第44話 打ち合わせ
「それでは私は車止めてきますんで、先に行っててください。」
「それなら、私はここで待ってますので、木村さんおふたりを先に応接室にご案内してください。」
西川はオサムに向かって指示をした、
「はい、わかりました。ではこちらからどうぞ。おふたりとも、私についてきてください。」
オサムは入り口を手で示し、事務的に応対して店内へ向かって歩き出した。
(この人だよね・・・? ルミとファミレスにいた、そしてこの前の犯人は・・・。)
志桜里はオサムの後ろ姿を睨みつえるような眼で見ながらオサムの後について行くと、横にいたルミは驚いていた。
(志桜里さん何でにらんですんですか。だからそうじゃないってこの前話したの忘れちゃってるのかな?)
ルミは志桜里の肩のあたりをトントンと叩くと何とも言えない表情を浮かべていて志桜里のことを見ていると、志桜里と視線が合った。
(あっ、そうだった。犯人じゃなかった・・・。でもなんかこのふたりすごくよそよそしくないか? ふたりとも変に意識し合ってて、よし私がなんとかきっかけを作ってあげないといけないな、でもどうやって・・・。)
大森と西川の話し声がだんだん近づいてきて、応接室の扉が開きふたりが席に着こうとすると、目の前に漂う重たい空気をふたりとも感じたようだ。
「あれ? なんだか静かですね? 3人で雑談でもしててくれればよかったのに、木村さん気が利かないなー。皆さんどうぞご自分の前にある飲み物遠慮しないで飲んでくださいね。よろしかったらおかわりもどうぞ、なんてったて売るくらいいっぱいありますから。ははは。」
西川は冗談ぽい言葉を発して場を和ませようとした。
「いやいやこちらこそ、志桜里、ルミ、どうしたんだ? 一応アイドルなんだから、一応な。もっとアイドルらしく振る舞わないと。全然アイドルらしくないぞ、笑顔はどこに言っちゃたんだ。本当にすみません。」
大森も苦笑いを浮かべて西川に合わせるような言葉を並べていた。
確かにふたりが来るまでオサム、ルミ、志桜里の間に会話は全く無く、ただ沈黙の時間が過ぎていて、西川と大森を待っていた時間が3人にはすごく長い時間に感じていたようだ。
打ち合わせが始まると、お決まりの名刺交換が行われ、いよいよ本題へと突入し、西川が口火を開くように言った。
「私どもは、こういったアイドルさんのイベントには不慣れでして、どのように対処していけばよいのか、まずはお聞かせいただけるとありがたいのですが。」
「そうでしたか、私の経験で恐縮なのですがお話ししますと、基本的に私達はライブステージに専念させていただき、皆さまの方は観客への対応をしていただきたいのですが、もちろん対応と言ってもお店のお菓子や飲料、またはお総菜コーナーの
わかりやすく理路整然下大森の説明を聞いて、西川もオサムも感心してただうなずいていた。
「さすがですね。場数を踏んでらっしゃるだけあって、素晴らしい。非常にわかりやすかったです。あと何か私どもでも手伝えることがあったら何でも言ってください。イベントの成功のため従業員一同全力でご協力させていただきます。」
お世辞半分、本音半分で西川は答えた。
「そういっていただけると助かります。本音を言うと、私たちもこういったイベントは久しぶりなもので、会場の設置とかどのようにするか、ぜひご意見をお聞かせください。」
大森も思ったことを正直に言うと、西川は不思議そうな顔で聞いていた。
「そうなんですか、私はてっきり、こんなスーパーでのステージは初めてなのかな?って思ってましたよ。前はやっておられたんですか、意外でした。なんてったて”向日葵16”は有名アイドルグループですから。」
「いやいや、結成当時は色々なところに出向いて行ったもんですよ。日本全国とまでは言わないですが、はっはっはっ。」
大森は笑って何故か自慢気に答えていた。
「そうでしたか。」
西川がうなずいていると、大森は続けた。
「そうなんです。そこで今グループはその原点に帰って新しくスタートを切ろうと、今回のオファーを受けさせていただいたんです。本社の販売促進部の
スーパーあずまやは大森が言ったように、この県内に10店舗あり、オサムや西川が勤務しているのは、その中の1店舗の武蔵台店であった。
「それは素晴らしい、新しいスタートの最初がこの武蔵台店だなんて光栄です。全力でサポートさせていただきます。会場の設置等も是非お手伝いさせていただきたいと思います。」
西川は興奮してかなり声を上ずらせながら立ち上がると、それを見た大森も立ち上がってふたりは力強く握手を交わしていた。
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