第3話:救出 A級ダンジョン『鬼竜の冥城』


 疲れ果てて眠る中、アーロンは夢を見ていた。


『なんで! なんでだれもお父さんを助けに行かないの!!』


 沢山の町人達に囲まれ、母に抱きしめられながら泣いていたのはアーロン自身だった。

 ダンジョンに行き、他の仲間を逃がす為に殿をした『初代ダンジョンマスター』と呼ばれた父を、誰も助けに行かない事に怒っていた。

 

『――俺の故郷は普通の平凡な町だ。戦士も騎士だっていない。狩人崩ればかりだけだ』


 だがそれ故に周囲は助け合い、子供ながらに周囲がどれだけ父に助けられていたかも知っている。

 なのに父の命の水晶が消えても誰も父を助けようとせず、時間が過ぎるのを待つように黙る大人達を見て、当時は子供ながらの感情をぶつけてしまった。


『お父さんには助けてもらうくせに! 大っ嫌いだ! 卑怯なあんたたちは大っ嫌いだ!!』


 今思えば、力無き者へ随分と酷な事を言ったと思う。

 けれど当時はそんな考えができず、母を引き離して自分だけでも行こうと飛び出したが、すぐににぶつかった。


『どこのダンジョンだ?』


 棺を背負った鎧の男が、そう言って幼い頃の自分を見下ろしていた。

 それがアーロンの未来を決めた人物との出会いだった。


『――それが俺と出会い……始まりだったな』


♦♦♦♦


「……懐かしい夢を見た」


 自宅のカーテンから覗く朝日により、アーロンは意識を覚醒させながら思わず呟いていた。

 口に出してしまう程、自身にとっては原点の記憶。

 そんな夢を見たのは昨日、自身とで救出屋を目指す少女――サツキと出会ったからだろう。


「帰って来たのか、サツキという少女は……?」


 予想外の事があろうが流石にもう帰って来ている筈。

 しかし虫の知らせというべきか、アーロンは胸のモヤモヤした不安感が拭え切れなかった。


「ギルドに様子を見に行くか」


 アーロンは不安を解消する為、今日向かう筈だったダンジョンの予定を延期を決めた。

 ギルドへ向かう為、強いてサツキ達のいる『気流の迷城』へ向かう為。

 まずは自身の体調を備える為にパンや卵も焼き、果物と一緒にアーロンは簡単な朝食を済ませた。


「……そういえばにも顔を出さねばな」


 最近忙しくて行けなかった場所を思い出すが、顔を出したくても急な用事と時間の問題はどうしようもない。

 溜息を内心で吐いた気で気分を紛らわせるが、近年は妙に忙しい。

 

「繁忙期でもあるまいし、この時期に忙しくなるのは珍しいな……」


 新種の魔物、価値が変動した素材、新たなダンジョン。

 それはいつも決まった時期に起こり、それに伴って救出屋も忙しくもなるが今はそんな時期ではない。

 だが今月だけでもダンジョンに何回入り、何人救出した事か。


「また各ダンジョンを見回って見るか……」


 ダンジョン内が変異したのかもしれない。アーロンはそう決めて異次元庫に物をしまい、ギルドに向かう為に自宅を出ようとした時だ。

 突然、大きな音と共に自宅の扉が叩かれた。


「アーロン! 起きているか!? 緊急事態なんだ!」


「……マスターか?」


 その声はギルドのマスター。

 こんな早朝からでも珍しいが、息が切れる様な焦りの声からアーロンは嫌な予感を感じ取り、すぐに扉を開けると汗をびっしょりにしたマスターが立っていた。

 

「どうした……緊急の依頼か?」


「そ、そう言う事になるが! た、大変なんだ! 昨日の『慈悲の終言』の男が、書類を滅茶苦茶にしてたから気付くのが遅れたが――! 場所は……本当のダンジョンはB級じゃなかったのだ!?」


