第25話 文化祭の準備は色々と大変だ


クラスでは、文化祭での出し物についての話し合いをしていた。


先生[え~じゃぁ学級委員お願いします。]

学級委員[はい。では、文化祭ですが、皆、うちのクラスで何を出したいと思いますか?]


即座に案を出す男子生徒。


男子A[はい!メイド喫茶で!(笑)]

男子B[俺も賛成!]

女子A[出た~~定番じゃんベタだね~]

男子A[何だよ!良いじゃんベタで!]

女子B[だってそれって男子が見たいだけでしょ?]

男子B[じゃ~何か案あるのかよ?]

女子C[じゃぁ!逆に男子が執事の格好して執事喫茶とか!(笑)]

女子B[あー!それイイね(笑)]

男子B[えー嫌だよ~俺そんなの~]

女子C[それじゃ何か他に案でもあるの?]


男子と女子の意見が別れ、クラスは全然纏まらないでいた。すると一樹が。


一樹[……じゃぁさ!ここは平等に男子は執事の格好で、女子はメイドの格好で喫茶店やるってのはどうかな?それなら両者文句ないだろ?]


女子A[……ん~まぁ……男子もやるって言うなら]

女子B[ん~……まぁ……他に案出てこないし……]

男子A[……んーー……そーだな……まぁそれなら別に良いけどな]

男子B[それだったら~俺も別にいいよ!]


そして、クラスの案が纏まった。


一樹[よーし!じゃぁ決定だな!(笑)(よし!よし!)

優斗[…………おい……一樹……お前が頭回る時は何かしら企んでる時だろ……]


一樹が振り返り小声で優斗に言った。


一樹[はッはッはッ!(笑)良く分かったな~]

優斗[…………(そりゃーなぁ……いつもの事だから……で多分目的は……)]

一樹[だって俺たち男子が執事の格好するだけで~蒼ちゃんのメイド服姿見れるんだぞ!!こんなチャンス手放すわけ無いだろ~(ニヤニヤ)]

優斗[ははは…………(だと思った……はは…………でも……確かに……蒼のメイド服姿……か、かわいぃだろうな……)]


優斗は蒼のメイド服姿を想像して、少し顔を赤くしていた。

声が大きくなる一樹。


一樹[あッ!お前……今、蒼ちゃんのメイド服姿を想像して赤くなってたろ!]

優斗[は、はぁ!?べ、別にそんなん想像なんてしてねーし!]

由衣[…………]

一樹[ホントかな~?まぁ俺は想像してたけどな!(笑)]

優斗[……(だろーな……)てかさ……うちのクラス纏まりわりーんだから、早く準備しねーと間に合わねんじゃねーの?]

一樹[それもそーだな!早くしねーと蒼ちゃんのメイド服姿見れなくなるよな!]

優斗[………あぁ……(まぁ……結局そこだろうな…お前の一番の目的は………)]


こうして、一樹は蒼のメイド服姿を見たいがために、学級委員を差し置いて……見事に的確な指示をして、クラスを纏め上げ段取りを組んでいった。

そして、なんだかんだで、文化祭まで残り1日と迫っていた。放課後は皆で買い物や衣装を作ったりと大忙しであった。


男子A[誰か~倉庫に置いてあった大きいベニヤ板持ってきてくんねー?俺手が離せなくてさ~]

由衣[はーい!じゃーあたし持ってくるね!]

男子A[え?大丈夫かよ?てか、無理じゃね?女子1人で……]

由衣[あーそっか……あ!大丈夫(笑)優斗~!]

優斗[ん?]

由衣[ベニヤ板持ってくるの手伝ってよ!]

優斗[へ?俺今こっちの作業やってんだけど?]


優斗と一緒に作業をしていた一樹がすかさず……


一樹[それだったら大丈夫だ!俺と蒼ちゃん居れば問題ないし!ね!蒼ちゃん!(笑)]

蒼[う、うん……]

優斗[……なんだよそれ……俺は用無しってか?]

