第22話 無事で良かった
次の日の朝…………優斗は結局一睡も出来ずに朝を迎えた……先に起きて朝ご飯を用意していた蒼、そこへ優斗がやって来た。
戸を開ける優斗。
ガチャ……。
キッチンで色々とパタパタしていた。
蒼が優斗に気付き挨拶をする。
蒼[あ、おはよー優斗]
優斗[……おはよー……]
2度見する蒼。
蒼[え!?優斗どうしたの?隈がスゴいよ……]
優斗[…………あ、いや寝れなくてな……はは]
蒼[え~大丈夫?優斗……具合でも悪いの……?]
とても心配な表情で優斗を見る蒼。
優斗[……あぁ大丈夫だ……(言えねーよ昨日、蒼と神谷の会話が気になって寝れなかったなんて……)]
蒼[……うん……なら良いんだけど…………]
優斗[…………]
蒼[…………あ……あのね!優斗……あたし10時頃になったら、ちょっと出掛けてくるね]
優斗[!]
蒼のその言葉を聞いた優斗は少し黙った後……恐る恐る蒼に問い掛けた。
優斗[…………で、出掛けるって……どこに……]
蒼[……ちょっと見たい本とかあるから、本屋さんとか~中々探せなくて……あはは……]
優斗[だったら!……俺も行くよ]
蒼は少し困った様子で優斗が着いてくるのを断る理由を考えているようだった。
蒼[あー……でも、優斗体調悪そうだし……それに本屋さん行くだけだから1人で大丈夫だよ]
そう言って蒼はニコッと笑顔を見せた。
優斗[…………そうか……わかった]
表情が暗くなった優斗に気付いた蒼は慌てて……。
蒼[あ!でも、もし帰りが少し遅くなるかも知れない時のために、お昼は作り置きしておくから大丈夫だよ!]
優斗[(…………そこじゃねーよ……蒼……)]
蒼[優斗、朝ご飯は食べ…………あ……]
優斗は蒼の言葉に返事もせずに、そのまま部屋へと戻っていった……。
蒼[…………優斗]
部屋に戻った優斗はベッドに寝せベリ、考えていた。
優斗[……(蒼のやつ…………いつもだったら俺が一緒に行くって言えば絶対に断ったりしないのに…………………あー……絶対に嘘ついてるよなぁ……はぁ~…………神谷と会うのかなぁ…………でも、別に俺ら付き合ってるわけでもねーし……蒼が誰と会おうが………でも……あのやろーは……………)]
そして、時刻は10時……蒼が優斗の部屋の戸をノックする。コンッコンッ
蒼[優斗?]
優斗[…………]
蒼はノックしても呼んでも優斗の返事が無く、先程も不機嫌そうだったので、ドア越しに優斗に声を掛けた。
蒼[優斗……じゃぁちょっと行ってくるからね……]
優斗[…………]
蒼[…………行ってきます]
蒼が家を出た。……っと同時に優斗も変装をし、直ぐ様家を出ていた。
優斗[……はぁ……俺何やってんだ…………これストーカーになんねーかな…………いや、べ、別に同じ家に住んでるわけだし、たまたま、俺も外に出たいわけだし、それにたまたま、俺も本屋に行きたいと思ったわけだし……別に良いよな……ははは…………]
優斗は必死に自分へ言い訳しながら、蒼の後をバレない距離を保ちコソコソと着けていた。
そして、しばらく後を着けていると。
優斗[……蒼のやつ本当に本屋に入っていったし……え?本当にただ本を探しに来ただけだったのか]
が、直ぐに蒼が出て来たと思ったら……。
優斗[!……神谷!!]
