第23話 お前が大事だ


次に優斗が気付いた時、優斗は病院のベッドの上にいた。


優斗[……あ……れ?……ここは……俺は……確か……]


ふと、横を見ると椅子に座っている蒼が優斗の手を握りしめ寄り添って寝ていた。


優斗[……蒼]


そこへ母が入ってきた。


母[あ、気が付いた?]

優斗[母さん]

母[事情は蒼ちゃんから少し聞いたわ……それで何となく色々察したけど、詳しくは後から教えてちょうだいね]

優斗[……あぁ]

母[それより、アンタ!空腹で倒れるってど~言うこと?]

優斗[へ?]

母[アンタ運ばれる時に無意識に「腹減ったー」って言ってたみたいだし、先生も頭には異常無しって事で大丈夫って言ってたけど、脱水と栄養不足って……何でそーなるの?]

優斗[あーえーとー……ははは……何でですかねー(笑)]

母[はぁ~母さん恥ずかしかったわよ……家で何も与えてないみたいで……]

優斗[……すいません]

母[……まぁいいわ、あなたが無事で何よりよ。それより蒼ちゃんにもお礼言っときなさいよ。自分もフラついてたのに、大丈夫ってずっとアンタに付きっきりだったんだから]

優斗[…………そう……だったのか]

母[……じゃ母さん伝えてくるね、優斗の意識が戻ったって]

優斗[あぁ]


母はそう言って病室をあとにした。


優斗[……蒼………自分だってフラフラだったくせに……ホントバカだよ……蒼……]

蒼[………………バカだもん]

優斗[!蒼!起きてたのか!?]

蒼[今起きた]

優斗[なーんだビックリさせんなよぉ~はは(笑)]

蒼[……………………]

優斗[蒼?]


蒼は優斗の手を握ったまま下を向き、大粒の涙をこぼしながら謝った。


蒼[優斗……ごめんなさい……うぅッ……あたしバカだから……いつも……いつも優斗に迷惑ばかり掛けて………助けられてばかりで……それに……今日なんて……優斗に怪我……うぅッ……させちゃって…………ごめんなさい……]

優斗[泣くなよ蒼(笑)それに、迷惑掛けられたなんて全然思ってねーよ!それよりも……本当にお前が無事で良かったって思った。俺にとって……「お前が大事だ」って心から思ったから]


そう言うと優斗は蒼に笑顔を見せた。

その瞬間また泣き出す蒼。


優斗[だから~泣くなよー(笑)]

蒼[……うぅッ……うぅッ……だって~お前が大事だって~優斗に思ってもらえてた事が嬉しくて……ぅッ]


優斗は蒼の頭を撫でた。

蒼は優斗の方を見上げた。

そんな蒼の涙いっぱいの目から流れる涙を優斗は優しく指で拭いてあげていた。


蒼[…………優斗は……もう大丈夫……?痛くない?]

優斗[あぁ、こんなの~ただのかすり傷だよ、だから大丈夫だから、もう謝るなよ(笑)]

蒼[うん……ごめん]

優斗[言ったそばから謝ってるし(笑)]

蒼[あ……フフ……だね(笑)]


蒼が少し笑顔を取り戻した。


優斗[……あー……ところで……]

蒼[……なぁに?]


優斗はドキドキしながら、恐る恐る蒼にあの時の事を聞いた。


優斗[…………あのーさぁ……神谷にデート誘われた時…………蒼は普通にOKした……のか?]

蒼[…………デート?あれ、デートじゃないよ]

優斗[は?デートだろ!普通に店見て回ったり、飯食いに行ったり!]

蒼[…………優斗?…………もしかして最初から見てたの?]

優斗[………………]

優斗[い、今はそこんトコは置いといて……]

蒼[……だって……アレは……神谷君が優斗と仲良くなりたいから、何か優斗にプレゼント買ってあげたいって……だから優斗の好きそうな物を一緒に選んで欲しいって言われて……あたしも優斗が喜ぶならと思って…………神谷君に「サプライズだから東條君には秘密にしててね」って言われてたの……]

優斗[…………そう言う事か……(神谷のやつ……俺を利用しやがったのか……)]

蒼[……でも……黙っててごめんね……]

優斗[……いや、まぁでも蒼は俺のためにって思ってやってくれたんだろ?……だから……俺は嬉しい……かな(笑)]


優斗は少し照れて笑った。


蒼[うん]


蒼も優斗の言葉を聞いて照れながら嬉しそうにしていた。


優斗[……あと……]

蒼[あと?]