――どうやら、俺の今朝の予定は決まったらしい。


 どうりで近いダンジョンの割に、彼女達が帰ってこない筈だとアーロンは納得する。

 だが重要なのはそこじゃない。本題は彼女達がどこに行ったかだ。


「ダンジョン名とザクマの言葉で勘違いしたが……向かった場所はA級ダンジョンなんだ!?」 


「何てことだ……」

 

 C級とB級はそこまで難易度は変わらないが、B級とA級では大きく難易度が変わる。

 もしB級ダンジョンのつもりでA級に行けば、間違いなく全滅は免れない。

 

「かなり時間が経っているな」


 サツキ達が向かってから日を跨いでいる。

 アーロンは急ぎ鎧を纏い、クロスライフを担ぐとマスターへと問いかけた。


「……どこのダンジョンだ?」


♦♦♦♦


「もっと走って!!」


――走れ、走れ、走り続けてサツキ! 絶対に立ち止まってはダメ!


 薄暗く、血の匂いと淀んだ空気が充満する城。

 その長い廊下をサツキはザクマの腕を掴んで全力で走り、背後から追ってくるから逃げ続けた。


「ヒィィィ!? どういうことだ!? 何故! あんな魔物がB級ダンジョンにいるのだ!?」


 既に冷静な姿はなく、優雅な服もボロボロになったザクマ。

 彼と同じ様にサツキも追ってくる魔物へ振り返ると、それはまだ自分達を追って来ていた。


『オォォ~オォォォン……!』


「ありえません! あれはB級ダンジョンの魔物じゃない!」


 二足歩行の真っ黒に染まった怪物。

 鬼の様に角が生え、人の様な形でもあるが竜の様に翼や尻尾も生やした異様な魔物。


――み、皆さん……あれに全員殺されてしまいました……!


 思い出してしまう。あの怪物と出会った時の事――共に入った仲間全員が殺されてしまった時のことを。


 最初、奥の広間で救出者を発見し、サツキは命令されたので広間から出て周囲を警戒していた。

 けれど直後、広間から恐怖にまみれた叫び声が響く。

 すぐにサツキは戻るが、そこにはこの魔物がいて、他の人達は食われたり、壁や床に叩き付けられて殺されてしまった後だった。


「か、勝てない……!」


 仲間が弱い訳ではない。B級ダンジョンの魔物ならば戦える実力は持っていた。

 けれど結果は戦いとは呼べず、痕を見ても蹂躙でしかなかったの分かる。

 それでサツキは察した。あれはB級以上の魔物だと言うことを。


 そして全滅するのに時間は数分も関らず、サツキは何とかザクマを連れ出すの精一杯だった


『――決して油断はするな、異変を感じればランクに関係なく警戒しろ』


 アーロンの言葉がなかったら、それも叶わなかった。

 頭に響いたアーロンの言葉で切り替えたサツキは、牽制しながらザクマとダンジョンの出口を目指すが、魔物もしつこく追ってくる。


『オォォォンン!!』


「また来たぞ!?」


「もう一発放ちます!――爆光手裏剣!」


 サツキは魔物へ手裏剣を複数投擲した。

 それはただの手裏剣ではなく、彼女達の一族秘伝魔法『能力付与』により色々な素材を混ぜた特製手裏剣だ。


「――強烈な光を放つ『閃光草』 爆発する竹の笹『爆竹の笹』を混ぜた特製手裏剣なら!」


 魔力で上手く調節し、魔物の顔の目の前で手裏剣を爆発。――そして大きな閃光が辺りを照らした。


『ウオォォォン!!』


 至近距離から光を受けて目が焼けたのか、苦しむ様な声を魔物は出すが、サツキ達に後ろを見ている余裕はなかった。

 その間に少しでも距離を稼がないと、その気持ちの方が強い。

 理由は、ダンジョンから出れば魔物は追ってこないからだ。女神ライフの加護により、過ぎたる悪しき魔物はダンジョンから出れない。

 普通の魔物は出入りするが、少なくとも人を弄ぶ様に殺している魔物は絶対に出れる筈がないとサツキは確信があった。


「もう少しですよザクマさん!」


「あ、あぁ……!」


 見覚えのある辺りまで来た事で、サツキは出口が近い事に気付く。

 

「もう少し、もう少しで出れる! 街に戻ってアーロンさんとギルドの人達に知らせないと!――ッ!?」


 サツキはそのまま走り続けるが、もうちょっと言う所で不意に悪寒を感じ取った。

 くノ一として学んだ敵意の波長を。


――来る!? 背後から!


