第36話 (2日目)文化祭は色々と大変だ【文化祭……まじで疲れた…】


陽葵が何かを言い掛けた時……そこへ優斗が戻ってきた。


優斗[あー……まじで疲れた……]


優斗は頭をかきながら、わりーわりーと言う感じで教室に入り……。


優斗[わりー遅くなった~卒業した先輩に捕まってさぁ~(笑)一樹のヤツは、まだ捕まってたから置いてきたわ(笑)]


陽葵は優斗の方を一瞬見た後、言い掛けていた続きを話し出した。


陽葵[……優斗先輩と!キ、キスしましたぁ!]

蒼、由衣[!!?]

優斗[え?]


由衣と蒼は…目を大きくさせ……驚きのあまり……そのまま固まり。

優斗は頭をかいた状態のまま…目を丸くさせたまま固まった。

シーンとする教室……一瞬……時が止まっていた。

しばらくして……由衣の思考が動き出し……。


由衣[……ど……どう言うこと…]

陽葵[……ど…どう言うことって……そッ…そう言うコトですッ]

蒼[…………え……とぉ……]


蒼は未だに混乱したままだった。

優斗は……と言うと…………。


優斗[(……え……え?……陽葵…………ちょ……な……なんて言った?…今…言ってはいけないコト言いませんでした?…………いや……言ってはいけないって言うか……それ以前に…………陽葵が……そう言う事を……皆の前で言い出すなんて頭にも無かった……いや……てか……陽葵には誰とも付き合ってないと言ってしまってたし…………つーか!蒼は!?……)]


優斗が蒼の方をチラッと見ると……。

蒼は……未だに何とも言えない表情で固まっていた……。


優斗[……(……ですよねー…………い…言い訳と言うか……り……理由を話さないと………………てか!そもそも!俺からしたんけじゃねーし……そーだ!……)……あ……あのぉ……]


優斗が理由を説明しようと切り出した瞬間……由衣がニコニコしながら……優斗の方へやってきた……目の前で止まる由衣……優斗には何故か見えるはずのない……【怒】マークが由衣の頭に見えていた……。


由衣[優斗くぅ~ん(笑)]

優斗[(優斗君!?)は…はい……]

由衣[一旦教室の外に出ててもらえるかな?女同士で話したいことがあるの~(笑)]

優斗[え……]


由衣が一気に表情を変え……低い声で……。


由衣[いいからさっさと外出てて]

優斗[…あ…はい……]


そう言うと教室の戸をピシッと閉められ優斗は外に出された。


優斗[…………]


由衣は閉めた戸の前で少しフリーズした後、振り向き……陽葵の方を見て笑顔で……。


由衣[陽葵ちゃ~ん(笑)ちょっっっと~詳しいお話し聞かせてもらいましょうか?(笑)]

陽葵[え…ぁ…はい……(こ…怖いッ……顔が笑ってるけど笑ってない!やっぱり言わなきゃ良かったかなッ!?)]


そして……少しして……教室の戸が開けられた……廊下で待っていた優斗は開いた音にビクッとして戸の方を見る……。


由衣[どうぞ~(笑)]

優斗[…………あ……はい……]


優斗が教室に入る。


優斗[……あ……あのぉ……]

由衣[……陽葵ちゃんにキスしたんだってね?]

優斗[……ッ……(直球だなッおいッ)……あ……いや……した……と言いますか……され…た?……ですかね……(したって何だよ!?……俺は被害者だって……)]

由衣[ふーん?おかしいわね?陽葵ちゃんの話だと優斗の方からキスをしたって言ってたわよ?]


蒼が【うんうん】と言う風に首を縦に振る。


優斗[しッ……してねーよ!む……むしろ俺がされた方だし…………]


そう言って、優斗が陽葵をの方を見ると陽葵は斜め上の方を見てとぼけ面をしていた……。


優斗[(陽葵のやろ~……)]

蒼[優斗ホントなの?]

優斗[ホントだって……お…おい……陽葵]

陽葵[……え……あ……いや……]

由衣[陽葵ちゃん?さっきの話は嘘なの?]

