第5話 顎が痛い

 歯を食いしばるようになった。

 顎が痛む。歯が痛いのかと思ったから歯医者に行った。虫歯はなかった。親知らずが痛むのかと思って、生えかけていた右の親知らずを抜いた。麻酔が途中で切れるというアクシデントに見舞われ人生で八番目くらいに痛い思いをしたが、それは大したことではない。

 問題は、歯が原因ではなかったことだ。親知らずを抜いても顎の痛みは治らなかった。それに、なぜか痛み止めが効かない。温めても冷やしても効果はなかった。揉んでみてもどこかがこっているというわけではなく、ただ痛いだけだった。

 そもそもどこが痛いのかはっきりしない。何をしても変化は無く、痛みの出どころがわからない。歯茎の周りではないし、顎の骨でもない。強いて言うなら神経だ。また神経だった。腕と同じ、顎の骨の奥の神経のようなところが痛い。ズキズキするというよりは火で炙られるようにずっと痛む。集中力が落ち、論文を読むどころではなくなっていった。

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