第10話 生理が来ない

 熱が三十七度以下にならなくなった頃、生理が来なくなった。もともと重い方で、周期は長めだったものが、完全に止まった。体温と生理周期の関連は理解していたので、これは当然のことと言えた。

 最初の三ヶ月ほどは気づかなかった。生理どころの話ではなかったからだ。微熱は三十七度五分を超える日が増えてきつつあった。体がだるい。頭は回らない。そんな状態で研究など続けられるはずがなかったが、当時は気づかなかった。一行でも論文を読み、実験を続けなければならないと思い込んでいた。人生を賭けていた。(賭けには負けた。)

 耳鳴りを感じてからおおよそ一年ほど経っていた。体の変調はますますひどくなっていた。体のだるさから一日の睡眠時間は八時間ほどになり、一日のほとんどを寝転んだ状態で過ごすようになっていた。これを「休んだ状態」だと、当時は思っていた。横になるというより、「縦になれない」状態なのだと、のちにわかった。

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