第2話

私の両親は私がまだ小さい頃に離婚しました。原因は家庭内不和ってやつです。


話し合いの結果、母親は親権を放棄したため私は父親に引き取られることになりました。


けれど、そこからでした。父親は再婚をしてはそ別れるの繰り返しで、新しい再婚相手の女が来るたびに私は邪魔者扱いをされてきました。


まあ、親権を持っている父親も最終的には「お前がいるせいで再婚がうまくいかない」と私のことを邪魔者扱いしてきましたが。


だからでしょうか。いつのまにか私の世界は灰色になり、興味も何も湧かずどこか達観したようになって全てつまらないと感じるようになったのは。


けれど、そんな時に出会ったのが鳴宮生人なるみやいくとという私と同学年の男の子でした。


私は確かに欲望のままに行動して迷惑をかけて、挙げ句の果てには開き直りました。普通ならキレられてもおかしくはありません。私ならキレてますし。


ですが、驚いたことに怒るどころかこんな私に手を差し伸べてきたのです。


そこからです。私の世界に色がつき始めたのは。



いくとが嘘コクされてから数日が経った放課後。


今日は漫研の活動がないので少しお話しをすべくとある人物を呼び出しました。


夏越麗華なつこしれいか。単刀直入に聞きますが、いくとに告白したというのは事実で間違いないですか?」

「そうだとしたら何?陰キャだから本当の告白と勘違いしてノってくるかと思ったけど断られてさー?ノリ悪いよね♪私、みんなに食べ物を奢る羽目になってさ?最悪だったんだよねー。まあ、そういうゲームだし?しかたないんだけどさ?」

「……そうですか」


いくとのクラスメートなのでいくとに迷惑がかからないように多少の手心を加えようかな、なんて思っていましたがクズはどこまでいってもクズでした。


なので徹底的にやります。


「そういえば。遅くなりましたがおめでとうございます。偶々聞こえてきたのですが、読者モデルに選ばれたらしいじゃないですか」

「そうなのっ!苦労したんだよね!」


食いつきましたか。魚ですら警戒するのに。単純で助かります。


「ええ。貴女が選ばれた雑誌の編集部はと有名ですから諸々の審査も厳しかったはずですし」

「よくわかってるじゃない」

「ですか、残念なことに貴女は


その言葉と同時に着信音が。目の前のクズがスマホを胸ポケットから取り出して通話を始めると次第に青ざめた表情へと変わっていきました。


その様子から察するにこの会話を聞いてちゃんと指示通り行動したようですね。。流石です。


まあ、私の言うことに従う道しかないのですが。


「アンタ何やったの!?」

「私はなにもしてませんよ。ただ——私の救世主であり愛しの人であるいくとを誑かす真似だけじゃ飽き足らずに現在、いくとのことを侮蔑し、貶し、嘲笑した罰を受けてほしいなぁ、と願ったまでです」

「他人の人生を滅茶苦茶にして楽しいわけ!?」

「楽しい?そんな感情湧きませんよ?もちろん悲しい、心苦しいなどの感情や、やり過ぎたなといった後悔の念も湧きません」

「……は?アンタ何言って」

「いくと以外、私の中では人じゃありません。人語を喋るなにか、です。人もどきにそんな感情を向けるとでも?」

「っ!?」


それでは、と私は夕陽が差し込む教室をあとにする。


背後から「狂ってる!狂ってるよ!!!」とクズの嘆きが聞こえてきますが私の心には届きません。


所詮負け犬の遠吠えでしかありませんからね。

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