一樹[そんな事ねーけど!(笑)ほら、由衣ちゃん1人じゃ無理だろ?早く行ってやれよ~(笑)]

優斗[……わーったよ、じゃぁ……由衣行くぞ]

由衣[うん!(ナイス!一樹~)]

男子B[あーーゴメン!ついでに工具セットと青色のペンキと何かヒモあったら持ってきてくれ~]

優斗[はいよーー(てか、そんなに持ってこれねーだろ……ベニヤ板持ってくる時点で……)]


こうして、優斗と由衣は倉庫に材料を取りに行くこととなった。

そして、倉庫にて。


優斗[ここって、こんなに広かったのか……つーか俺入るの初めてなんだけど、どこに何があるかわかんねーなぁ?]

由衣[うん、実はあたしもなんだよね……ははは]

優斗[え?由衣分かってて来たんじゃねーの?]

由衣[あはは……うん、勢いで……(笑)(だって~!優斗と2人っきりになれると考えての事だもん!)]

優斗[勢いかよ(笑)まぁいいや、取り敢えず探して適当に持って行くか]

由衣[うん!]


優斗と由衣はベニヤ板を直ぐに見つけたが、他の道具等が中々見つからなかった。

その頃、教室では。


男子A[アイツら遅くね?もうこっちの作業終わりそうで、次の材料必要なんだけどな~……]

一樹[んーー……じゃぁ俺見に行ってくるよ!]


蒼がソワソワしながら小さな声で。


蒼[……あ、あたしも行く……]

一樹[ん?蒼ちゃん何か言った?]


蒼が少し顔を赤くして。


蒼[あたしも行く!]


蒼の少し顔を赤くした表情と「あたしも行く!」と急に強く言い出した蒼に一樹が思ったことは……。


一樹[(え?もしかして……蒼ちゃん俺と一緒に居たくて!?)……よし!わかった!一緒に行こう!蒼ちゃん!]

蒼[うん]

男子A[え?見に行くだけなのに、何そんなに気合い入れてんの?一樹]


一樹は完全に勘違いしていた……。蒼は優斗と由衣の事が気になって行きたかっただけなのだ……。

こうして、2人は優斗達の所へと向かった。

行く途中。


一樹[…………(蒼ちゃん……ん~どんな事から話そうかな~いきなり実は俺も蒼ちゃんの事が好きだった!……は無しかなぁ~?……でも、俺と行きたいって言ってくれたし!…………そして、あの表情…………絶対に脈ありだよな!…………ここは……やっぱ男の俺から……よし!)あ、蒼ちゃんってさ~どんな……お、男が……その……た、タイプなのかなぁ~……ははは……(俺何を言ってんの!タイプ聞いてどーすんだよ!今さら!)いや!何となくね!ははは……お、俺はさ~(言え!言うんだ!)……俺は……あ、蒼ちゃん見たいな子が結構タイプだったりして~!てか!………実は……俺、蒼ちゃんの事が好き……なんだ!!…(言った!言ったぞ!いきなり告っちまったケド!)……………………あれ?…………蒼……ちゃん?]


一樹が蒼の方を見ると……蒼は下を向きながら下唇の所に親指の爪を当て、何やら真剣に考え事をしているようだった。


蒼[……う~…………(胸がモヤモヤする……どうしちゃったんだろ……あたし……優斗と由衣が一緒に居るだけなのに……どうして?……)]

一樹[あれれ……蒼ちゃ~ん……(俺の告白……聞こえてない……結構頑張ったのにな……俺)]


一樹……ドンマイ。


一樹[あれ~?何か天の声が聞こえた気がした~あははは~次ガンバロー……]


一樹…………渾身の告白をするが……蒼の耳に入らなかったため……あえなく撃沈。

そして、倉庫では、まだ資材を探していた優斗と由衣であった。


優斗[由衣見つかったか~?]

由衣[う~ん全然見つからな~い]

優斗[じゃー取り敢えずベニヤ板だけでも、持っていかね?]