優斗[(あーーこんなに聞いたら女々しいかなぁ…………でも気になる)あとさ……神谷に何か耳元で囁かれた時……蒼うなずいて顔赤くしてたんだけど…………何…………言われたんだ?……]


その時の事を聞かれた蒼は……急に顔が赤くなる。


優斗[(え?…………やっぱ神谷に何か嬉しい事言われたのか?……可愛いねとか?……綺麗だねとか?……好きだよとか?……な、なんで黙ってんだよ蒼)]


優斗はドキドキしながら蒼の返答を待つ。


蒼[……優斗……笑わない?]

優斗[わ、笑わねーよ]

蒼[……うん…………あの時のね、神谷君に……「蒼ちゃんて東條君の事、好きなんでしょ~見てて分かるよ」って言われたの……だから……うなずいてたの……]


それを聞いた優斗も……見る見るうちに顔が真っ赤になった。


優斗[あ………そ、そ、そーだったのかぁ~~(笑)なーんだ!俺はてっきり神谷に可愛いねとか~好きだよとか~言われてたのかと思って~心配してずっとドキドキし……て…………(あ………………俺は……何を言ってしまってるんだ…………)]


優斗が蒼の方をゆっくりと見ると。

蒼の顔は真っ赤になっていた。


優斗[あははは……俺何を言ってんだろーな(笑)(やべーーー恥ずかしい!蒼も顔真っ赤になってるし!この空気どーしよ……)]


すると、蒼は今まで我慢してた物が外れたかのように、突然優斗に抱きついた。


優斗[わッ!蒼?どーした?]


蒼は優斗の胸の辺りに耳を当て、まるで心臓の音を聴いているかのようだった。


蒼[優斗の音聴いてた……]

優斗[な、何でだよ(笑)]

蒼[……優斗を……もっと近くで感じたくて……]

優斗[……ち、近くに居るだろいつも(笑)…………(てか……蒼ってめちゃくちゃいい匂いするんだな…って!やべー!よけードキドキして来た!)]

蒼[優斗の心臓の音大きくなった……]

優斗[はははは、いや、そ、それは……急に抱きつかれたら……ドキドキ……するよ……]

蒼[……優斗……]

優斗[な、なんだ?]


蒼が下から優斗を見つめる。

優斗のドキドキが加速する。


優斗[(か、可愛い……)]


蒼が少し目をそらし小さな声で恥ずかしそうにつぶやく。


蒼[…………優斗……また……キスしたい……]

優斗[キ、キス?ど、どうした蒼(笑)?ま、またって、あの時は事故と言うかぶつかっただけと言うか~だろ(笑)]

蒼[……だから……今度は……ちゃんと……したい……それに…………優斗は由衣とがファーストキスだったんでしょ?…………だから……あたしも……ファーストキスに負けないくらい……優斗の1番が良いから…………でも……優斗はあたしとは……したくないかな?……(苦笑)]

優斗[そ、そんな事ねーけど……(蒼……気にしてたのか……)]


でも、こんな場面に不馴れな優斗はタジタジ……。


蒼[…………ご、ごめんね(笑)優斗また、困らせちゃったね]


そう言うと蒼は優斗から離れた。その時の表情が……笑っては居たが……とても寂しく悲しく見えた。その瞬間!優斗は蒼の手を掴み自分へと抱き寄せた。


蒼[ゆ、優斗?]


そして……。


優斗[蒼]


優斗は自分から蒼にキスをした。


蒼[(優斗)]


目を閉じ合いながらキスをする2人。

ゆっくり目を開け蒼の顔を見ると……蒼の綺麗な瞳から細く頬を伝って涙が流れていく様が見えた。

優斗は急いで蒼の両肩に手をやり離した。


優斗[ご!ごめん!い、嫌だった……?]


