第39話 時間が無い


母が優斗に蒼の事で、伝えることがあると……話を切り出す。


母[……蒼ちゃんの事よ……]

優斗[……蒼の事…………]

母[……その前に……蒼ちゃんの症状についてなんだけど……あの症状は今回が初めてだったのかは……分かる?]

優斗[…………初めてじゃ……なかったっぽい……]

母[……ぽい?]

優斗[……と言うのも……蒼のやつ俺にも隠してたんだ……実は文化祭の時には…既に…目眩とか症状はあったみたいで…………あ……それでさ、ほら、文化祭の終わった帰りに、俺が蒼を背負って帰って来たじゃん……あの時も……今回ほど症状は強くなかったけど……同じようになってて……でも……蒼に……母さんには言わなくていいって言われてさ……俺も……疲れて目眩おこしただけだと思ってたし……だから母さんには言ってなかったんだ………でも……最近じゃ……頭痛が酷くて……寝れなかったみたいでさ……それで寝坊も多くなってたみたいなんだ……]

母[…………そう………やっぱり……]

優斗[……やっぱり……?]

母[……実は……ね……まぁ……蒼ちゃんの話しでもあって、父さんの話しにもなるんだけど……]

優斗[…………うん……]

母[……ずっと言ってなかったけど…………実は父さん……末期の……癌だったの……]

優斗[え?…………そんな話……初めて知ったんだけど……でも父さんピンピンしてたじゃんか…………]

母[優斗の前じゃね……(苦笑)……優斗には弱った父親の姿見せたくなかったみたい……(笑)]

優斗[……なんだよそれ………でも………確かに……ダイエットだ……とか言って徐々に痩せてた来てたのは知ってたけど…………それで……]

母[…………そう……だから、父さんは今の医学じゃ無理なものを治そうとしてたの…………新薬を作ってね…………母さんは父さんに言われるまま薬を作り続けたわ…………そして、実験を2人で続けてきたの…………だから、母さんは全てを知ってるつもりだった…………だったんだけど…………]

優斗[…………だったんだけど?]

母[…………実は父さん……母さんに内緒で……母さんの作った薬を掛け合わせて……1人で実験してたみたいなの……]

優斗[……そう……か……]

母[……えぇ…………で……なんで知ったかって言うと……以前父さんに、自分に何かあった時だけに見て欲しい、って言われていたデータがあったんだけど……そのデータの中に父さんが……1人で実験してる様子が録画されてたの……だから………母さんが説明するより優斗が見た方が早いと思うから……見てくれる?……]

優斗[……分かった……]


母と優斗は父の部屋へと移動した。

そして、父のデータが入っているパソコンを起動させ優斗に見せる。


母[……取り敢えず、重要な所だけ見せるから……これよ]


母がデータをクリックする。

そこには、父が実験をする姿が映し出された。


優斗[…………父さん…………]

母[………………]


優斗は久しぶりに見る父の姿を見入っていた……。

そんな優斗を母は横目でチラッと見た後…何とも言えない心情になっていた……。


父[……えー……と……カメラはこの辺で大丈夫だよな……こう言うのはどうも苦手で……何度やっても……上手く出来ないんだよな(苦笑)よし……今からマウスを使った実験を行う……と言っても……これで50回目だけどな(笑)……だか、今回は母さんが作ってくれた薬を掛け合わせて行う実験だ……コレは母さんには秘密にしてある……怒られるからな(笑)…………まぁ……それは冗談として……実際危険な事だからだ……それに母さんを驚かせたいってのもあるしな(笑)…………でも……成功すれば…………医学的にも……いや、人類の未来がとても明るいものとなるだろう……ってこの台詞は何度も言ってるか(笑)………あーそれよりも実験の説明だな(笑)………今回、実験に使うマウスは10匹だ……それと比較するた為に1匹だけ若いマウスを隣に用意した…………あ……コレな……]


父がカメラの角度を変えマウスを見せた。マウスは若いマウスと老化したマウスが仕切られて別々に透明なケースに入れられていた。


父[……マウスの年齢は人間で言うと~今の俺と同じくらいだな……それに加え……癌細胞も加えてある…………因みにマウスは全てオスを使用した……なぜかって?……俺も一応オスだからな、色んな機能が正常でいられるか調べる必要があるしな(笑)……ははははッ…………]

優斗[………………]

母[………………]