由衣[う~ん、そーだね~~……ん?コレかも!でも……届かな~い優斗来て~…………あ、でもぉ届くかもぉ~ん~~~]

優斗[あー待って今行く、つーかここもっと片付けておけよって感じだよな~]


優斗が由衣の所に行くと由衣が不安定な台の上に乗りながら、背伸びをして取ろうとしていた。


由衣[う~んも~うちょっとぉ~]

優斗[由衣……大丈夫か?いいから代わるよ(てか何か……この台危なくねーか?)]


そんな事を思っていたら……由衣の乗っていた台がグラつきバランスを崩した……そして由衣は棚の上の資材と共に後ろへと倒れた。

その瞬間!


由衣[キャッ!]

優斗[由衣!!]


ガラン!ガン!ガ!ガン!


由衣[痛~~]

優斗[…………大丈夫か?由衣?]

由衣[う、うん……]


由衣が目を開けると。


由衣[え!?ゆ、優斗!な、何してんの!?]


優斗は倒れこんだ由衣の上に覆い被さるように居たのだ。


由衣[ちょッ、ちょっと!何であたしの上にいるの!?]


由衣が顔を赤くして優斗を見上げる。


優斗[何でって……お前が倒れてそのまま頭打ちそうだったから……]

由衣[え?あ……優斗……目の上……赤く腫れてる……]


優斗[ん?まぁ大丈夫だ、別に大したことじゃねーよ]


優斗はとっさに、倒れて行く由衣を抱き抱えながら由衣の頭の下に手を添え、それと同時に落下してきた資材からも、由衣を守るために覆い被さったのだ。その時に優斗の目の上に資材がぶつかっていた。

由衣は起き上がり、床にペタりと座り込む。周りを見て、その状況を理解した由衣は……。


由衣[……ご、ごめん優斗……痛かったよね……]


優斗を見つめ……涙目になる由衣。


優斗[へ?お、おい、な、泣くなよ 由衣]

由衣[だって……うッ……うッ……あたしのせいで……優斗に怪我させちゃって……うぅ…………]


優斗は頭をポリポリとかいて……。


優斗[……(気まずい……何か慰める言葉を……)……いや!大丈夫だから!全然大したことねーって!だから泣くなよ(笑)俺は男だから、こんなの全然だけど由衣は……ほら!い、一応女だからさ!顔とか怪我したら嫁に行けなくなるかもだろ(笑)?責任取れねーしな~あははは……(何言ってんだろ……俺)]

由衣[……………………だったら…………]

優斗[ん?……だったら?]


由衣が優斗に抱きつく。

驚いた優斗は硬直したまま。


優斗[お、おい、どーした?(笑)……由衣(てか……由衣……胸が当たってますけど……)]

由衣[…………あたしが責任を取る]


そう言うと由衣は優斗にキスをした。


優斗[!!]

由衣[(優斗……)]


頭が真っ白になる優斗。

そして……キスを終え下を向いたまま、座り込む2人。


優斗[(………………え…………どう言うことだ?…………)]

由衣[(…………やってしまったぁ~!…………)]


気まずくなる2人。


優斗[……あーー……]

由衣[……い!今のは……ご、ご褒美!]

優斗[ご、ご褒美?…………]

由衣[う、うん、そう!だ、だから別に深い意味は無いからね!!(う~~~違うでしょ~~あたし~~~逃げないでちゃんと伝えなきゃだよ~…………)]

優斗[あ、あぁ!そ、そうなのか、ははは…………あり……(がとう?って言っていいものか……?)]


混乱する優斗……。

由衣はうつ向いて黙り込む。


由衣[…………]

優斗[……ゆ、由衣?]

由衣[……優斗]

優斗[ど、どうした?]


うつ向いていた由衣が顔を上げ、頬を赤くして優斗を見つめる。何かを言いたげな……そして、とても切ないような……苦しいような……でも、その表情は今まで優斗に見せたことの無い表情で……とても綺麗で……優斗はそんな由衣を……ただの幼馴染みでは無く、初めて普通の女性として意識するのだった。顔が赤くなる優斗……。


優斗[えーと……(由衣ってこんなに綺麗だったっけ……)]


由衣[優斗……本当はね……あたし!]


