第8話 熱1

 体がだるい。熱が出ている気がする。

 耳がおかしくなってから三ヶ月ほど経った八月の初めごろ、風邪をひいた。熱がある、と言っても三十六度八分。微熱だ。夏に風邪をひいたことが無かったため、何をしていいかわからなかった。とりあえず、冷房の温度に気をつけながら眠ることにした。この頃、眠るために飲んでいた風邪薬をやめたので睡眠時間はずっと四時間を切っていた。それでも一日布団の中にいると、それなりに眠気もしてきて、久しぶりに長く眠った。

 一週間経っても熱が下がらない。ずっとだるい。いつ計っても微熱のまま、さらに三日が過ぎた。ただでさえ遅れている実験が、全く進んでいない。休むことはやめにした。

 一ヶ月経っても熱は下がらなかった。いくらなんでもおかしい。かかりつけの内科に相談したが、微熱だろうと言われた。体力が少しずつ削られていき、睡眠時間が少しずつ増え始めた。

 十年に渡る「微熱」とは、この時はまだわからなかった。

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