第24話 大事な話

「ところで志桜里さん、お話って何なんでしょうか? 今日は私に何かお話があるっておっしゃってましたよね。」

 ルミは志桜里に聞いていたのだが、何故か志桜里はポカーンとした顔をしていた。志桜里はそんな顔をしたまま考えていたが、しばらくしてルミに言われたことを理解したようだ。

「あっ、そうだった、そうだったよね。なんか話が変な方向に言っちゃって大事な話があったの忘れてた。ははは、ごめんね。今日はその話しする為に、私がルミを誘ったのに、本当に忘れるところだった。ははは。」

 どうやら志桜里は本当に忘れていたようで、笑って誤魔化していたのだが、その後すぐに座っていた椅子を引き深く座り直し、何かあらたまった感じを出して姿勢を正してさらに表情を引き締めた。

「実はルミ、今日私がルミに話したいことは”ふたつ”あるんだよ。まず”ひとつ目”の話なんだけど、それはグループにとってものすごく大事な話なんだ・・・、しっかり聞いてもらえるかな?」

 ルミの目をまっすぐに見て志桜里は言っていた。

 ルミは志桜里のただならぬ感じに少し表情をこわばらせながらも黙って大きくうなずいた。

「じゃあルミ、驚かないで聞いてね。実はもうすぐ沙由と美里愛が・・・。」

   



 ルミはしばらく志桜里の話を聞いていたのだが、志桜里の冒頭の言葉を聞いただけで頭の中が真白になり、その後の志桜里の言葉は耳に入ってこないで、ただ志桜里の顔の一点を見つめて黙っていた。

「ルミ、ルミ、ねえルミ聞いてる?」

 反応の薄いというか反応の無いルミに、志桜里はだんだん声を大きくして言うと、その大きな声でルミはようやく我に返った。

「はい。」

 ルミは返事はしたもの、志桜里の言ったことの最初の部分しか聞いていなかったので話の全ては理解していなかったようなのだが、それだけ志桜里が言った言葉はルミにとって、とてつもなく衝撃的な言葉だったのであった。

 志桜里はルミの返事を聞いてまた話し始め、その志桜里の話をうなずきながら聞いていたルミは少しずつ冷静さを取り戻すと、急に頭の中に疑問が湧いてきた。

(あれ? 志桜里さんはなんでこんな大事な話を私にするんだろう? えっ、どうして・・・? これって聞いていいのかな? でも・・・。)

 ルミの頭の中でドンドン疑問はふくらんでいったとき、さっきの志桜里の言葉がその”???”でいっぱいになった頭の中に浮かんできて、次第にそれがだんだんと大きくなると、

(そうだ、自分から言わなくちゃ・・・。ちゃんと聞かなくちゃ。)

「ちょっと待ってください志桜里さん、そもそも何でこんな大事な話、私にするんですか? 他のメンバー達はみんな知っているんですか?」

 ルミは思い切って頭に浮かんでいた言葉を口にすると、志桜里は話を止めて一拍置いて笑顔になって答えた。

「はい、よくできました。それだよルミ。ルミは呑み込みが早いね。」

(何がよくできたの? それって何?)

「えっ 何がですか?」

 ルミは本当に志桜里が言った言葉の意味が全く理解できず再び聞いていた。

「いいんだよ。今はわからなくても。今はまだいいんだ・・・。」

 志桜里はそのルミの心の中すら見透かしていたかのように優しい笑顔で言うと、ルミの顔をその笑顔のまま見ていたが、しばらくして凛としたリーダーの顔になってルミからの質問に対して答えていた。

「じゃあ質問に答えるよ。私がなんでルミに話したかって言うと、それはルミは他の子たちにないものを持ってるから、そして何より今後しっかりしたグループのリーダーになれると思ったから。これが質問の答えだよ。あと、他のメンバーには話してないから、まだこのことは知らないよ。」

 ルミはその志桜里の答えだという言葉を聞いても疑問は解消されないで、もしかしたらその言葉を聞く前より、頭の中の”?”は増えてしまっていたようであった。

(志桜里さんの言ってることはよくわからないけど、沙由さんと美里愛さんがグループから卒業しちゃうってことはわかった。でもグループからふたりがいなくなっちゃたら・・・。私たちは、向日葵16はどうなっちゃうんだろう・・・。)

 ルミは頭に”?”をいっぱい浮かべながら困惑の表情を見せていたが、志桜里はそんなルミの顔を優しい目をしながら笑顔で見つめていた。



「あぁー。疲れた。せっかく志桜里さんと初めてあんなに話せたのに、私たちこれからどうなっちゃうんだろう。それに志桜里さん何で私にそんな話したんだろう?全然わからない。」

 ルミは家に帰ってきていた。そして疲れきってベッドに横たわりながら、さっきまでの志桜里との会話を何度も何度も思い返していた。

(あれ? そういえば志桜里さん話ふたつあるって言ってたけど、もうひとつはなんだったんだろう? 何か気になるなー。)

 ルミはふと時計を見るともう12時を回っていてた。

「あぁ、明日早いんだった。」

 慌てて風呂に向かうと、何故か急にオサムんのことを思い出して、

「オサムさん、今何やってるのかな? また会いたいな・・・。」

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