慌てる優斗。


蒼[……うぅん……違うの……嬉しくて涙が自然と流れちゃった]


そう言って笑う蒼は物凄く綺麗に見えた。


優斗[……そっか]


安心する優斗。


優斗[こ、今度は痛くなかったろ?]


横を向いて照れながら言う優斗。


蒼[うん!痛くなかった(笑)でも……胸の奥は痛かったよ]

優斗[!大丈夫か?胸苦しいのか?先生に診てもらうか?]

蒼[違うよ(笑)嬉しくてだよ(笑)]

優斗[へ?あー……そっちか……はは(笑)そ、そーか俺はてっきり……はは]

蒼[も~優斗のバカ(笑)やっぱりあたしだけバカじゃなかった~優斗もあたしと一緒(笑)]

優斗[なんだそれ(笑)]

蒼[でた優斗のなんだそれ(笑)でも、あたし優斗の「なんだそれ」好き~(笑)]

優斗[何でだよ(笑)]

蒼[嘘だよ(笑)]

優斗[嘘かよ(笑)]

蒼[あはは………だってさぁ………それだけが好きなんじゃないもん、あたしは……優斗の全部が好きなんだもん……]


優斗[(何か……何だろーな……蒼と話したり一緒に居るだけで落ち着く……それと矛盾して胸の鼓動が早くなる……もう、自分でも分かってる……俺は蒼の事が本当に……好きなんだ……)]


優斗は、蒼の両肩に手を置き真剣な顔で蒼を見つめた。


蒼[優斗?]

優斗[蒼……聞いてくれ……]

蒼[う、うん]

優斗[……は、恥ずかしいから1回しか言わねーからな]


蒼は少し驚きの表情で頬を赤く染め、優斗の言葉をドキドキしながら待つ。


蒼[は、はい]

優斗[俺は……お前の事が好……]


病室の戸が開いた!


優斗[好!スキヤキ食べたいな~蒼!]

蒼[え!?……スキヤキ?]

先生[スキヤキ?]


優斗は慌てて布団を被った。


優斗[せ、先生……ノックぐらいしてくださいよ~]

先生[一応ノックはしたんだけどね~まぁスキヤキ食べたいくらいなら、もう問題ないね(笑)]

優斗[は、はい……(緊張してて聞こえなかったのか……?)]


後ろの方から来た母がニヤリと笑みを浮かべる。


母[あーー……お邪魔だったかしらぁ~~(笑)]

優斗[べ、別に]

蒼[……あのー……優斗?今のって……スキヤキの話なの?]

優斗[……あ、蒼今は、その話は…やめよ…]

母[ごめんなさいね~蒼ちゃん(笑)あたし達が来たから優斗言いたい事が言えなくなったみたいね(笑)]

優斗[…………いいから早く身体診るなり……何なりしてくれ……]

先生[そうだね(笑)じゃぁちょっと診せてもらおうかな]


結果は特に異常無しという事で、明日退院する事となった。

そして次の日、家に帰ってきた優斗は母と蒼に経緯を話した。勿論……自分が蒼と神谷の事を気にしすぎてとは言わず……神谷が怪しかったからと言う呈で……。


母[ふーんあそこの院長の息子がね~……]

優斗[まぁ釘を刺しといたから下手なことは、してこないと思うけどさ]

蒼[……ごめんね優斗]

優斗[だから、大丈夫だって(笑) ]

母[…………いや……あたしが大丈夫じゃない]

優斗[え?……と言いますと?]

母[……頭にきた……うちの大事な蒼ちゃんにこんな事してタダで済むと思うなよって事よ……]

優斗[う、うん、ま、まぁそれはそーなんだけど……]

母[あのクソ院長に文句言ってくる!大体!あのクソ院長!昔から息子を甘やかし過ぎなのよ!ちょっと母さん行ってくるから!あと宜しくね!]

優斗、蒼[…………]


母物凄い勢いで院長の所へと向かった……。


優斗[…………]

蒼[…………行っちゃたね]

優斗[……あぁ]

蒼[三咲、すごい怒ってたね]

優斗[まぁ……それだけ蒼の事を大事に思ってるんだろーよ(笑)]

蒼[そっか……何か嬉しい]

優斗[(あーぁ結局こうなったか……はは……まぁしゃーねーな……神谷が悪い)]

蒼[……ねぇ優斗]

優斗[ん?何だ?]