陽葵[……う……嘘では、ありませんッあたしのファーストキスを奪われたんですからッ]

由衣[ファーストキスだったのッ!?]

蒼[…………]

優斗[!……奪われたって……]

蒼[優斗……ホントにしたの?……]

由衣[優斗?]


由衣と蒼が優斗をじっと見る。


優斗[お…おい……だから違うだろッ……]

由衣[な~にが違うって言うの?ファーストキス奪っといて?]

優斗[だから……お……俺から…したわけじゃなくて……陽葵から……だって……]

由衣[………ホントに?苦し紛れに嘘ついてるでしょ?]


由衣が優雅の顔付近にグッと近付く。


優斗[ちょ…ちょっと落ち着け……嘘じゃねーって……それに【した】と【された】じゃ全然違うだろ……]

蒼[………………優斗……からじゃないってこと?]

優斗[そーだよ……]


由衣と蒼が見つめ合う。


由衣[……なんか………さっきの話と違くない? ……陽葵ちゃんのさっきの話だと……優斗が陽葵ちゃんのコト慰めて優斗の【方から】キスをしたって言ってたわよね?]

蒼[……うん……言ってた……]


そして!蒼と由衣が陽葵の方を見る。

陽葵は少し焦りながら……ヤバいと思ったのか。

小声で……。


陽葵[……あ……ちょっと……だけ………間違えましたかもですねぇ~……ぁはは(苦笑)………で…でもッ……したコトは事実ですからッ……]

優斗[……おい……陽葵]

由衣[わかった…………優斗から【した】って言うのは嘘だったわけね……]


優斗は誤解が解けたと思いホッとしながら頷いていた。


優斗[そぉそぉ(笑)(良かった……誤解が解けて)]

由衣[……でもって【された】コトは事実だと]


優斗はそのまま勢いで。


優斗[そぉそぉ(笑)……………(ん?……あれ?……コレってどっちにしても……責められるパターンなんじゃ……)]

由衣[優斗ッ……あなたねぇ~ちょっと無防備すぎない!?]

優斗[……ッ……いや……]

由衣[だからあんたはッ……]

蒼[由衣ちょっと待って]

由衣[……な、なによ?蒼]


優斗を責める由衣を止める蒼。


蒼[由衣…少し落ちつて]

由衣[…………ぅ…………]

優斗[(蒼……)]

蒼[優斗……もう一度だけちょっと、廊下に出ててもらっていいかな?]

優斗[…………ぁ……あぁ……わかった]


優斗が廊下に出る。


由衣[どうしたの?蒼]


陽葵の方を見る蒼。



蒼[陽葵ちゃん]

陽葵[は…はい……]

蒼[陽葵ちゃんと優斗は同意して……キスしたの?]

陽葵[……い……いえ……す…すみません…あ……あたしから……一方的に……です……]

由衣[…………]

蒼[……そっか…………陽葵ちゃんは……優斗のコトが大好きなんだよね?]


うつ向いていた陽葵が顔を上げ蒼の方を見る。


陽葵[…も…もちろんですッ……優斗先輩のコトは中学の頃からずっっと大好きでしたからッ……この気持ちに嘘はありません]

蒼[……そっか……………由衣]

由衣[……なに……]

蒼[陽葵ちゃんも優斗のコトが大好きなんだって……(笑)だから…………一方的にキスはしてしまったかもしれないけど……あたし達と同じだよ]

由衣[……同じって……何が?]

蒼[優斗を想う気持ち]

由衣[…………]

蒼[だから……もう……陽葵ちゃんや優斗を責めるのやめにしない?]

由衣[……あ……あたしはッ……別に……責めて…なんか…(……………………いや……あたしは……この子のコトや優斗のコト責めといて……自分のコト棚に上げてただけだ……あたしもこの子と同じコトやってたのに……あたし……陽葵って子より子供だ……)……ごめん……蒼……あたし……]


蒼は笑顔で。


蒼[うん、大丈夫だよ由衣ッだから……ちょっと思ったんだけど……]

由衣[……なに?]

蒼[……陽葵ちゃんも……由衣の言っていた……その……ライバルって言う仲間?に……ならないかな?]