父[……まぁ……そう言う反応になるわな……それでは、実験を開始する]

優斗[………何ともコメントしづらいわ………]

母[フフフッさすが父さんね(笑)]


映像が続く、父がその後、薬を複雑に掛け合わせ、老化したマウスに1匹ずつ投与していった。

マウスは黒い毛が生えたマウスだった。若いマウスの方は毛の質がしっかりとしていて艶がある。そして、老化したマウスの方は毛に艶も無く、毛量も少なくまばらな状態で皮膚が見えていた。


父[……よし……これから数時間から数日に掛けて様子を見ていこうと思う…………人間の場合、細胞分裂は16時間掛けて最後の1時間で分裂するが……マウスの場合は18時間掛けて1時間で分裂をするんだ……なのでちょっと実験には時間は掛かると思うが…………因みに、細胞分裂には限界が有る……なので老化すると、老化細胞が原因で癌細胞になったりするのだが……あ~細かく言うとだな細胞の中のミトコンドリア…………って……いかんいかん……コレでは永遠としゃべってしまう…………とにかく、簡単に言うと……この薬の作用で色々と不具合を起こす老化細胞が除去され新たな細胞が出来て……まぁ最終的には癌細胞も消え若返る……はずなんだ…………取り敢えず……ここまでだな……]


ここで一度映像は切れる。

そして、また、映像が再開する。

すると、カメラ映像が揺れながら映像が始まる……その感じから父の慌ててる様子が伝わった。


父[……ちょッちょっと……見てくれッ……なんて事だッ…………たった……40分程度で…………]


マウスの透明ケースがズームされる。

そこには、先ほど投与されたはずの老化していたマウスの姿はどこにも居なかった…………居なかったと言うのは、消えたと言う意味では無く……先程、ケース内の全てマウスが若いマウスになっていたのだ……そして……老化していたマウスは一目見ただけで分かるほど、毛並みは艶が出ていて毛量も増え明らかに若返っていたのだ……。


父[…………信じられない……………………あ……と、取り敢えず……マウスを出して確認してみよう……]


マウスをケースから取り出し、確認をする父……。


父[…………こうやって触って近くで見ると……ますます若いマウスと見分けが付かない程だ…………ちょっと……身体も色々と調べてみようと思う……]


ここで、また映像は切れる。


優斗[…………父さん……すごいな…………本当に実験でも成功させてたんだ……]

母[………………ここから、色々と実験を繰り返したり、マウスの身体を調べたみたいなの…………その間の映像は飛ばして………見せるわね……]


母がデータをクリックする。

父が映りだされた。


父[…………カメラは………よし…………あー……あれから……まぁ最初の実験成功からか…………今日まで例のマウスを色々と調べたり観察して来たのだが…………結局……今日まで生き残ったマウスは1匹だけ……だった…………はっきり言って原因は……分からなかった…………室温……エサ……環境……健康状態……全てほぼ一緒だったのだが…………………あ、それはそれとして…………やはり驚かされたのは…………性別が変わっていた事だな……]

優斗[…………]

母[…………]

父[…………生き残ったマウスだけが……メスになり……遺伝子事態が全くの違うものになっていたのだ…………フフ(苦笑)……流石に~コレには驚かされた………………考えられない事実だ……これも色々と調べたが……どう頑張っても調べようが無かった………………………が、癌が完全に消え……生き残れる可能性があることが分かっただけで、嬉しい成果と言えるだろう…………もう少し頑張って調べようと思う……]


ここでまた、映像が途切れる。


母[…………次が最後よ]

優斗[……うん……]


最後の映像が流れる。

父がカメラの真正面に座り話し出す。


父[…………んッんッ…………あー……んー……何から話そうか……………………まぁ…………そうだな…………今回……実験は成功したが………確率的に言うと……成功率は非常に低いと言うことが言える…………何度か同じ実験を繰り返したが…………結果は同じで……成功率は……1/10……つまり……1割って所だな…………もっと……成功率を上げたかったのだが…………どうやら……時間が無さそうなんだ………………まぁ……コレを見てるってことは……もう……優斗も知ってるかも知れないが……父さんは末期の……………………癌なんだ…………もう………………最近じゃ……体力も無くてな……(苦笑)…………………………身体も痩せ細ってしまって……………………動けなくなるのも間近だ……(苦笑)]