ガラガラ!っと、戸が開く。


一樹[よーー!おせーぞ!はッはッは]


一樹の後ろから蒼もチラッと顔を出す。


優斗[一樹]

一樹[ん~?どんな状況だ?散乱してるし?]


後ろから見ていた蒼が直ぐ様、優斗の異変に気付く。


蒼[優斗!どうしたの!?]


一樹をはね除け。


一樹[わッ!]


すぐに駆け寄る蒼。


優斗[……あ、ちょっと資材が落ちてきてな(笑)別に大したことじゃねーよ]

蒼[……目の上腫れてる……優斗]

優斗[あ~別に全然大丈夫だって(笑)]

蒼[……手も腫れて……血も出てるでしょ……]

優斗[あ……いや、これは……]

由衣[!]

蒼[由衣は?どこか怪我してない?]

由衣[う、うん……あたしは大丈夫…………優斗が守ってくれたから……]

蒼[……そぉ……なら良かった。優斗、見せて]


優斗は由衣に心配されまいと、気付かれないように手の傷を隠していたのだ。だが、蒼は優斗のちょっとした動作で直ぐに気付いていた。


優斗[大丈夫だって!(笑)こんなの、ただのかすり傷だし!]

蒼[でも……優斗……保健室行こう]

一樹[そーだな!取り敢えず保健室行って絆創膏でも貼って来た方がいいな!俺連れてこうか(笑)?]


すると、直ぐ様、蒼が。


蒼[あたしが連れていく]

一樹[え……]

由衣[…………]

優斗[いや、1人で大丈夫だって(笑)こんなの……痛ッ…………]


立ち上がった優斗であったが……優斗は、とっさに由衣を助けるために、体勢が良くない状態で無理矢理助けたので足を捻り挫いていたのだ。


由衣[!……優斗……ごめんね……]

優斗[ははは、大丈夫、大丈夫(笑)]

蒼[優斗……大丈夫じゃないよ]

一樹[なんだよ、足もやってたのか?なら尚更俺が連れてってやるよ!]

優斗[大丈夫だって、それにベニヤ板、すぐに必要なんだろ?悪いけど一樹持っていってくれねーか?]

一樹[あ、あぁ……それは別に良いけど、でも本当に大丈夫なのか?]

優斗[問題ねーよ!(笑)じゃぁ一旦保健室行ってくるよ]

一樹[お、おぉ、わかった]

優斗[悪い蒼、肩貸してくれるか?]

蒼[うん]

優斗[由衣、お前は大丈夫か?]

由衣[う、うん……あたしは……ごめんね……優斗]

優斗[大丈夫だから!気にすんな!(笑)]


そして、2人は保健室へと向かった。

倉庫に残っていた由衣と一樹は。


一樹[じゃー取り敢えず!持っていきますか!]

由衣[………………ッ…………うッ……]


由衣が下を向き泣いていたのだ。


一樹[由衣ちゃん?え?どっか痛いの!?]

由衣[…………違う…………うッ…………うぅ……違うの…………あたし……自分の事しか……考えてなくて……優斗があたしをかばって……手……怪我してた事も気付かなくて……でも……蒼は直ぐに気付いて……あたしの心配までしてくれて……あたし………最低だよ………優斗を好きになる資格ないよね………たぶん優斗も幻滅してると思う…………]


一樹は少し黙った後、由衣に優しく自分なりの考えを伝えた。


一樹[…………それは違うんじゃねーかなぁ?]

由衣[………え]

一樹[優斗はさ~由衣ちゃんの事が大事だと思ってたからこそ、かばったんじゃねーのかなぁ?手だって由衣ちゃんに余計な心配させたくないから隠してたんだと思うし。自分の事しか考えてない?傷に気付かなかった?優斗はそんな事で幻滅なんてする男じゃねーよ!!それは、親友の俺が保証する!(笑)それに……人を好きになるのに資格なんていらねーじゃん!(笑)好きなもんは好き!それ以外必要なものなんて何もないでしょ!ははは(笑)]

由衣[!…………フフ(笑)…………だね……一樹の言う通りだね……一樹のお掛けで少し元気が出てきたよ(笑)ありがとう]