由衣[え……]

陽葵[……ライバル……ですか?]

蒼[……うん……そぉ……あのね、あたしと由衣で決めたんだけど……優斗に対してお互いにアピールするんだって…………勝ち負けじゃないけど……最終的に決めるのは優斗だから……だから……お互いに頑張るの……だから……その……陽葵ちゃんも優斗のコトが好きだから……一緒に頑張るって言うのは……どうかな?(笑)]

陽葵[……え?…………]


陽葵は少し困惑して固まった。


由衣[…………(そりゃ……そう言う反応になるでしょ……)……蒼……あんたねぇ…何言ってるか分かってるの?そ・れ・は…あたし達だけだったから提案したコトだったのに………これ以上ライバル増やしたら……あなただって………(ってかライバルの意味分かってるのかしら…………でも蒼は言い出したら聞かないしなぁ……それに……どれだけお人好しなのよ……)はぁ~まぁ……いいわ……(これ以上もめるの嫌だし)……で……あなたはどうするの?]


由衣が振り向き、陽葵に聞く。


陽葵[……ぁ……えーと……(…え?…てコトは…………ある意味チャンスってこと?)…………あッ……あたしも……その……仲間に……入りたいです!……]

蒼[うん、わかった(笑)]

由衣[別に良いけど……仲間になるんだったら、変な策略で、あたし達をおとしいれたりしないってのも条件だからね……その代わりに、各々誰も口出ししないって言うコトだから良い?]

陽葵[……なるほど……(その方が都合が良いかも……(笑))分かりました、その条件のみます!]

由衣[そぉ……蒼……だってさ、納得した?]

蒼[うんッ納得しました(笑)良かったね陽葵ちゃんッフフフッ(笑)]

陽葵[……あ……はい(この人……何考えてるんだろ……あたしだったら絶対にこんな提案しないのに……)]

由衣[…………あなた……今、蒼のコト不思議がってるでしょ]

陽葵[え……ぁ……いや……]

蒼[?]

由衣[別に隠さなくてもいいよ、だってあたしも、いつもそんな感じだし……ただねぇ……ちょっといぃ?]

陽葵[はい?]


由衣が蒼から少し離れた所に陽葵を誘ってコソコソと話し始めた。


蒼[?]

由衣[蒼はねぇ……あたしの大事な大事な親友なの……もし、蒼をおとしいれて傷付けるような事したら本当に許さないからねッ……それだけは覚えといて]

陽葵[あ…はい……分かりました……]

蒼[どうしたのー?2人でコソコソ]

由衣[ん?なんでもな~い(笑)ちょっとクギ打っただけだから(笑)ねッ]

陽葵[……あ……ハハハ……(そこまでオープンにクギ打つ言うなら……コソコソ言わなくても……)]

蒼[クギ……?]

由衣[あ……そろそろ優斗のコト呼んであげないと可哀想じゃない?(笑)]

蒼[あッそうだね]


蒼が優斗を呼びに行く。

優斗が教室へ入ってくる。

優雅は恐る恐る言葉を発する。


優斗[…………ぁ……あの……]

由衣[優斗]

優斗[はいッ……]

由衣[何ビビってんのよ(笑)]

蒼[フフフッ(笑)]

優斗[……え……いや……だってさ……]


優斗が陽葵の方をチラッ見る。


陽葵[大丈夫ですッ優斗先輩ッ全ては解決済みですから(笑)]

優斗[え?]

由衣[まぁ……一応そう言うコトだから]

優斗[……どう言うコトだよ……]

蒼[優斗は心配しなくていぃから大丈夫(笑)]

優斗[……そ……そうなのか?……なら……良かったけど……]

優斗は困惑していたが、余計なことを言ってこれ以上もめるのは嫌だなと思い、その場は取り敢えず納得した。

すると、教室へ一樹が戻ってきた。


一樹[ゴメンゴメン!(笑)遅くなった~いや~先輩に捕まっててさ~あはははッ(笑)]

蒼[お疲れ様~一樹君]

一樹[お疲れ様ッ蒼ちゃんッエヘヘヘ(笑)……ところで~どうかした?何となく変な空気だけど]

由衣[どーもしないわよ(笑)]

一樹[そぉ?なら良いけど(笑)あ~そーだッ今日の帰りに打ち上げやるみたいなんだけどッもちろん行くよなッ!(笑)(文化祭がダメだった分、ここで蒼ちゃんと二人っきりに!(笑))]


それに陽葵が食い付く。


陽葵[打ち上げですかッ?はい!行きます!]