どうやら、本屋で待ち合わせしていたようだ。蒼の後に続き神谷が一緒に出て来たのだ。
優斗[(………やっぱり神谷と会ってんじゃんか……本屋に行くだけなんて嘘ついてまで……蒼のやつ…………俺の事好きなんじゃなかったのかよ……あ…………女心と秋の空…………はは…………こう言う事か…………)]
その後、蒼と神谷は色々とお店を見て回っていた。
神谷[コレなんかどーかなぁ?蒼ちゃん?(ニコッ)]
蒼[う~んどーかなぁ?あたしも欲しいモノよく分からないからぁ]
神谷[う~んそっかぁじゃぁあっちのお店見てみようよ~]
蒼[う、うん]
その頃、優斗はまだ2人の後を追っていた。
優斗[(はぁ~何やってんの俺…………まじでストーカーじゃん…………ん?もう昼か…………ってあの2人もしかして飯食いに行くのか……ガチデートかよ…………帰ろうかな…………俺……)]
蒼と神谷は。
蒼[あたし……そろそろ帰ろうかな……?お昼だし家に帰んないと……]
神谷[え?もう帰っちゃうの?僕お昼ご馳走するから、もうちょっとだけ付き合ってよ~]
蒼[……ん~……でも……]
神谷[まだ、プレゼントも決まってないし…………ね!お願い~]
神谷が両手を合わせ、蒼にお願いをする。
蒼[……う~ん……じゃぁちょっとだけなら……]
神谷[本当!?ありがとう蒼ちゃん(ニコッ)]
そうして、2人は取り敢えず食事をすることになった。
神谷[蒼ちゃん何食べたい?]
蒼[ん~……何でもいいよ、神谷君が決めて]
神谷[そんな~僕こそ何でも良いから蒼ちゃんが食べたい物あったら遠慮しないで言ってよ(ニコッ)]
蒼[…………じゃぁパスタとかでも良いかな?(……あんまり食欲ないし……)]
神谷[OK!パスタなら美味しいお店知ってるからそこに行こう!]
蒼[う、うん……]
2人はパスタ屋へと向かった。
神谷[ここ!ちょ~っと裏路地で分かりにくいんだけど美味しいから(ニコッ)さぁどーぞ]
神谷は扉を開け蒼の腰に手を当て誘導した。
蒼[う、うん、ありがとう……]
それを見ていた優斗。
優斗[(あのやろ~どこに手当てやがる!)]
直ぐ様、優斗もバレないようにお店へと入った。離れて監視する優斗。
神谷と蒼は、お店に入り注文を終え、少し話しをしていた。しばらくして蒼がトイレへと向かった。
優斗[…………(あー何か……疲れたなぁ)]
店員[あのー……お客様……そろそろご注文は……?]
優斗[……あ、ですよねー……じゃホットコーヒーで……]
店員[かしこまりました。]
監視を続ける優斗。
神谷と蒼の席にパスタが届いた。蒼はまだ戻ってきていない。
優斗[(……ったく……早く帰れよ蒼………………ん?)]
優斗が神谷の方をチラリと見ていると、神谷に不審な動きが見られた。何やら蒼のパスタに何かを掛けているようだ。
優斗[(!……今蒼の席のパスタに何入れてるよな…………)]
蒼がトイレから戻ってきた。
神谷[あ、パスタ運ばれてきてるよッ温かいうちに食べちゃおッ]
蒼[うん]
優斗[…………]
そうして、2人は食べ終えお店を出た。
続いて直ぐ様、優斗もお店を跡にし後を追った。
神谷[どうだったかな?口にあった?]
蒼[う、うん美味しかったよ、でも、お金良かったの?……]
神谷[もちろん!もちろん!女の子にお金出させる事なんてしないよ~(笑)僕は美味しく食べてもらえれば、それで満足なんだから(ニコッ)]
蒼[う、うん、ありがとう、ご馳走さまでした]
神谷[じゃぁさーこの後……あれ?蒼ちゃん?]
蒼[……う、うん?]
神谷[どうしたの?……蒼ちゃん……?]
蒼[ご、ごめんなさい、何かちょっと頭が……ボーッとしちゃって……だ、大丈夫だから……]
神谷[…………そぉ?…………おっと!]
