第11話 熱2
熱が上がっていく。
半年かけて三十六度八分に、それから四ヶ月ほどで三十七度二分に、二ヶ月で三十七度六分に、一ヶ月で三十七度九分に。発症から一年で三十八度を超えるようになった。意識を保つのが難しくなり、だんだん眠って過ごす日が増えていった。一日に四時間ほどしか起きていられない。寝ていても体温が下がるわけではない。徐々に上がっていくばかりだった。三十九度を超える日も出てきたころには、思考は途切れがちになり、自分が何者で、何をしていたのかわからなくなった。幻覚、幻聴が現れ、夢と現実の区別がつかなくなった。自分がどんな状態なのかを把握することが難しくなり、ただ全身の痛みと、さまざまな身体症状にうなされながら、毎日が過ぎていくのを呆然として見送るのみだった。
どうしたら熱が下がるのかわからない。どうしたら、どうやったら研究が続けられるのかわからない。
この後に及んで、私はまだ将来のことを考えていた。
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