第43話 気まずい再会
「大森さん、まだ着かないんですか? さっきからなんか同じとこグルグル回ってませんか? この道で本当にに合ってます。」
志桜里が後部座席から顔をのぞかせて運転している大森に向かって言っていたのは、向日葵16の事務所近くから乗った高速道路を降りて、あずまや武蔵台店に向かう車中であった。
「そんなこと言ったって、最近は都内の移動位しか運転してなかったから、こういう遠出は久しぶりで、道わかんなくなっちゃったんだよ。」
大森は左右の景色をキョロキョロ見回しながら、少しテンパった感じで答えると、志桜里は声をさらに大きくしていた。
「もう大森さん、このぐらいの距離で遠出とか言ってたら、色々な場所に出向いて行くなんてできませんよ!」
そんなふたりのやり取りを聞いていたルミが助け舟を出すように後部座席から顔をのぞかせた。
「大森さん、ナビに入力しちゃいましょう。そうすればわかるんじゃないですか?」
「そうだな、ここはいち度ナビに入力してみよう。じゃあ一度車止めるから・・・、よし、そこのコンビニに入ろう。おまえたちものど乾いただろ。」
大森はすぐにウインカーを出し、コンビニエンスストアの駐車場に入り車を止めると、スマホをポケットから取り出した。
「よし、じゃあ志桜里こっちに来て入力よろしく。俺は先方にちょっと遅れるって電話するから。」
志桜里は後部座席から助手席に移り、テキパキとナビに”あずまや武蔵台店”と入力し始めると、わざと大森に聞こえる様に大きな独り言を言っていた。
「最初からナビつかえばよかったのに! ナビなんか見なくても大丈夫とか言ってたくせに・・・。」
大森は聞こえないふりをしてあずまやからもらった資料を確認していた。
「えーと、あずまやのどこにかければいいのかな。店長さんにいきなり電話するのもあれだよな、イベント責任者て書いてあるからこの人でいいか。」
(イベント責任者? それってオサムさんのことだ。そうだよなー、当たり前だけどオサムさんいるんだよなー。)
ルミは後部座席にもたれかかるようにしてひとりうなだれていた。
「もしもし、私向日葵16のプロデューサーの大森と申します。今日伺うことになっているのですが、イベント責任者の木村さんにつないでいただけますか。はいお願いします。」
(あー、やっぱり・・・。でもどんな顔でして会えばいいのかな・・・。)
ルミはどうやらオサムと同じ様なことを考えたいたようであったが、やがてオサムに電話がつながった。
「申し訳ございません15分ほど遅れそうなので、よろしくお願いします。ええ、はいそうです。はい15分で・・・。」
「はい出ましたよ。えーと・・・。」
志桜里はナビの画面をのぞき込むと、首をひねっていた。
「大森さん、私達全然違う場所にいます。反対方面ですよ! 15分じゃ絶対行けませんよ。」
それを聞いた大森は、悲しそうな表情を浮かべて言い直してた。
「あのー、申し訳ないんですが、30分ほど遅れます・・・。」
そしてあわただしく電話を切ると車を降りた。
「飲み物買ってきます。」
後部座席のふたりに向かって言うと、逃げるようにコンビニの入り口に向かって足を進めて行った。
1台のワンボックスカーがあずまやの従業員出入口の前に止まると、それを出迎えようと店長の西川とオサムはお店の裏口前に少し緊張した面持ちで立っていた。やがて車のドアが開き運転席からプロデューサー兼マネージャーの大森が降りてきてふたりに近づいてきて、大きな声を出して詫びていた。
「遅くなって申し訳ございません。お出迎え有り難うございます。私は向日葵16のプロデューサの大森聡と申します。今日はよろしくお願いいたします。」
そう大森が挨拶すると、西川も一歩大森に近づいて行った。
「私はあずまや武蔵台店で店長をしております西川浩二と申します。そしてこちらが今回のイベントの企画案を作った責任者の木村オサムです。」
西川はオサムの方に手を向けてオサムを紹介しすると、オサムは軽く頭を下げ大森に挨拶をしていた。
「そうでしたか。企画読ませていただきましたよ。素晴らしい企画ですね。絶対に成功させましょう。」
大森は大げさに企画案をほめながらオサムに近づき、手を差し出して笑顔で握手を交わすと、西川も近づいてきて笑顔で手を差し出していた。
大森は車を駐車スペースに移動させる為、いち度ふたりの元を離れて車に戻ると後部座席のドアが開き志桜里が降りてきてふたりに軽く会釈していたが、ルミの姿は見みられず、どうもルミは降りるのをためらっていたようでだ。
(どうしよう。そこにオサムさんがいる・・・。)
(どうしよう。ルミちゃんここに来る・・・。)
オサムもルミも同じようなことを考えていたようだ。
「ルミ!」
志桜里が後ろを振り返り声を掛けると、ようやくルミは後部座席から姿を現して、
オサムと視線が合わないようにしながら会釈をしていた。
「本日はよろしくお願いいたします。私は桜志桜里と言います。このグループのリーダーを務めさせていただいてます。」
志桜里はふたりの元迄足を進めて自己紹介すると、続いてルミがここでもオサムの顔を見ない様にして深々とお辞儀をして挨拶をしていた。
「神宮ルミです。よろしくお願いします。」
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