由衣は涙を拭きながら笑顔を見せた。

その瞬間、一樹が一瞬固まった。


一樹[おぉ……(可愛ぃ……ん!?違う!違う!な、何ドキドキしてんだ!?俺は!俺には蒼ちゃんと言うものがあるんだ!そーだ!そーだ!…………てか由衣ちゃんって優斗の事、好きだったのか)]


一樹も中々鈍感のため……今頃になって気付いたらしい。


一樹[……じゃ、じゃぁー行こっか!(笑)]

由衣[うん、そーだね、皆待ってるしね]


そして保健室に着いた優斗と蒼は。


蒼[先生居ないね?]

優斗[まぁ~放課後だし職員室じゃねーかな?]

蒼[あたし呼んでくる!]

優斗[あ~いいよ、蒼、その辺にある絆創膏とテーピング持ってきてくれ、コレくらい自分で出来るから]

蒼[出来るの?]

優斗[あぁ出来るよ、俺、空手やってたしテーピングぐらい自分で巻けるよ]

蒼[そーなの?……あ!……だから……]

優斗[ん?だから?]

蒼[うぅん……何でもない(笑)]

優斗[なんだよ気になるだろ]

蒼[…………この前……あたしを助けてくれた時……優斗……強かったなぁ~って、フフ]

優斗[え?見てたのか?]

蒼[うん……あの時は……かすかに意識あって……見てた……優斗すごくカッコ良かった!]


蒼は頬を赤くして笑顔を見せた。

優斗も少し照れくさそうに頭をかきながら。


優斗[いやーー……別にカッコ良くなんかねーよ]


なんて事を言ってたものの……実際、少し嬉しそうな顔をしていた優斗。そんな表情を見て蒼も嬉しそうだった。


優斗[あ、蒼、わりーけど手の甲だけ絆創膏貼ってくれるか?流石に片手だと貼るのひどいから(笑)]

蒼[うん、じゃぁ最初に消毒しちゃうね、良い?]

優斗[あぁ頼む]

蒼[どぉ?しみる?]

優斗[大丈夫]

蒼[じゃ絆創膏貼るね、これで……よし、大丈夫?]

優斗[あぁ、ありがとな]

蒼[いぃえ、貼っただけだけどね(笑)]

優斗[じゃぁ後はテーピングを巻いて。こう巻いて行くんだよ]

蒼[へぇ~]

優斗[で、こうして、こうして、終わり。うーんまぁまぁかな?]

蒼[優斗、スゴい]

優斗[あんまり褒めても何も出ねーぞはは(笑)]

蒼[うん……]


蒼が何かを思い返したのか……急に静かになる。


優斗[蒼?どうした?]

蒼[……優斗……最近ね……あたし……おかしいの……]

優斗[……おかしい?]

蒼[うん……あたし、優斗が……由衣と仲良く話してたり……2人だけで居るって思うと……何だか胸がモヤモヤするの……優斗の事も由衣の事も好きなのに……なぜか……モヤモヤで嫌な気持ちになるの…………どうしよう……優斗……あたし……病気かな……?]

優斗[…………それって…………]

蒼[それって?…………]

優斗[……いや、俺が言うのも……アレだけど……ヤキモチ…………じゃ……ないかな……って]

蒼[ヤキモチ……?]

優斗[……うん……俺も上手く説明出来ねーけど……ヤキモチって……自分の好意ある人が……自分以外の人と仲良くしてたり……まぁそれを見て……悔しくて……悲しい気持ちになると言うか…………何て言うか…………でも、それは、それだけ相手の事が好きだから、そう言う気持ちになるんだ……と思う……たぶん……(俺も良くわかんねーけど……経験少ねーからな……)]

蒼[……………………そうなのかも…………あたし!優斗の事がスゴく好きで!…………でも、由衣の事も好きで……2人の邪魔したくないし…………でも、胸が苦しいの……モヤモヤでいっぱいになって……元気出なくて………………]

優斗[蒼……]


初めての気持ちに蒼は戸惑い、不安そうな顔でさらに優斗に問いかけた。


蒼[…………優斗は!優斗は……そう言う風になったことある……?]


