第21話 真面目な話
「ねえ美里愛、これ
顔いっぱいに笑顔を浮かべ美味しそうにして沙由は言っていた。
「でしょ! だから前から美味しいって言ってるじゃん。沙由は全然信じないんだから。」
美里愛は少し不満げな表情を見せて答えた。
「ごめん、ごめん、別に美里愛を信用してなかったわけじゃないんだけど。」
沙由はそう言いながらも、今口にしていた食べ物の容器を手に持って目の前に持ち上げ、貼られていたラベルをじっくりと眺めていた。その表情は本当に”ごめん”と思っているようには到底見えなかった。
ふたりは美里愛の家に着くと、すぐに部屋着に着替えて、先ほどコンビニで買いこんだ大量の食べ物を前にしてくつろいでいた。沙由と美里愛は結構な頻度でお互いの家に泊まりあっていたようで、簡単な着替えとか身の回りの品と言った
ふたりは食事を終えしばらくくつろぎながらテレビを見ていると唐突に美里愛が沙由に聞いてきた。
「ねえ、久しぶりにゲームでもやらない?」
「いいね。やろう、やろう!」
間髪入れづに沙由はそう答え、嬉しそうな顔をして美里愛のことを見た。
「よし、ちょっと待って。今用意するから。」
美里愛はふたりで座っていたソファから勢い良く立ち上がるとテレビの前にペタリと座り、テレビラックの中をしばらくゴソゴソとあさって、ゲームソフトをいくつか取り出して手に取った。
「いっぱいあるけど、どれにする?」
ソファーに座っている沙由に見えるように、沙由の前のテーブルにゲームソフトをそのまま”ガチャガチャ”という感じで置いていた。
「そうね、ちょっと迷っちゃうけど・・・。」
沙由はその並べられているゲームをひとつひとつ手に取りながら見ると美里愛に聞いていた。
「そうね、今の気分は何かスカッとする感じのがいいかな。何かある?」
「スカッとする? ちょっと待って・・・、じゃあそうだね・・・。」
美里愛もテーブルの上のゲームソフトを手に取りながら少し考えて、手に持っていた中のひとつを沙由に向けて見せた。
「それじゃあこれかな? うん、おすすめはこれだね。」
「うーん、どれ・・・? あぁ、これね。私やったことあるよ。結構面白いし、確かにスカッとするかもね。」
沙由はそのゲームソフトのパッケージを見て楽しそうに言った。
「でしょ。そう面白いんだよこれ。よし、これに決定!」
美里愛はすぐにそのゲームソフトをゲーム機にセットし、スイッチを入れると、ふたつあるゲームコントローラーのひとつを沙由に渡し、ソファーの沙由のすぐ横にピッタリ体を合わせるようにくっついて座った。
美里愛はさっき沙由に真面目な話があると言っていたが、なかなか言い出せずにいた為、気分を変えようとゲームをしようと提案していたのだが、沙由も同じようなことを思っていた為なのか、”スカッとする”という言葉を発していたのであろう。
テレビにはゲームのスタート画面が表示されていた。
「よし、いくよ。」
美里愛が一層前のめりになってテレビ外面に近づいていると、何故か沙由が戸惑っていて、なかなかゲームが始まらないでいた。
「ちょっと待って、ちょっと待って、これどうやるんだっけ?」
「もう、沙由。さっき前にやったって言ってたじゃん。」
美里愛が少しいらだったように声を大きくしながら、自分のコントローラーのボタンを押す仕草を沙由に見せていた。
「このボタンを押せばゲーム始まるから。ここだよ、わかった?」
「ごめん、ごめん。」
沙由もようやく理解したようで、自分のコントローラーの沙由が示していたボタンを押して、ようやくゲームはスタートした。
「美里愛チャンス。チャンス。」
「OK! 任せて、あぁ、でもどうしたらいいんだ?。あぁー、まずいまずい、あーやられた!」
「もう! 美里愛何やってるの!」
しばらくの間ふたりは、大声を出しながら楽しく夢中でゲームをしていた。
「ちょっと休憩。ジュース取ってくるね。」
沙由はソファーから立ち上がりキッチンへ向かっていくと、さっきまでゲームの画面を見ながら大きな声を出していた美里愛は、ゲームのコントローラーを静かにテーブルに置き、沙由の後ろ姿を急に真剣な顔をして見つめていた。
「美里愛はこれだよね。」
沙由は手に持った2本のジュースのうちの1本を美里愛に見せるように自分の前に出しながら部屋に戻ってくると、部屋にいた美里愛を見て手を差し出したままその場で立ち止まってしまっていた。なぜなら部屋には床に正座してうつむいている美里愛の姿があった。
「ちょっと、何やってるの? 急にどうしたの?」
驚いていた沙由も、すぐにうつむいている美里愛を心配して声を掛けていたのだが、それでも美里愛はうつむいたまま何も答えてこなかった。
「ねえ、美里愛どうしたの? 大丈夫?」
再び沙由が美里愛の近くまで来て声を掛けた。
「実は沙由、さっき言った私が今日話したいことって・・・。」
美里愛はさきほどの”真面目な話”をし始めようとしていたが、途中で言葉を詰まらせてしまい、それ以上言葉が出てこないでいた。
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