「危ない!」


「なんだっ!?」


 サツキは咄嗟にザクマを抱えて真上に高く飛び上がった瞬間、その真下を巨大な物体が地面を抉りながら通り過ぎていく。

 それは背後にいた魔物で、もう容赦しない可の様に滑り込んでサツキ達を喰らおうとしてきた。


「ヒィィィ!!?」


「前方を塞がれました……!」


 魔物がサツキ達と入口の間に立って見下ろしていたが、その瞳は閉じたまま。

 

「この魔物……視覚を潰しても、それ以外ので私達の動きを!?」


『サツキよ……敵が最も信頼する五感を探せ。どの様な強敵とて、力を削ぎ落せば必ず勝機はある』


 サツキは父の言葉が走馬灯の様に思い出す。

 それだけ目の前の魔物を強敵と思っている証拠だが、同時に生き残るための記憶。

 すぐに周囲を確認し、折れた柱が幾つもあるのに気付く。それはまるで出口付近へ続く階段にサツキは見えた。 


――このまま死ぬよりかは、一か八かの賭けにでます……!


「ザクマさん! 一気に行きますよ!――影魔法・影縛りです!」


 サツキはザクマに合図し、固有魔法の影魔法を唱え周囲の影を操り、それで魔物を縛って動きを止める。

 伸びた影は魔物の手足を拘束するが魔物も引き千切ろうと必死。けれどサツキには僅かな時間を稼げれば、それで良かった。


「一族秘伝――超悪臭煙玉『鼻落とし』と、影魔法――影栓です!」


 次にとんでもなく臭い煙玉を投げ、そして同時に影の形を栓の様に変えて魔物の両耳に填め、敵の五感を更に狭めた。

 出し惜しみはしない。忍に妥協はないからだ。

 

『!?――ウオォォォン!!?』


 どうやら効果は絶大の様で、魔物は鼻を抑えたり耳を弄って蓋を外そうとするが無駄な行動でしかない。


「煙玉の臭いもすぐに消えますが、一度吸ってしまえばこっちのものです! 実態のない影も触れるのは私だけです!」


「そ、それは良いがどうする気だ!? は、早く私を逃がせ!?」


「そのつもりです!」


 サツキは叫ぶザクマさんを抱え飛び、そのまま柱の上を次々と飛び渡った。

 その側面には魔物もいたが、その魔物はまだ混乱している様で気付かれず、一気に通過して魔物を突破。


「よし! これでOKです!」


「な、何がよしだ!? 魔物を見てみろ!」


 何やら慌てた様子のザクマに言われ、サツキは魔物の方を向く。

 すると魔物は徐々に落ち着きを見せ、耳は塞がったままなのに自分達の方へ顔を向けていた。


「視界・聴覚、嗅覚、それ以外で私達を把握している!?」


 サツキは内心で焦りそうになったが、それでも出口に近いのは自分達。

 速さにも自信はあり、冷静さを取り戻し、ザクマを再度抱えようとした。


「大丈夫です! このまま二人で逃げ切れますよ!」


「――いや、もっと確率の高い考えがあるさ」


「えっ? ザクマさんには作戦があるんですか?」


 サツキから離れて冷静な口調でそう言ったザクマを見て、サツキ自身は少し不満を抱いた。

 そんな作戦があるなら、何故にもっと早く行ってくれなかったのかと。

 けれどザクマはサツキの気持ちを察する訳でもなく、出口が近いので余裕が戻り、涼しい笑みを浮かべて魔物に指を向けていた。


「あの魔物を見て、何か気付かないかね?」


「あの魔物をですか?」


 サツキは言われた通り、柱の上からザクマに背を向ける形で魔物の方を見た。

 相変わらず顔の感覚は全て封じているが、やはり顔は自分達に向けたまま。それ以外の事は、特に思い付かない。


――ザクマさんは何に気付いたのでしょう?