蒼にそう問いかけられた優斗は、自分の事も思い返していた。そして……。


優斗[…………俺は…………俺も……俺だってなってるよ……]

蒼[優斗……]

優斗[最近……ずっとだよ……蒼の事が好きだって自分でも分かるようになってから、蒼が一樹と話してる時……楽しそうに笑ってる顔とか見ると…………直ぐにでも行って……蒼を抱き締めて俺のだって!言いたくなる…………でも、今はそれが出来ないから我慢してる……けど……]


そう言うと優斗は恥ずかしくなったのか……横を向いていた。

蒼は優斗の言葉を聞いて胸が熱くなり、自分だけじゃなかったと言う安心感と、優斗が同じ気持ちでいてくれた事への喜びで自然と涙が溢れていた。

優斗は横目でチラッと蒼の方を見た。


優斗[!え?蒼……なんで泣いてんだよ]


慌てる優斗。


蒼は涙を拭いて。


蒼[何でだろねッ……フフッ……たぶん……嬉しくてなのかなッ?]


そう言うと蒼は優斗に向かって、いつもとは違う涙交じりの優しい笑顔を見せた。

その瞬間優斗は胸がグッとなり。


優斗[……蒼…………こっちに来いよ]


優斗は蒼の手を引いて抱き締めた。

その瞬間、フワッと蒼の良い香りが優斗を包み込んだ。


蒼[ゆ、優斗?]

優斗[いいから……だまって……今はこうして居たいんだ]


抱き締められながら、蒼も小さく「うん」と頷き、ギュッと優斗を抱き締めた。


優斗[蒼の匂い好きだ]

蒼[あたしも優斗の匂い好き]

優斗[蒼……]

蒼[優斗……]


2人は、そのままキスをしそうになった……のだったが……。

優斗は、急に先程の由衣からのキスを思い出してしまい……とっさに蒼の両肩に手をやり…蒼を離してしまった。


蒼[優斗?]

優斗[……いや、その…………が、学校だし……もし、誰かが来たらマズイかなって……]

蒼[……うん……わかった]

優斗[……皆待ってるだろうし戻ろっか]

蒼[…………だね]

優斗[(……はぁ……急に思い出しちまった……あんな事あって……直ぐに蒼にキスなんて……出来ねーよ………………あの事……蒼に言うべきなのか……?でも、蒼はどう思う?……俺は……どうしたらいい?……そう言えば……由衣……何かを言いかけてたような……)]


そして、優斗と蒼はクラスへと戻って行った。

教室の戸を開けると。


一樹[おー!優斗!大丈夫だったか?]

優斗[だから、全然大丈夫だって、足もテーピングで巻いたし、何の問題もねーよ]

一樹[そっか!なら良かった(笑)蒼ちゃんもお疲れね~(笑)]

蒼[うん、一樹君も由衣もありがとう、優斗の代わりに資材運んでもらっちゃって]

一樹[そんなん!全然!(笑)なぁ?由衣ちゃん]

由衣[うん……どっちかって言うと……あたしが悪いんだし……ごめんね……優斗、蒼]

優斗[だから気にすんなって(笑)全然大したことねーんだから]

蒼[うん、本当に優斗、全然大丈夫みたいだから由衣あんまり気にしないで]

由衣[うん、わかった、ありがとう優斗、蒼]


そう言うと由衣が。


由衣[蒼~ギュゥ~したい~]

蒼[え?ギュゥ?]

由衣[うん、して~蒼~]

蒼[フフッ、うん!]

由衣、蒼[ギュ~~~~~ゥ]

由衣[あ~~やっぱり蒼にギュゥするとホッとする~(笑)]

蒼[うん、あたしも(笑)]


2人は久しぶりに楽しそうだった。


優斗[(やっぱ2人は仲良いんだな(笑)仲良くしてる2人を見てるこっちが1番ホッとするわ(笑)………………で…………今後、俺は……どーしたら良いんだ……)]


優斗の悩みが1つ……いや……2つ増えたのであった。


そして、文化祭当日……。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る