第18話 夏祭り&花火大会【夏休み編】 【後編】


蒼[ハァハァハァ着いた……]


蒼は以前、優斗と見た風鈴の売っている店の前にいた。実は蒼は優斗とデートした時には、母から優斗の誕生日の事を聞かされ知っていた。優斗の欲しい物を探るために、デートの時に然り気無く聞き出そうとしていたのだ。ところが優斗は欲しい物は無いと言っていたので、蒼は困っていた。しかし偶然、優斗が幼い頃に風鈴が欲しかったと言っていたのを聞いて、蒼は風鈴をプレゼントする事にしたのだ。そして、優斗がその時ずっと目を離さなかった青い筋の入ったとても綺麗な風鈴を蒼は覚えていたのだ。デートの帰り際に、蒼は優斗に内緒で買いに行ったが、その風鈴の在庫が無くなっていたため、取り寄せになった。だか、届くのが丁度8月2日の夕方になるのとお祭りが重なり、取りに来れなかったのだ。そのため、蒼は途中1人で、どうにか抜け出して来ることを決めていたのだ。


そして、お店の前で蒼が息を整えていると、お店のおじぃさんが丁度出てきた。


お店のおじぃさん[あれ?お嬢ちゃん、あの青い筋の風鈴を取り寄せてくれって言ってたお嬢ちゃんだよね?]

蒼[ハァハァ、う、うん……覚えててくれたの?届いた?]

お店のおじぃさん[そりゃ~あんたみたいな美人さんの事なら覚えてるとも!風鈴もちゃんと届いとるよ!でも、どうしたの?そんなに息を切らして……大丈夫かい?]


おじぃさんが息を切らした蒼を心配してくれた。


蒼[う、うん!大丈夫!良かった~届いてて]


蒼は事情を説明して、急いで包んで貰った。


蒼[おじぃさん!ありがとう]

お店のおじぃさん[こちらこそ、ありがとうねぇ、あ~それと一応風鈴は包んで割れないようにしてあるけど、強い衝撃を受けると欠けたりしちゃうから気を付けてねぇ]

蒼[うん!わかったッ]

お店のおじぃさん[それと浴衣姿のお嬢ちゃんもとても綺麗だよ(笑)わっはは!幸せ者の彼氏さんにもよろしくな]

蒼[う、うん(……説明不足だったかも……優斗が……か、彼氏になっちゃった……)]


蒼は顔を赤くして、急いでお祭り会場へと向かった。

その頃、由衣達は蒼の心配をしていた。


由衣[ねぇ~蒼遅いよね?大丈夫かなぁ!]

優斗[…………俺、探してくるわ]

一樹[じゃぁ俺も!]

由衣[あたしも行く!]

優斗[皆はここに居てくれ]

一樹[いや!俺も行くよ!蒼ちゃん1人で行かせた責任あるし!それに心配だし!]

優斗[いや、もし蒼が戻って来た時に、誰かこの辺に居てやんないと、また蒼迷うと思うから2人はここに居てくれ、それに由衣1人待たせるのは危険だろ?酔っ払いだって居るんだから、だから一樹一緒に居てやってくれないか?頼む!]

一樹[……確かにな]

由衣[優斗、蒼をお願い!]

優斗[うん、わかった!もし、蒼が戻ってきたら連絡くれ!じゃぁ、行ってくる]


こうして、優斗は蒼を探しに行った。


優斗[ったく!蒼のやつ何処に行ったんだよ]


その頃、蒼は。


蒼[ハァハァハァ(もう少し……お祭り会場が見えてきた……)]


蒼はお祭り会場が見える土手を走っていた。浴衣に慣れない下駄のため、足はそれほど開けず小走りで急ぐ。その時!


蒼[きゃッ!!……]


蒼は転んでしまった……。


蒼[……あ!!風鈴!]


急いで風鈴を確認する蒼。


蒼[………………どうしよう…………欠けちゃった……]


欠け風鈴を見た蒼は悲しくなり、その場で1人泣いてしまっていた。


蒼[…………うっ……うっ…………]


少し薄暗い土手をポツポツと通る人が小声で。


通り人[あの子どうしたのかな……?]

通り人[なんか、地べたに座って泣いてない?]

通り人[あの子大丈夫……?彼氏にフラれた(笑)?]


そんな周りの声が、泣いている蒼の耳に入って来ては余計に惨めになり、優斗への申し訳ないと言う気持ちが溢れ涙が止まらなくなっていた。

そんな中……遠くから優斗の声が聞こえてきた。

周りの目など気にする事もなく、必死に蒼を探し呼ぶ声だ。


優斗[蒼ーーー!蒼ーーーどこだーー!蒼ーーー!]


その声に気付く蒼。


蒼[優斗!…………痛ッ…………!]


立とうとした蒼だったが……転んだ時に足を痛めてしまって直ぐに立てないでいた。

優斗の、声が近付く。


優斗[蒼ーーー!蒼ーー!]

蒼[優斗!]