 サツキは恥を忍んで聞いてみる事にしようと、ザクマの方を振り返った。


「あの、ザクマさん? 一体なにが――」


「こう言う事だ!!」


 一瞬、サツキは何が起こったか理解できなかった。

 背中から強い衝撃を受け、折れた柱の上から投げ出される感覚を抱きながら上を見ると、歪んだ笑みを浮かべたザクマが自身を見下ろしていた。


――あぁそうか、私はザクマさんにケリ落とされたんですね。


 サツキはその事を理解するのに時間はいらなかった。

 だが不思議と怒りも驚きもなく、サツキはまるで死を経験している様に冷静だった。

 そんな中で反射的に身体は受け身を取って着地したが、目の前には魔物がいて、ザクマは入口へと走っている。


「高い金で雇ったのだ!! 少しでも貴様が時間を稼げ!! 運が良ければ無事に生き返れるだろう!!」


 ザクマはそう叫んでいたが、口調から察するに助けを呼ぶ気がないのがサツキには分かった。

 でも同時に一部は納得できる。もう道具は使い切ったし、逃げようにも魔物との間合いを考えて無理だ。


「――運が良ければ生き返れるし、もう良いでしょうか?」


 サツキの心が折れた。必死に逃げて守って、最後には守った人に囮に使われたことで。

 

『忍が道具だった時代は終わった……無事に生きて帰って来るのだぞ?』


 普段は厳しい父が、自身が旅立つ時に言ってくれた言葉をサツキは走馬灯の様に思い出す。

 でも約束は守れない。心もだが、肉体も諦めたのか震えや筋肉の硬直で上手く動かなかった。


「ハハハハハッ!! 生きるぞ! 他は死んでも構わん!! 私だけでも生き残るのが正解なのだ!!」


 ザクマの笑い声が最後の言葉になるは嫌だが、生き返れる事を祈ってサツキは顔を上げ、魔物の姿を見上げた。


『ウオォォォ~ン!』


 やはり魔物は特別な五感を持っているらしく、サツキの方を見て口を歪ませている。

 だが同時に、サツキは違和感に気付いた。


「……どうしてザクマさんを見ているんですか?」


 魔物は自分を捕まえられる筈なのに、何故か離れていくザクマを見ていた。

 その様子はまるで楽しそうに、悪戯を成功させる様な邪悪さを感じさせる。


「一体、なにが……?」


 サツキは動く事は出来ずとも、顔を向ける事はできた。

 だからザクマの後ろ姿を見送る形となり、サツキは忍としてもザクマが脱出する事に疑問を持たなかった。

 あの距離ならば子供でも逃げ切れる。それ程までの距離と障害も無い。


――横から出て来たザクマが捕まるまでは。


「――えっ?」


 サツキは上がっていく腕を見上げると、捕まったザクマと目が合う。

 

――絶望、驚愕、混乱。


 何が起こっているのかザクマも分かっていない様だった。

 でもサツキは視線を先回りして原因を知る。

 目の前にいる魔物よりも、一回りも大きな同じ姿の魔物。それが元凶。


「……う、うそ?」


 心がまだ折れる。いや、砕け散ったという風に気力が一切出ない。

 今ならば逃げられると思いもしたが、また逃げ続けるのかと。

 しかも、もう一匹巨大な魔物がいると思うと逃げる気も失せ、更に気付いてしまった。


「1匹じゃない。もう2匹いる……」


 まるで巨大な魔物に付き従う様に、最初と同型の魔物が2匹も立っていた。

 サツキの身体の震えはそれを見て止まったが、身体は動かないままだ。

 巨大な魔物の口へ、ザクマが運ばれてもずっと。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!? 嫌だ!? 嫌だぁぁ!! 誰か助けてくれぇぇ!! 金は払うぞ!! 稼がせてやるぅ!! だから! だからぁぁぁ――」