神谷がフラつく蒼を支える。
神谷[………………蒼ちゃん…………ちょっと休憩した方がいいかもね…………僕そこまで案内するよ]
蒼[…………………休憩?……うん……]
神谷[大丈夫……蒼ちゃんは僕に着いてきてくれればいいから(ニヤッ)]
フラつく蒼を裏路地から更にある場所へと誘導する神谷。着いた場所は…………ラブホテルの前だった。
神谷[蒼ちゃん……大丈夫?]
蒼[…………う、うん……ここ…………?]
神谷[……大丈夫、直ぐに気持ちよくなれる場所だから(ニヤッ)]
蒼[…………きもち……よ……く?]
蒼の意識は、もはや遠退きそうであった。
そして、神谷が蒼を中へと連れていきそうな所へ!
優斗[おい……神谷]
優斗が現れた。
神谷[!…………と、東條君どうしたの……?君も利用してたとか?はは……]
優斗[は?利用なんかしてねーよ。それよりお前何してんの?。]
神谷[ぼ、僕は……蒼ちゃんが具合悪そうだから、ちょっと休憩させてあげようと……ま、まぁ2人同意の上でだよ~もちろん]
蒼[………………ゆ、ゆぅ……と?]
優斗が駆け寄る。
優斗[蒼!大丈夫か?]
蒼を支え神谷から離す優斗。
優斗[おい、しっかりしろ!蒼!]
蒼[……ゆぅ……と?何で…………ここ……に?]
優斗[お前が心配で着いてきたんだよ!それよりお前、足がフラついてやべーから、ちょっとここに座ってろ]
蒼[……う、うん……]
蒼を少し離れて所へ座らせ、優斗は神谷の所へと行った。
優斗[おい、神谷……お前……蒼に何やってくれてんだ?]
神谷[…………やだな~だから何もしてないって!蒼ちゃんが急にフラつき出したから休憩させてあげようと思っただけだよ(笑)そんなに怖い顔しないでよ(笑)それに君、彼氏でも無いでしょ?別にいいんじゃなかったっけ?]
優斗[…………何もしてない?……随分と、とぼけるんだな。パスタに仕込んでおいてか?]
神谷[!…………え?何の事?僕は何もしてないけどな~証拠でもあるの?(笑)]
優斗[証拠?証拠ならあるけど、ほら]
そう言うと優斗は携帯を見せた。
優斗[お前がバッチリ蒼のパスタに睡眠薬を投入してる所だよ。あー因みに、お店の人に頼んで、蒼の食べ残した物的証拠も貰ってきたから、それと~ここまで蒼を誘導してきたお前の動画もな。]
神谷は動揺し少し焦りだした。
神谷[ねぇ……東條君…………何が…………欲しい……?]
優斗[…………は?]
神谷[な、何か欲しい物あるかな……?僕なら何でも手に入れられるよ!か、金ならいくらでもあるし!現金が良い!?お、女の子だったら、もっと可愛い子いくらでも紹介出来るし!]
優斗[…………お前最低だな…………何にもいらねーよ。ただこれ以上、蒼に近づいてみろ……その時は分かってるよな?]
神谷は突然笑い出した。
神谷[……はは…………あはははは!何それ?正義のヒーロ気取り?いやーカッコいいね!(笑)俺から言わせれば、その程度の女~いくらでも食えるんだよ!(笑)別にその子じゃなくても良かったしね!ただ……簡単そうだったからってだけの話で~そうだ!今度は由衣ちゃん狙おうかなぁ~(笑)あの子も中々可愛いもんね~(笑)]
優斗が無言で神谷に近づき……胸ぐらを掴み静かにこう言った。
優斗[……お前が何しようと勝手だけどな……蒼や由衣に手だしてみろ……その時は、お前の人生終わらせてやるからな……]
そう言うと優斗は、掴んでいた胸ぐらから手を離し蒼の元へと向かおうと歩き出した。
その言葉に苛立った神谷は……。
神谷[……本当にだっせーなお前……それだけかよ(笑)殴らねーのか?]