父のそんな言葉や姿を見て……涙ぐむ優斗…………そんな優斗を見て母も涙が流れる……。


父[………………だがな…………父さんは最後の最後まで諦めたくないんだッ………………だから……この薬の調合で最後に母さんに作ってもらって…………試そうと思う…………どっちにしろ……このままだと……俺は……もっても1ヶ月だろう…………だったら!………………成功率は低いが…………………奇跡が起きることを信じて掛けてみようと思う………………最後の最後まで…………諦めるな……は…………いつも優斗にも言ってきた事だし(笑)……オヤジの俺が……ここで諦めるのは……ちょっと格好悪いからな(笑)………………それでなんだが……言っておきたい事がある…………仮に成功したとして……生き残った場合なんだが…………マウスの実験で分かってる通り…………恐らく遺伝子は全て変わり………………そして、性別も変わる可能性がある……人格も残っているかは分からない………………その後、恐らく……1年程経った頃…………頭痛や目眩の症状が現れると思うんだ………………その時は……この薬を与えて欲しいんだ…………人間の身体なら……コレを朝・昼・晩と摂取する事によって症状は抑えられる……と思う…………ただし…………コレは未完成で…………完全に治せるけでは無い…………症状が進めば………………やがて…………全ての機能が低下し………………最終的には…………………………死んでしまう………………]


父のその言葉に……その事実に肩を落とし下を向く優斗。


優斗[…………そんな…………て事は……蒼は…………]

母[………………優斗……まだ続きがあるわ……ちゃんと最後まで見ていなさい]


そう言って母は優斗に画面を見るように促す。

顔を上げ、もう一度画面を見だす優斗。


父[…………なので…………すまないが…………母さん……いや……三咲……この薬の完成を…………託したいんだ………………難しいと思うが…………三咲なら出来ると信じてる……………………もし……もしも……間に合わなかった場合…………もう1つ薬を用意した……だが……これは……これまでの効果を無効にし…………元に戻す作用がある…………つまり…………全て元に戻ると、言うことだ…………意味……分かるよな?…………身体は元通りの年齢に戻り…………勿論……癌は……一時的には無くなってるかも知れないが……ほぼ100%再発する……それに……若返りの薬は二度目は…使えない……使えないと言うか……成功する確率がグッと下がってしまうんだ………一度目の確率は1/10と言ったが…………もし二度目となると…………1/100の確率だ……到底成功するはずがない…………なので…………出来れば何とか完成させてくれたら……有難いと思う……………………色々と背負わせてしまって悪いと思うが……今の俺にはこれが精一杯なんだ…………すまない…………………………あと…………俺が違う人格だったとしても……出来れば……家族として受け入れてくれたら嬉しいかな(笑)……あ、ほら、母さん娘欲しかったって言ってたし(笑)仲良くしてやってくれよ~はははは…………]

優斗[…………]

父[……………………………俺が……なぜ……別の人格になってまで……生きようとしているのかは………………生きた証を残したかったんだと思う………………どうしても化学者としての人生を貫き通したかったんだ…………まぁ……別の人格になってたら……生きるとかの前に死んでるのと一緒だけどな(笑)ははは……………………だか……本当の所………どんな……形でも…………………いや……なんでもない……(笑)………ただただ本当にすまん……………………あとは頼んだぞ……三咲、優斗…………]


ここで映像が終わる。


母[………………そう言う事なの…………ごめんなさい……今まで黙ってて…………]

優斗[…………そうか………………そう言う事か…………薬は…………どうなの…………]

母[…………それが…………色々と試してやってはいるんだけど…………まだ……完成させられなくて…………]

優斗[……そうか……]

母[……父さんの話だと1年くらい時間があるって予想だったんだけど…………やっぱり人間だと……予想よりも……早かったみたいね…………正直……時間が無いわ…………でもッ父さんが残してくれた薬で繋いでいる間に、薬は絶対に完成させてみせるからッ…………それまで、蒼ちゃんには負担掛けてしまうけど……ごめん……]

優斗[……母さんが謝ることじゃないよ…………それにッ父さん言ってたろッ…………最後まで諦めるなってッ……母さんなら出来ると信じてるってさ(笑)]

母[…………そうね……父さんにあぁ言われちゃったらね……やるしか無いわよね……フフ(笑)]

優斗[そーだよ(笑)だから……俺も出来ることがあれば手伝うから…………お願いします……蒼を助けてやってください]


優斗が母に頭を下げる。

そんな優斗を見て母は一瞬驚いたように目を少し大きくさせた後、笑顔で。


母[……なーにッガラにも無く頭下げてんのよ(笑)……あったり前でしょ!父さんから託された大事な娘の命!助けない訳にはいかないんだから(笑)]

優斗[……だな(笑)ははは……]

母[……そーよ……フフフ……]


そう言いながら笑う母の横顔は……どこか寂しげに見えた……。それも……そうだろう……強がってはいる母だが……実際……最愛の夫を失っているのと同じなのだから……そんな想いを感じとる優斗は母に……。


優斗[………ぁ……あとさ……]

母[……なに?]