一樹[おっ!来る!?可愛い子は大歓迎だよ!(笑)]

由衣[ちょッ…ちょっと、何で陽葵ちゃんあなたが率先して行こうとしてんのよッそもそも、クラスの打ち上げでしょ?あなたは自分のクラスに行きなさいよ]

陽葵[え~…でも、あたしも手伝いましたしー!]

由衣[そう言う問題じゃないからッ]

陽葵[え~~でも……あたしも行きたいです……]

一樹[俺は陽葵ちゃんいてもいいと思うけどなぁ~(笑)なぁ?優斗(笑)]

優斗[ぁ……あぁ……まぁ…………俺は別にどっちでも……]

由衣[優斗までッ]

優斗[……つっても……俺はパスだけど(苦笑)ちょっと今日は疲れたかな……はは……]

由衣[(なるほど……それでか……)]

一樹[はぁ~ぁ?優斗来ねーのかよ]

由衣[……あー……あたしも~パス…で(笑)…あたしも正直疲れてるからゴメンねッ(笑苦)(優斗が来ないなら行っても意味ないし……)]

一樹[え~~由衣ちゃんまで~!……え……ってことは……]


一樹が蒼の方を見ると、蒼は笑顔で。


蒼[あ、あたしも今日は帰るね、疲れちゃって(笑)]

一樹[やっぱりぃ~~!]


そして一樹がくるっと振り返り陽葵の方を見ると……陽葵は速攻で。


陽葵[あーー……あたしも…ちょっと用事を思い出したので~……今日の所はそろそろ帰りますね~……ぁ……はは…は……(優斗先輩が居ないんじゃただのアウェイだし)]

一樹[陽葵ちゃんまでぇ~]

優斗[……悪いな一樹(苦笑)そう言う事だから……]

一樹[そりゃないよ~(……今日はホントに散々じゃねーかぁ…………くそぉ~!……次ッ…こそは……)]


こうして文化祭は、色々な事がおきながらも、無事に終了したのであった。

そして、帰宅途中……優斗と蒼は二人でゆっくりと歩いていた。


優斗[文化祭……まじで疲れた…]

蒼[いっぱい動いてたもんね優斗は(笑)お疲れ様ね、優斗]

優斗[蒼もな……つーか、蒼達の方が俺らより忙しかったんだから、蒼の方が疲れてるんじゃねーのか?]

蒼[あたしは……大丈夫だよ(笑)それより、文化祭すごく楽しかった]

優斗[……そっか……蒼が楽しかったなら良かったよ(笑)]

蒼[優斗は……楽しくなかったの?]

優斗[……あ……まぁ……俺は……色々ありすぎて…(苦笑)(にしても……蒼……色々あったのに……何も言ってこないし……聞いてもこないな……)]

蒼[じゃぁさ……来年は……絶対に回ろうよッ……今回は全然色んな所に見に行ったり食べに行ったり出来なかったから……]

優斗[…お……おぉ……そーだな(苦笑)]


優斗がそう言うと、蒼が下を向きながら小声で。


蒼[……二人だけで]

優斗[……え]


横を歩く蒼が斜め下から優斗をチラッと見る。


蒼[優斗と二人だけで回りたいな(笑)]


優斗は蒼のその仕草、表情にドキッとする。


優斗[…お…おぉ、分かった来年は二人で回ろう]

蒼[やったッ約束だよッ]


そう言って蒼が小指をたてる。


優斗[ん?]

蒼[指切り(笑)由衣に教えてもらったの、大事な約束する時は、小指と小指を結ぶんだって(笑)]

優斗[ぁ…あぁ指切りか]


小指と小指を結ぶ蒼と優斗。


蒼[約束ッ(笑)フフフッ]


優斗は少し照れながら、蒼の笑顔と指切り【約束】に幸せを感じていた。


蒼[さッ早く帰ろう優斗(笑)]


そう言うと蒼は歩き出す。

優斗は立ち止まったまま。


優斗[…………蒼]

蒼[……ん?……なぁに?]


振り向く蒼。

優斗は気になっていた事を恐る恐る蒼に聞く……。


優斗[…………その…………今日の事…………気にならないのか…………]


蒼は、クルンとまた前を向き、上を見上げながら。


蒼[そーーーだねぇ…………気にならないって言ったら嘘になるけど…………]

優斗[………けど……]

蒼[……あたしは……………優斗が大好きだからッ何があっても信じてる……それだけッ……かな?(笑)]


蒼はそう言うと、振り向き優斗にとびきりの笑顔を見せたのだった。

その笑顔を見た瞬間……そう言ってくれた蒼に対して……優斗は申し訳無さで胸が苦しくなった…………それと同時に自分に対して腹を立てていた……自分の無防備だったり、警戒心の無さで多少なりとも蒼を傷付けてしまった事を……そして……優斗は決心をして……。


優斗[蒼……俺さぁ……今まで、皆や一樹に内緒にしようって言ってたけど…………これからは……]


優斗が何かを言い掛けた時……突然……蒼の様子が……。


蒼[……ッ……]

優斗[蒼?……おい………どうした?]


蒼が急に頭を抑え出した。


蒼[……………]

優斗[おいッ蒼!大丈夫か!?]


蒼が歩道にある電柱に両手で寄り掛かりながら、ゆっくりとしゃがみ込む……。

優斗は直ぐ様、蒼に駆け寄る。


蒼[…う…うん………大丈夫……ちょっと…めまいが……した……だけ……]


そう言うと、蒼は数秒しゃがみ込んだ後、ゆっくりと立ち上がった。


優斗[大丈夫か?蒼……]


蒼は笑顔で。


蒼[……うん……大丈夫……ゴメンね心配掛けて(笑)……ちょっと疲れちゃったのかな……アハハ……]

優斗[…………あんまり……無理すんな…………ほら]


そう言うと優斗はしゃがみ、後ろを向いた。


蒼[え……]

優斗[ほら……乗れよ……背負ってやるから]

蒼[い…いぃよ優斗……だ……大丈夫だから]

優斗[いいから]


蒼は辺りをキョロキョロしながら。


蒼[で……でも……恥ずかしいょ……まだ、明るいし……優斗…皆に見られるよ……恥ずかしくないの?……]

優斗[全然恥ずかしくなんてねーよ、それに……本当はまだ平気じゃないだろ……]


優斗の指摘は正しかった、蒼は優斗に笑顔で大丈夫とは言っていたものの、本当は……まだ、めまいが直っておらず、優斗に心配を掛けないように笑顔で対応していたのだ。優斗は、そんな蒼に気付いてたのであった。


蒼[……ゴメン……優斗]

優斗[何謝ってんだよ、ほら早く]

蒼[う…うん]


蒼は優斗に背負られ帰宅する事になった。

蒼は顔を赤くさせながら。


蒼[……優斗……重くない……?]

優斗[……蒼が重いわけねーだろ]


蒼は、またしても周りを目でキョロキョロしながら。


蒼[ゆッ優斗…や…やっぱり降りようか…?…結構…見られてるよ…]


そう言う蒼に……優斗は顔色ひとつ変えずに。


優斗[別にそんなん関係ねーよ……そんな事より……お前の事の方が心配だからな]


そう言って優斗は黙々と歩き進む。

その言葉に蒼は。


蒼[うッ……(胸がドキドキする……コレって)]

優斗[どうした!?蒼!大丈夫か?]

蒼[だ…大丈夫…………ちょっと……キュン死にしそうになっただけ……]

優斗[……キュンジニ?……なんだそれ?]

蒼[…………マンガで覚えた言葉……たぶん……今みたいなコトなんだと思う……]

優斗[……よく分かんねーけど……どういうコト?]

蒼[ゆッ…優斗は分かんなくていぃよ]

優斗[へいへい……そんな事より……パンツ見られねーよに気を付けろよ]

蒼[だッ……大丈夫だよ、さっき、おんぶされる前に優斗がジャージ腰に巻いてくれたから…たぶん見えてない]

優斗[ならいぃけど……しっかりつかまってろよ]

蒼[うん]


しばらく無言が続いた。すると、蒼が会話を切り出す。


蒼[……優斗]

優斗[ん~?]

蒼[ありがとうね]

優斗[なんだよ(笑)……だから別に礼なんて……]

蒼[うん……だけど……コレで2回目だなぁ~って思って……外でおんぶしてもらうの(笑)……前は花火大会の時……]

優斗[……あ~……そー言えばそうだな(笑)]

蒼[なんか……懐かしいね……(笑)]

優斗[……そうだな……まだ、そんなに経ってねーのにな……(笑)]

蒼[ねぇ優斗(笑)]

優斗[ん?]

蒼[同じコトやっていぃ?]

優斗[同じコトって?]


優斗が聞き返した瞬間……蒼は大きな声で。


蒼[あたしは!優斗が好きーーーーーーー!]

優斗[!]


その瞬間、周りの人々は優斗と蒼に視線が集中した。周囲はそれほど多くの人は居なかったが、それでも視線が一気に集まったのを感じた。優斗は……一気に顔が赤くなった。


優斗[……ッ……]


蒼は直ぐ様、優斗にギュッとして隠れるように顔を埋めた……。蒼は相当恥ずかったのであろう……優斗は背中に蒼の胸から伝わる鼓動を大きく感じ取れていた。


優斗[蒼……おまえなぁ~……そんなに恥ずかしいなら……やんなきゃ良かったじゃん……]


蒼は顔を埋めながら……。


蒼[……だって……優斗ズルいんだもん]

優斗[……なにが(笑)?]

蒼[……あたし……優斗に背負ってもらうの……こんな明るい時間で……色んな人に見られて少し……恥ずかしかったの……なのに優斗は…顔色ひとつ変えずにしてるから…………だから優斗にもあたしと同じ気持ちになって欲しかったんだもんッ……]


そう言って、蒼は優斗に更に強くギュッとした。


優斗[蒼ッ…くッ……苦し~ッ……]

蒼[あッ……ゴメン]

優斗[………ったく(苦笑)……なんだよそれ……]

蒼[エヘヘヘ(笑)優斗の耳~まだ真っ赤だよぉ(笑)]

優斗[うるせぇ(笑)誰のせいだよ]

蒼[優斗のせい(笑)]

優斗[……はいはいそーですよー]

蒼[あーー優斗呆れてるでしょ]

優斗[呆れてねーよ可愛いやつって思っただけ]


蒼は顔が赤くなり。

小声で。


蒼[……やっぱり……優斗はズルい]

優斗[ん?なんか言ったか?]

蒼[何でもない~~ッ]

優斗[わッ!蒼ッ足バタバタするなよッ落とすってッ]

蒼[落とさないで~ッ]

優斗[つーか、それより…もう大丈夫なのかよ……めまい……歩けそうなら歩くか?恥ずかしんだろ?]

蒼[………………ダメかも]

優斗[……今……絶対に考えてから言ったよな……]

蒼[そんなコトないよ~だから、家まで頑張ってね優斗(笑)]

優斗[……ったく調子良いやつだな(笑)]

蒼[エヘヘヘ(笑)]

優斗[(コイツ……本当に段々図々しくと言うか自我が強くなってきたな……俺をおちょくるようになってきやがって(笑)…………まぁ何となく蒼のコト分かって来たような気がして楽しいけど(笑)生意気になってきたけど……可愛いから許すか…………俺も甘いな………これじゃぁ一樹のコト言えねーわ……(笑))]



ゴメンな………蒼………この時の俺は…………蒼のコトを分かったつもりでいて……全然……分かってやれていなかったな……この時も……本当は身体が辛かったんだろう?……無理して………俺に心配掛けないように明るく振る舞って…………それなのに俺は何も知らずに…………蒼が居てくれるこんなにも楽しい生活が…ずっと続くと思っていた……それが……終わりを向かえるかもしれないとも…………知らずに………。


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