第9話 言葉が聞き取れない

 普通の会話で齟齬を起こすことが増えた。もともと聞き取る能力があまり高くない。唇を読まないと聞き間違いをするタイプだ。それにしたってこれは、と思うほどに、会話が成り立たなくなってきた。

 聞き間違いも増えた。どうしてそこにそんな単語が、いや、話が繋がっていない、聞き間違えてそのまま、何を喋れば。

「聞いてる?」

 聞いていると返事をする。実際、聞こえてはいる。内容がわからないだけだ。体温は三十七度三分。まだ微熱の範囲内だが、二ヶ月は続いている。これのせいかと薄ぼんやり思う。熱が引けばまた元に戻るのか。かかりつけの内科に行き、眠り薬がわりの風邪薬をもらう。ついでに今の体温と状況を報告する。医者にも何が何だかわからないようだった。もしかしたら、正気で喋っているつもりでも、こちらの言うことが支離滅裂で、伝わらなかったのかもしれなかった。薬代を支払いながら、お金が減っていくな、どうしようか、と考えていた。

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