優斗[……父さん……最後に…さ………どんな形でも……って言い掛けて…………何も言わなかったけど…………たぶん…………たぶんだけど…………きっと…………どんな形でも……【ずっと一緒に居たかったんだ】って言いたかったんじゃないかな?……分かんねーけど……何となく……父さんならそう言いそうな気がして……(笑)ハハハ……]


その言葉に母は……涙ぐみ……。

そして……流れた涙を拭きながら……。


母[…………そぅね……きっと……そうね(笑)………………父さん強がりだから……恥ずかしくて……その言葉……言えなかったんだと思う……母さんもそう思う(笑)]

優斗[……うん]

母[さぁ……蒼ちゃんの所へ行きましょ]

優斗[あぁ]


そして、その後2人は蒼の寝ている所へ行った。

蒼の前に立つ2人。


母[……今は薬で落ち着いてると思うわ……]

優斗[……そうか……]

母[……ただ……蒼ちゃんの身体を少し調べて、今後の薬を作らなくちゃいけないから、1週間くらい学校の方は休んで貰うことになるわね……]

優斗[……わかった]

母[今日は何も出来ないし……こんな部屋に1人……このままだと可哀想だから……蒼ちゃん部屋に連れていってあげて]

優斗[そう……だな、わかった]


優斗は蒼を背負い部屋へと連れていった。

蒼をベッドへ寝かせ布団を掛けてあげる。

優斗は蒼を見つめる……。


優斗[……蒼……]


すると、蒼が目を覚ます。


蒼[……ぅ……ぅん…………]

優斗[……蒼ッ]


ゆっくりと目を開ける蒼。

真っ直ぐ天井を見つめ……ボーッとしている蒼。

そんな蒼の視界に優斗が入る。


優斗[蒼ッ……大丈夫か?]

蒼[……優斗……あれ?……どうしたの?]

優斗[…………覚えてないか?……蒼……海で……気を失ったんだよ]


蒼がゆっくり目を閉じ……そして、また、ゆっくりと目を開き……。


蒼[……そうだ……あたしッ……]


何かを思い出し急に起き上がろうとする蒼だったが……。


優斗[ぁッ……まだダメだって]

蒼[……ッ……]


まだ、完全に調子が戻っていない蒼は……クラっと目眩を起こしパタンと枕に頭を戻す……。


優斗[……ほらな……まだ、本調子じゃないんだから急に起き上がるなよ……(苦笑)]

蒼[………………ごめんね……優斗……]

優斗[別に謝ることじゃねーよ(笑)]

蒼[…………そうじゃなくて…………海でのコト……]

優斗[……海でのコト?]

蒼[……ぅん……その……あたし……勝手に1人で怒って……]

優斗[ぁ~ぁ……別にいぃって(笑)気にしてねーよ(笑)……それに……俺も蒼の気持ち汲んでやれなくて悪かった……]

蒼[………………うぅん…………あたしこそごめん…………また……優斗に迷惑掛けて…………]

優斗[大丈夫だよ(笑)それに、そんなのいつものコトだろハハハッ(笑)]

蒼[…………]

優斗[……ハハハ……………っておいッなにッ気にしてんだよッ……冗談だって]

蒼[…………ぅん……知ってるよ]

優斗[…………だったら何でそんな反応なんだよ……]

蒼[…………あの時ね……なぜか……分からないけど………………時間が無い……って思ったの……]


優斗はその言葉に少し動揺した……。


優斗[……な……何言ってだよッ……時間が無いって……これからもずっと一緒に居るって俺が言ってだから時間ならいくらでもあるだろ(苦笑)]

蒼[…………ぅん…………そう……だよね]

優斗[そーだよッ…………ったく何言ってんだか蒼~……]

蒼[……ぅん……何かごめんね(苦笑)意味分かんないよねアハハ……どーかしてた……あたし(苦笑)]

優斗[……そッ……それよりさ……蒼]

蒼[うん?]