蒼[……そのぉ……昨日……本当は……なんて言おうと

してたの?]

優斗[え!、あ、アレか……スキヤキだよ(笑)スキヤキ食べたいなぁ~って(笑)あまりに腹減ってたからあはは……]


蒼は少し目を細めて言った。


蒼[優斗、誤魔化してるーー]

優斗[え……いや]

蒼[いくらバカなあたしでも分かるもん……だから……言って……昨日の続き……]


蒼が優斗に近づき隣に座る。そして、真剣に見つめた。

優斗は頬を赤くして、またしても胸の鼓動が早く動きだした。そして……


優斗[わ、わかった、わかったから……その……だから……俺は…………お前の事が……好……好……]


蒼も頬を赤く染め。


蒼[す……?]

優斗[好………………………………好きだ]


その瞬間、顔を真っ赤にした蒼が優斗に抱き着き。


優斗[わッ]

蒼[あたしも優斗が大好き!]


と言うと、蒼から優斗へキスをした。


ようやく、素直にお互いの気持ちが繋がった瞬間であった。


蒼[(優斗大好き)]

優斗[(蒼……やべーな……いつの間にか俺の中で蒼の存在がこんなにも大きくなってたなんて……俺もお前が……お前の事が……大好きだ……蒼)]


その後……2人は暫くキスをし続け…………そして、その結果…………2人とも唇が腫れた……。


優斗[…………]

蒼[…………]


2人は見つめ合い…………笑った。


蒼[優斗!唇がまた腫れてるよ~あははは(笑)]

優斗[蒼もだし~あはははは(笑)]


その後、落ち着いた所で……優斗が蒼に相談をした。


優斗[……あのー……さぁ]

蒼[なぁに?]

優斗[この事は……まだ、2人だけの秘密にしておかないか?]

蒼[?秘密に?]

優斗[……うん……っと言うのも…………一樹って蒼の事が好きじゃん……バレたら大変って言うか……だから!由衣にも言わないでおいた方がいいと思うんだ、そこから一樹にバレないとも言いきれないし……]

蒼[…………?一樹君ってあたしの事好きなの?]

優斗[へ?…………いやいや!そーだろ、そーでしょ!蒼……気付いてなかったの?]

蒼[……んーーー……友達としてだよね?]

優斗[…………いや…………多分違うと思うよ……一樹は蒼と……何て言うか…………そ、これ以上の関係になりたいんだと思う。こ、恋人とか……]

蒼[そーなの!?…………あたし気付かなかった……優斗しか見てなかったからかな……]

優斗[…………ははは……(一樹……何と言っていいやらだ…………すまん)……なので……とにかく……取り敢えず秘密でダメかな?]

蒼[優斗がそう言うなら秘密で!(笑)あたしは優斗が決める事なら、同じくしたいからぁえへへ~(笑)]


優斗が据わった目で。


優斗[おーい蒼さん……顔がニヤケ過ぎてるよー]

蒼[……え……ホントに?……]


蒼が両手で頬をおさえ元に戻す……が、直ぐにまたニヤケていた。


優斗[(蒼もあんな顔するんだな(笑)新たな発見だ(笑)可愛い…………でも)……蒼……学校ではちゃんとしてくれよ……顔]

蒼[う、うん]


そして、その日の夜。母が帰宅し気分良くビールを飲んでいた。


母[あのクソ院長に、おもいっきり!言ってやったわ!優斗が、揃えた証拠も叩きつけて!……まぁ証拠なんて無くてもあたしには逆らえないんだけど~(笑)]

優斗[…………そ、そぉ(やっぱ思った通りだ……母さんの方が何かしらで優位だとは思ってたけど……逆らえない程だとは……)]

蒼[…………で、どーなったの?]

母[まぁ~明日学校に行けば分かるわ(笑)へへへへ~蒼ちゃ~んおビールもう一本くださ~い(笑)]

蒼[うん!今持ってくね]

優斗[……飲ませすぎるなよ……後で大変なんだから……]

蒼[わかってる(笑)]

母[はやく~(笑)]

蒼[は~い(笑)]

優斗[……はぁ~ダメだなこりゃ]


そして、次の日。







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