第3話 目がかすむ

 文字がブレることに気づいた。論文を読んでいる最中、視線が定まらない。読み間違え、読み直そうとしてどこを読んでいたのか見失い、読み直し、また読み間違える。

 まるで目の機能が衰えたかのようだった。

 目を使いすぎたのか。物心ついてからずっと文字を読んで生きてきた。それ以外に興味のあることはなかった。だから目の寿命を使い切ってしまったのか。まるで老人のように目がしょぼしょぼして、思うようにならない。

 眼科へ行った。目がおかしいんです、と訴えた。目の検査をした。異常は無かった。ドライアイですらなかった。眼精疲労かもしれませんね、少し目を休めて遠くを見るといいですよ。そんな助言だけもらって、相変わらずしょぼしょぼする目で論文を読む。

 読むスピードが落ちている。理解も遅くなっている。焦りから読む時間を長く取るようになった。余計に目がかすむ。目薬をさしても効果はなく、目と耳が役に立たなくなってしまった。

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