優斗[……その……目眩の事や頭痛の事なんだけど……ちょっとだけ……母さんが蒼の身体を調べたいんだってさ…………あ!……別にどこか悪いとかじゃなくて!…蒼に合う…ちゃんとした薬を作るためにッ……その……一応~……一応なッ…(苦笑)]


蒼はジーッと優斗を見つめる。

見つめられ……何となく焦る優斗……。


優斗[(な……なんだ……?)]


すると……蒼は笑顔で。


蒼[うん、分かった]

優斗[……え?……あ……いぃのか?]

蒼[……なんで?あたしの為に薬を作ってくれるんでしょ?……だったらいぃよ(笑)]

優斗[……そうか……なら良かったよ(苦笑)……あ……ただ……1週間くらい……学校は……休まないといけないらしいんだけど……]

蒼[……え……1週間も…………]

優斗[……ぁ………あぁ………その……調べるのに時間が掛かるらしくて……]

蒼[……そっか……分かった……]


蒼は少し気が沈んでいた。


優斗[……だ…だよな……やっぱ……1週間ただ家に居て身体調べられるのは……キツいよなぁ……俺でもキツいし……]


蒼は下を向きながら首を横に振り……。


蒼[そーじゃなくて……]

優斗[……ん?]


蒼が少し小さな声で。


蒼[…………1週間も……優斗と……一緒に学校に通えないのが……ツライ…………それに……今の状態じゃ……お弁当も……まともに作って上げられないかもしれないし…………何よりそれがツライかな…………だって……優斗……栄養片寄った物しか食べないんだもん……心配だよ……]


蒼は自分の身体の事よりも、優斗の事を心配し……暗くなっていたのだ。

そんなけなげな蒼に胸が張り裂けそうになる優斗……。今すぐ、いつものように思いっきり抱き締めたかったが……安静にしないといけない蒼を気遣い優斗は。 優しく蒼の頭を撫でた。


優斗[……バカだな~蒼は(笑)……俺なんかの心配してないで、もっと自分の心配しろよ(笑)……でも……その気持ちすげー嬉しかったッ……ありがとな蒼(笑)]


蒼は優斗に頭を撫でてもらい嬉しそうに、コクっと頷いた。


蒼[ねぇ優斗]

優斗[ん?]

蒼[ギュゥしたい]

優斗[え?でも、あんまり動くと]

蒼[……動かないよ、ギュッてするだけだし]

優斗[……んー……分かった……チョットだけだからな]

蒼[うん]


優斗は蒼を優しく抱き締めた。

蒼が優斗の胸に顔を埋める。


蒼[ん~~優斗の匂い~]

優斗[……おい(苦笑)嗅ぐなッ嗅ぐなッ汗くせーから(苦笑)]

蒼[クサくないもんッ優斗の匂い好きなんだもん(笑)]

優斗[……そーかよ(苦笑)まぁ……俺も蒼の匂い好きだけどな(笑)]

蒼[あたしのはいぃからッ]

優斗[意味がわからんって(笑)………蒼]

蒼[……んー?……]

優斗[……………………いや…………なんでもねー(笑)……]

蒼[フフフッ何それ~]


優斗は先ほど蒼が、【時間が無い】と思ったと言っていた事に対して聞こうとしたが……少し怖くなり聞くのをためらい、止めたのだった。


優斗[(……何となく……蒼の中の父さんだった頃の危機感みたいなのが……蒼をそうそせたのか?…………ダメだ……聞くのも考えるのは止めよう……)]


そして、次の日。

玄関で見送る蒼。


蒼[……お弁当作れなくて……ごめんね……]

優斗[大丈夫だよ(笑)それより、今は安静にして少しでも早く蒼の体調が戻ってくれた方が俺は良いから(笑)]

蒼[うん、ありがとう優斗ッ……]

優斗[……あぁ……じゃぁッ行ってきます]

蒼[行ってらっしゃい]


こうして、蒼が登校しない1週間が始まった。

歩きながら優斗は、ふと思った。


優斗[……(あ……一樹のやつ……蒼が登校しなくて……また騒ぐだろうなぁ……はぁ~……めんどくせー……)]

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俺の父は女子高生! 明日みりか @11128243

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