第6話 眠れない

 いつの間にか、眠りに落ちることが難しくなっていた。うとうとする。そのまま数時間、布団の中で論文のことを考える。そのうち、ふっ、と意識がなくなって、気づいたら朝になっている。三時間も眠れていない。

 これはまずいと思った。元々、過集中の気がある。いったん集中し始めると数時間から十二時間くらいまで、戻って来られない。休憩というものをコントロールする能力が生まれつき欠けている。一日の大半を論文の読み書きで集中して過ごしているから、集中が切れるとしたら、それは道を歩いている時だ。

 突然意識が途切れた。

 信号待ち。睡眠不足で気絶した。電柱に思い切り頭をぶつけたおかげで車道に倒れ込まずに済んだが、もう数センチ横に立っていたら死んでいた。まずいと思った。何とかして眠らなければ死ぬ。それも人に凄まじい迷惑をかける方法で。

 飲むと眠くなる風邪薬を飲んで寝ることにした。この当時はまだ睡眠薬という選択肢は思いつかなかった。

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