第12話 「脳脊髄液減少症」

 耳鳴りが始まってから一年半。どの医者も、原因不明、特に悪いところはないと言う。そろそろ諦めかけていた。一生この妙な症状と付き合いながら、研究を続けていく方法はあるのか。

 朦朧としながらパソコンを立ち上げた。

 その時、ふとブラウザの検索窓が目にとまった。

 そういえば、症状を個別に調べたことはあったが、「全部」をいっぺんに調べたことはなかった。


 どうなるんだろう。


 ほんの思いつきだった。いま体に現れている症状を全て検索窓に打ち込んだ。

 頭痛 顎痛 倦怠感 ぎっくり腰 めまい 吐き気 難聴 耳鳴り 腕が痛い 顔が痛い 背中が痛い 動悸 息切れ 高熱 目のぼやけ 眼振 眩しい 光過敏 咽喉に違和感 ヒステリー球 声がかすれる 嚥下障害 集中できない 思考力低下 記憶力低下 鬱 睡眠障害 月経異常 激しい疲労感 皮膚過敏 意識障害 まっすぐ歩けない 脱水症状

 画面が切り替わり、一番上に出てきたのがWikipediaのページだった。

「脳脊髄液減少症」

 なんだこれ、見たことない。

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