優斗[殴んねーよめんどくせー]
神谷[……ははは……ほんっと人を見下してんね……]
そう言う神谷は自分の携帯を優斗の頭目掛けて投げた。ゴンッ!鈍い音と共に優斗の頭から血が流れる。
優斗[……っつ…………携帯投げるかよ…………物投げつけるなんて小学生か……]
神谷[あ~ごめんね~手が滑っちゃった~(笑)]
少しフラつく優斗。
神谷[大丈夫~(笑)今、楽にしてやるから]
そう言うと神谷は優斗に殴りかかった。
優斗[……あーめんどくせーなぁ……]
優斗は、瞬時に神谷の手を払いのけ神谷の溝に目掛け突き食らわせた。何が起きたのかも分からず息も出来ずもがく神谷……。
神谷[……ぐぅ……うぅ……ぅぅ……]
優斗[……はぁ……あーフラフラする……あのな~こっちはこっちで、かなりイラついてんの……さっきのやり取りで、終わりにしてやろーとしてたんだぞ?]
そう言うと……優斗は地面に這いつくばってる神谷の髪を掴み。
優斗[正当防衛だ……しかも、手加減してやったんだぞ?それに顔面は狙わないでやったんだから感謝しろよな……あと、言い忘れてたけどさぁ……自分でも言うのも何だけど……俺つえーよ?もっとやる?]
と言うのも実は、優斗は幼い頃から中学まで、父親に反強制的に空手をさせられていた。実力は中学になった頃に開花し全国で1位を取った程であった。
神谷は鼻水を滴し涙目で。
神谷[……い……いぇ……もぅ……いぃです…………]
優斗[……だよな、賢明な判断だと思うぞ。あ……それと、お前の事色々と調べさせて貰ったけど……お前……前の学校でも、その前の学校でも、色んな女相手に今回みたいな事してたみたいだな?あと、お前の親ってさ○○病院の院長なんだろ?俺の親もそれ関係で繋がってんだけど……今回の件で復讐とか親に頼らね~方が良いかもな、多分お前の方が危なくなると思うから……]
神谷[え……]
優斗[頭悪そーなお前じゃ分かんねーと思うけど一応~忠告入れといてやるよ……]
神谷[…………はい……ありが……とう……ございます……]
優斗[じゃーな]
そう言うと優斗は蒼の方へと向かった。
優斗[おい、蒼、おい、大丈夫か?]
蒼[…………]
優斗[ダメだなこりゃ~完全に寝てるわ……はぁ~神谷のやつどんだけ強力な薬品使ったんだよ……仕方ねーな……]
優斗は寝ている蒼を背負い、家へと帰っていった。
優斗[(コイツはどんだけ俺に背負って貰いたいんだよ……何かある度に俺がコイツを背負ってるじゃねーか……ははは……まぁーでも……蒼……無事で良かった…………)]
家の近くまで来た所で優斗の意識が遠退いていく……。
優斗[あー体力落ちたな………まぁ最近何にもしてねーから……そりゃそーか……はぁ…はぁ……あと……ちょっと…………もう少しだ……蒼……もう、家の目の前……もう少し……あれ?…………真っ白だ…………前が見えねー……やべー…………あお……い……]
優斗は玄関に入る前に、蒼を背負ったまま意識を失い倒れてしまった。それから、少し経った頃に蒼が意識を取り戻した。
蒼[…………あれ?……あたし…………優斗?血!?頭から血が出てる!!優斗!!しっかり!優斗!ねぇ!優斗ってば~!]
蒼はパニックでどうしたら良いかもわからず、泣きながら優斗の身体を揺さぶり起こそうとしていた。あまりに揺さぶるので……。
優斗[…………おい、いてーよ蒼……倒れてるやつ、そんなに揺さぶるなよ……]
蒼[優斗!!良かった~起きた!]
蒼は涙をポロポロと流しながら優斗にしがみつく。
蒼[うぇっ……うッ……うッ]
優斗[……泣くなよ蒼]
蒼[だって……うッ]
優斗[……ちょっと……眠いだけだ……]
そう言うと優斗はまた意識を失っていた。
蒼[優斗!?優斗!優斗!優斗ーーー!!]
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます