〉









サユ「この辺さ…

  1時過ぎたらあんまりタクシー乗っちゃダメらしいよ…」





「どうして??」





サユ「数人ならいいけど…

  女子大生一人だと人けのない所に連れて行かれて

  タクシーのオジさんから…」






まさにここに歩いて来る途中

この部屋の主人である先輩から頭を撫でられている

沙優ちゃんがそう話していた…






「・・・・・・」





カオル「どうする?笑」






ゆっくりと視線を上げるとカオル先輩は口の端を上げて

コッチを見ていて面白がっているのが分かる…






「・・・・し…」





カオル「ん?笑」





「・・・・しん…しつって…」





カオル「あぁ…正直そろそろ眠たいからね」





そう言って前髪をかきあげながら

「2時だよ」と小さく笑った…






( ・・・・寝るって… )





「・・・・私は…眠くないので皆んなのいる部屋に…」





戻ると言いかけると「フッ」と笑われ

「だからさ…」と顎を持ち上げられて






カオル「この部屋に女の子は8人で男は10人だよ?

  俺が離れたらさっきのヒョウみたいに直ぐに

  別の狼が現れてアッサリ食われちゃうよ?笑」





「・・・・食われる?」






カオル「俺は残念ながら今日はもうお腹いっぱいだから

  抱きしめて眠る位で止めてあげれるけど?」






「・・・・・・」





カオル「だから2択だって言ったでしょ?

  それか皆んなのいる暗くなったリビングや

  トイレで抱かれたい願望があるなら止めないけど?笑」






お互いが黙った脱衣室には微かにトイレからの声と…

振動が届いていて気まずさから顔を背けたけれど

先輩と寝室に行くのか安全…なのかもしれないと思った






「・・・・なっ…何もしませんか?」





カオル「寝ぼけてキスはしてもそこから先は無理だよ

  今日はもう完売で閉店してるからね?笑」






それもそれでどうかと思うけど…

トイレや友達のいるリビングで

変な事をされるかもと考えたら…





( ・・・・最悪…キスは… )





ニッコリと微笑む姿は悪魔の様にも見えたけど

私はカオル先輩と一緒に寝室に行く事にした…





カオル「シュウ!寝室借りるからな」





先輩は皆んなのいる部屋に顔を覗かせてそう叫ぶと

「誰と?」とひやかす声が聞こえてきて

「さっきの子?」と肩に腕を回してきた先輩の声が聞こえ

里奈ちゃん達の「えっ?笑実ちゃん?」と

驚く声も全部耳に届いてきた…






カオル「そっ!笑実ちゃん!笑

  そーいうわけだら邪魔すんなよ?」






閉めた扉の向こうからはひやかす声が

飛び交っていたけどカオル先輩は気にする事なく

入り口横にある扉を開けてその中へと入って行き

私も恐る恐る中に足を入れると大きめのベッドがあった






カオル「シュウはいい所のお坊ちゃんなんだよ」






だからこんな間取りに住めているんだと思いながら

ベッドに入るカオル先輩を眺めていると

「早く来なよ」と自分の隣りを軽くポンポンと叩いている






「・・・・本当に…」





カオル「ふっ…何もしないよ…笑」






一歩づつ歩いて行きベッドの横に立ち

「お邪魔します…」と小さく呟いてから毛布の中へと入った





カオル先輩はスマホを触りながら急に笑い出し

「へぇ…笑」と私を見てそう言うと

またスマホを操作してから「電気消すよ」と言って

部屋の中が真っ暗になったと思ったら

唇に何かが当たっているのが分かり「ンッ!」と

声を漏らすとチュッと音がなり唇に当たるソレが

カオル先輩の唇なんだと分かり押しのけようとしても

ビクともせず息苦しさを感じだした…






( ・・・・やっぱり信じるんじゃなかった… )






ファーストキスは初めての彼氏と

デートの帰りや、観覧車の上なのかなとか

いつも憧れていたけど

こんな風に呆気なく終わるんだとぼんやりと感じた…





カオル先輩の唇からはお酒の味がして…

嫌だと思う感情と気持ちがいいと感じている自分が

少しずつ混ざっていき

気がつけば何も考えられなくなっていて

唇が離れるたびに必死に酸素を吸っていた







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