――肉や骨の潰れる音が聞こえる。破裂したトマトの果汁みたいに、血液も流れている。


 最初の一匹とは違い、丸吞みではなくザクマは完全に噛み砕かれ、もう生き返る事は不可能なのが分かる。

 善行をし、女神に愛されている者は身体は必ず残る様な加護があるがザクマは違ったらしい。

 

『オォォォン!!』


「……もう好きにして」


 だが関係のない話だ。どうせ自分も死ぬのだからと。

 サツキはそのまま座り込み続けながら呟くと、見た目よりか利口なのか魔物達はゆっくりと彼女を包囲し始める。

 大型の変異体は折れた柱を玉座の様にして腰を下ろし、他の3匹がサツキを献上をするのを待っているかのようだ。


『ウオォォォン!!』


 吠えながら3匹が徐々に近付いて来る。サツキはせめて生き返れる事を願い、静かに目を閉じた瞬間――。


『――己の命を優先せよ。汝が死ねば、誰が魂を連れ戻す?』


「――!」


 何故かサツキの脳内にアーロンの声が蘇った。

 耳にではなく、心へ教え込むような強い言葉だが、まるで今の自分を叱っている様な気もした。


――もし私が救出屋だったら、残された人達は?


 生き返る事はできず、遺体も遺品も家族の下に帰る事もない。


『汝が死ねば、誰が魂を連れ戻す?』


(――私がいなくてもアーロンさんが連れ戻す?)


「違う、そうじゃない。まだ私が生きています……!――死者でなく、生者がなんで他者に命を委ねるのですか!」


 気付けばサツキは立ち上がっていた。そして腰の忍び刀を抜いて構えた。

 そんな姿を見て魔物達は困惑したが、活きが良い得物を見る様にやがて笑みを浮かべ、手を伸ばしてくる。


『己の命を優先せよ!』


想影おもかげ流・二刀小太刀術――終憶ついおく!!」


『!?――ウオォォォン!?』


 サツキはその手に交差状に斬りつけて大きな斬り傷を刻む。

 祖の攻撃で魔物は痛みで悲鳴を上げた。


「諦めるのは……限界まで足搔いてから!」


 ハッキリ言って未だに怖く、逃げたい感情もあるサツキ。

 けれど、死を覚悟したのならばそれ以外の覚悟も出来るはずだと彼女は気付いた。


「最後まで……命の限り足掻きます!」


 サツキは覚悟を決めたが、魔物達も容赦がない。

 反抗すると分かると、今度は3匹同時に手を伸ばしてきて、更に距離も縮めて来る。


「……少しは加減してください!?」


 覚悟を決めた矢先に涙目になるサツキだが、そんな情けない姿でも抗おうとする自身を誇りに思えた。


「無駄死にでしょうけど……命の限り――」


 涙も吹かずに少しでもとして動こうと、両足に力を入れるサツキ。

 そして破裂しそうな心臓に喝を入れ、目の前の魔物達に飛び出し――


「――いや無駄死にではない」


 聞き覚えのある、最も安心させてくれる人の声がその場に響き渡る。

 

「あっ……」


 サツキ耳に声が聞こえた瞬間、目の前の内の2匹の頭部が何かに射貫かれ、そのまま倒れた。

 その光景にサツキは目元から大量の涙が溢れる。足にも力が入らなくなるが、今度は恐怖ではなくしたから。


「よく耐えた……俺が来た以上、これ以上は棺を増やさん」


――だって、入口に立っているんですから……


「アーロンさん!!」


「――よく耐えた」


 城門の前で棺を持った英雄アーロンは、静かに棺型盾クロスライフを魔物達へと向けていた。

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