第30話 (2日目)文化祭は色々と大変だ【嫌われてない】


そして、校内を探し回る優斗。


優斗[(どこに行った……陽葵のやつ…………そう言えば……イジメられてた頃……あいつよく非常階段の所で1人で泣いてたよな……)]


優斗は校内の非常階段を見て回った。

そして。

陽葵は誰も来なそうな非常階段に腰掛け、下を向き泣いていた。


優斗[はぁ…はぁ……フゥー……やっぱりここ【非常階段】だったな]

陽葵[!…………先輩……どうして……]

優斗[……お前……昔っから何かあると1人で非常階段に来てたから……]

陽葵[…………]


陽葵は、下を向いたまま、直ぐ様バッと立ち、その場を立ち去ろうとした。

が、優斗がパッと陽葵の腕を掴む。


優斗[陽葵、待てって]

陽葵[は、離してくださいッ……]

優斗[落ち着けよ]


腕を掴まれたまま……優斗の方を見ない陽葵。


陽葵[……何でですかッ……あたしなんかッ構わないでくださいよッ……優斗先輩の時間が無駄になりますからッ!……]

優斗[はぁ……何でそんなに悲観的になるんだよ……]

陽葵[……ッ……なりますよ!…………だって…………久し振りに……優斗先輩に会えたと思って話し掛けたのに、素っ気なかったし……避けられるし……分かっていました……中学の時から嫌われてたことぐらい…………それに!……さっきだって結局迷惑掛けちゃったし……あの場の空気悪くしちゃったし………だから……もうこれ以上……嫌なんです!……先輩に嫌われるのが!……自分自身が嫌になるんです…………]

優斗[陽葵…………俺は別にお前を嫌ってなんかいねーよ]

陽葵[……嘘……だってッ優斗先輩、あの頃から急にあたしの事避けるようになったじゃないですか!…………あたしが……あたしの事が……嫌になったんですよね……]

優斗[……いや……それはッ]

陽葵[いいんです!……無理しなくて…………でも……あたしずっと考えてたんです…………優斗先輩があたしの事……なんで嫌になったのかなって………ずっと……考えて……会ってお話しようとも思いました……でも……迷惑掛けなく無かったし…………だから……ずっと会わないようにしてたけど………だけど……このまま会わないまま……本当の事も分からないまま……終わるの嫌だったから……勇気を振り絞って……文化祭の日に……会おうって決めてたんです………だから昨日……偶然のフリをして……優斗先輩に会いました………………]

優斗[陽葵……]

陽葵[…………本当は……あの時……もう……怖くて……足もガクガクで……頭も真っ白で…………何……話したら良いかも分からなくて……どうしようも無くて……だから……ほとんど何話したかも……覚えて無くて…………そんな時…………優斗先輩が行った後……一樹先輩が……「明日、優斗がメイド&執事喫茶やるから来たら」って言ってくれて……………このチャンスが最後のチャンスだと思って……今日……来たんです………………結果は………やっぱり……あたし……ただ単に嫌われてたみたい(笑)……]


陽葵が、そっと優斗の方を向き……頑張って……無理に笑顔を付くって見せたのが分かった。


優斗[……ッ……]

陽葵[……だけど……最後に………優斗先輩…今まで……ありがとうございましたッ……思い出だけは綺麗なままで居たいから……もう……会いに来ませんね]


そう言うと陽葵は涙を流しながら笑顔を見せた。

優斗は陽葵のその言葉に……その表情に……胸が締め付けられた。


陽葵[……それでは……]


陽葵は掴まれていた腕を祓おうとした……が、優斗はその腕を離さなかった。


陽葵[先輩…………腕……離してくださいよ……]

優斗[…………陽葵]


下を向いたまま返事をする陽葵。


陽葵[はい……?]

優斗[……俺は……お前に助けられた事がある……だから……感謝してるし……それに!………本当に嫌いになんてなってない]

陽葵[…………どう言うコトですか……助けられた……感謝してる…………それに……嫌われてない……?]

優斗[そうだ]

陽葵[…………本当に意味がわからないです……あ

……あたし……もう……行きますね]


陽葵は混乱していた……その場を去ろうとする陽葵。


優斗[ちょ……いや、だから……ちょっと待てよ陽葵]

陽葵[い、いや………でもッ……]

優斗[……今ッ……ちゃんと説明するから少し聞いてくれ]

陽葵[……は…はい]


優斗が話し出す。


優斗[少し過去の話になるんだけど……俺がさ……陽葵に初めて会ったのが……中学校の近くの駅のホームだったんだ……たぶん陽葵は覚えてないと思う]

陽葵[………………ちょっと記憶に……無いです……]

優斗[まぁ……だろうな……あの日……俺は体調が悪くて学校休んでさ……病院に向かう途中だったんだ……………それで、電車待ってる時、途中で反対のホームだって事に気付いて……移動しようとして、階段を下りてた時に急に意識が飛びそうになって(笑)身体も言うこときかなくてさ……あーやべ……って思った瞬間……お前が……陽葵が……俺の腕を掴んでくれたんだ…………覚えてないよな?(笑)……]


陽葵は驚いた表情で目を見開いて……。


陽葵[え?……それ……覚えてます…………あの日……あたしも病院の日だったので、学校を早退して……それで……駅の階段を上がってた時……フードを被って何か……具合悪そうに…フラフラ下りてきた人が居て……なんとなく気になって見ていたら……その人……そのまま倒れそうだったので……あたし思わず……その人の腕を掴んでしまいました…………一応「大丈夫ですか?誰か呼びましょうか」って伝えたら首を横に振ってたので……あたしも急いでたし……「ごめんなさい」とだけ言って直ぐに行っちゃったんですけど……]

優斗[……そう……それが……俺だったんだ……たぶん……あのまま倒れてたら……下手したら打ち所悪くて大変なことになってたと思う……]

陽葵[……そう……だったんですか……あれは……優斗先輩だったんだ………………]

優斗[……まぁ……フード被ってたしマスクもしてたし……それに、まだ、その時は……俺も陽葵も面識無かったしな(笑)俺は陽葵の顔見えてたし、制服で……うちの学校の生徒だってわかったけど…………まぁ……それで……俺は陽葵の事、覚えてて………………ある日……学校で陽葵を見かけたんだ…………すぐにその時の事……お礼しようと思ったんだけど…………]

陽葵[……思ったんだけど?]

優斗[…………]

陽葵[……え?…………なんですか?]

優斗[…………いや……思ったんだけど…………もし……陽葵が覚えてなかったら…………恥ずかしいだろ……俺…………だから…………お礼……言わなかったんだ……]

陽葵[……え?……な…なんでですか!?言ってくださいよぉ!覚えてますってぇ!]

優斗[はは……いやぁ……まぁ……]

陽葵[まったくッ]

優斗[い、いや、だからッ色々助けてたろ……]

陽葵[………?………え?…………そぅ言うコトだったんですか!?あたしのコト助けてくれてたのって!?]

優斗[……う……うん……まぁ……はは……]

陽葵[じゃ…じゃぁッ…今まで……てかさっきまで、あたしを遠ざけてたのは?]

優斗[な、なんか分かんねーけど……俺と関わると……陽葵がイジメられてたみたいだったから?……]

陽葵[い、いつのコトですか!?そんのとっくに無いですよ!]

優斗[へ?そ、そーなのか?……]

陽葵[はぁ~……そーですよ!…………あ……あたしは……てっきり…………]

優斗[……ん?……てっきり?]


陽葵が顔を赤くする。


陽葵[な、なんでも無いですぅ!]

優斗[なんでも無くないだろ?てっきり?どーしたんだよ?ダメだぞ、物事はハッキリ言わないと、うんうん]

陽葵[……ッ……ゆ!優斗先輩に言われたくないですぅッ!!]

優斗[へ?…………な、なに怒ってんだよ……]

陽葵[お、怒ってませんッ]

優斗[いや……怒ってるだろ……]

陽葵[はい!怒ってますぅ!]

優斗[ど、どっちだよ……]

陽葵[…………ッ…………あ~ッもぉ~!だ・か・ら!てっきり!……ゆ、優斗先輩が……あの頃あたしの事が……好きで助けてくれたんだと思ってたんですッ!]


陽葵はそう言うと、恥ずかしそうに顔を真っ赤にさせていた。

それを聞いた優斗も顔を赤くさせながら……。


優斗[……ッ……あ……え……っと…………ご……ごめん…]

陽葵[な、なに謝ってんですか!……好きじゃ無かったって事ストレートに認めてるじゃないですか!]

優斗[…あ…いや…………な、何て言うか……その当時は……陽葵の事……あまりそう言う風に……意識してなかったと言うか…………]

陽葵[……ッ……ヒドイ……先輩ッ……あたしは……あんなにアピールしてたのにッ]

優斗[アピール?いつ?]

陽葵[し、してたじゃないですかッ!いつもッいつもッ……所構わず先輩の周りに現れてたぢゃないですか!…………「先輩ッ(笑)先輩ッ(笑)せんぱーいッ(笑)」って!]

優斗[あ……あれは……そう言うコトだったのか……ははは……き、気付かなかった……(苦笑)]

陽葵[はぁ~……気付かなかったなんて……それに!こんな事まで本人に言わせてッ………ほんっっっと先輩は鈍感だし!デリカシー無いですよね!]

優斗[……わ、わるい……(……俺に好意があったからだったのか……)]

陽葵[……あーーもう、何だかバカらしくなってきましたよ(笑)]

優斗[な、何が?]

陽葵[全部です]

優斗[全部って?]

陽葵[色々と……トニカク全て]

優斗[全て……]

陽葵[…………優斗先輩ッ!]

優斗[な、何……]

陽葵[先輩、今好きな人居ます?]

優斗[!ッはぁ?い、いきなり何?]

陽葵[居るんですね]

優斗[い、いねーよッ……]

陽葵[嘘ですね、目を見れば分かります]

優斗[……ッ……]

陽葵[……付き合ってるんですか?]

優斗[だ、だから、いねーって]

陽葵[ふーん、付き合ってわ~……いないんだ~でも~好きな人は居ると……]

優斗[だから……]

陽葵[…………それじゃぁさっきの教室に居ましたか?]


陽葵は優斗の目をジーっと見つめる。


優斗[な、何だよ……この質問責め]


優斗が一瞬、目を泳がせながらそらした。


陽葵[ふーん……なるほど、なるほど……さっきの教室のメンバーか……]

優斗[お、お前は心理学者か!]

陽葵[……その人と……キス……しましたか?]

優斗[……ッ!……はぁ……さっきから何言ってんだよ]

陽葵[……はぁ……そうですか……]

優斗[だから……なにが?……俺の話し聞いてるかッ?]

陽葵[先輩……嘘下手すぎですよ]


陽葵は大きくタメ息をした後……優斗の目を見つめる。


優斗[ひ…陽葵?……]

陽葵[あたし……もうやめます]

優斗[や……やめる……?]

陽葵[もう自分の気持ちに嘘をついて抑えるのも、優斗先輩にも気を使うのも、周りの声を気にするのもやめます]

優斗[……そ…れは……どう言う意味……ですか……陽葵……さん?……]


陽葵の淡々とした言葉や表情に優斗は少しタジタジになっていた……。そんな優斗の顔をジーッと見つめながら……顔を近づけてくる陽葵。


優斗[ひッ陽葵!ち、近いってッ……わッ!]


優斗は陽葵が急に近付いて来たのに驚き、後ろに下がった……すぐ後ろに階段があったのを忘れていたため……階段に尻餅を着いた。


優斗[……ッ……痛ってぇ~……]

陽葵[こう言うことです……優斗先輩]

優斗[はぁ?……痛ッてて……どう言うこッ…]


優斗は言葉半分……顔を上げた瞬間……。


優斗[!]


陽葵は優斗の頬にそっと手を添え優しくキスをした。優斗は何が起きてるのか分からず……固まっていた……。







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