優斗[蒼!?]


優斗は足をくの字にして地べたに座っている蒼を見つける。


優斗[蒼!!どうしたんだ!何があった!?大丈夫か!?]


即座に涙を流しながら謝る蒼。


蒼[優斗!ゴメンね…………優斗にあげるプレゼント……壊しちゃった…………うっ……]

優斗[プレゼント!?]

蒼[……優斗……今日誕生日だから……本当は直ぐにあげたかったけど……さっき届いたから……お店に取りに行ったの……優斗が欲しそうにしてた……風鈴…………でもあたし……落として壊しちゃって……ごめんなさい…………優斗……]


優斗は蒼の姿をよく見た……。蒼は上げていた髪は所々崩れ……足の指は下駄で走ったためか血が滲み……膝も転んだのか……擦りむいて血が出ていた。こんな姿になるまで……自分のために必死になってくれてた蒼を見て優斗は……胸がギュッと締め付けられた。そして優斗は優しく蒼を抱き締めた。


優斗[バカだろ蒼……こんなになってまで……]


優斗は自然と涙が出ていた。


蒼[ごめんなさい……]

優斗[怒ってるんじゃねーよ……ただ……お前が心配だったんだ……それに……すげー嬉しかった……ありがとう]

蒼[……でも……プレゼント壊れちゃった……]

優斗[見ても良いか?]

蒼[……うん]


優斗は蒼がくれたプレゼントを開けてみた。


優斗[あ!やっぱり!蒼良く見てたな!俺この綺麗な青い筋の入った風鈴欲しかったんだよ!ん?大丈夫そうだぞ蒼(笑)]

蒼[……え?]

優斗[2ヶ所欠けてるけど、これはコレで良いと思うぞ(笑)]

蒼[……でも……]

優斗[大丈夫だって!問題ない!(笑)それに……欠けたからこそ!これは世界に2つと無い風鈴だろ?こんなに綺麗な風鈴見たこと無いよ!ほら見ろよ、この欠けたところが逆に綺麗じゃんか(笑)]


優斗が街灯に向かって風鈴をかざした。その風鈴は欠けた所が、少し乱反射して独特な色合いになり、とても綺麗だった。


蒼[……わぁ……ホントだ]

優斗[ははは、だろ?あーーそうだ!良い物ある!まさか役に立つとは(笑)]

蒼[なぁに?]


優斗はある物を出して見せた。


優斗[コレだ!]

蒼[ん~?]

優斗[コレに割れた欠片を入れれば!ほら!どうだ?綺麗だろ?(笑)]


優斗はクジで外れを引いた時に貰ったコルクのガラス瓶に風鈴の欠片を入れたのだ。


蒼[本当だ~綺麗~]

優斗[2つあるから1つは蒼が持ってろよ!]

蒼[いいの~?]

優斗[あぁ!まぁ、元々蒼に貰った物だけどな(笑)]

蒼[あはは、だね(笑)]

優斗[ようやく笑顔になったな(笑)じゃぁ皆心配してるから行くか]

蒼[うん!]


蒼が無理して立とうとした時、優斗がしゃがんだ。


優斗[ほら!背負ってやるから乗れよ]

蒼[……でも……悪いよ……]

優斗[悪くねーよ!いいから乗れ]

蒼[うん、ありがとう優斗]


そして2人は由衣と一樹が待っている所へと向かった。歩いていると花火が上がり始めた。


蒼[わぁ~~~これが花火~?綺麗~]

優斗[(そうか、蒼は初めて見るのか)]

蒼[あ!]

優斗[ん?どうした?]

蒼[優斗、コレ!(笑)]

優斗[ん?なんだ?]


蒼がさっき優斗に貰った風鈴の欠片が入った瓶を掲げて花火に向けた。


蒼[ね!綺麗でしょ!この欠片の青い色が(笑)]


優斗は目を奪われた……花火の灯りに照らされて青く輝く欠片が、蒼の瞳と似ていたからだ。


優斗[あぁ……すげーー本当に綺麗だ……蒼の瞳に似てすげーー綺麗だ……]


優斗は無意識に心で思った事を言葉にしていた。そんな優斗の言葉を聞いた蒼は胸がキュゥ~となり恥ずかしさと嬉しさで、優斗を強くギュゥ~っとしていた。急に我に返る優斗。


優斗[あ……蒼……今のは……その……]


その時、背中に蒼の胸からとても大きな鼓動を感じた。そして、伝わるほど熱くなってくる蒼の体温。それから読み取れる蒼の気持ち。

優斗は、またしても母の言葉が頭をよぎった。

母[素直な気持ち……誤魔化さないで自分の気持ちに嘘つくな!]

優斗は決心した。思ったことはちゃんと伝えようと……後悔しないように。


優斗[蒼……今のは俺の本当の気持ちだ、俺は蒼の瞳が……お前に出会ったその日から……綺麗だと思っていたよ、俺は……蒼の瞳好きだぞ]


優斗は素直に伝えようと決心して言ったものの……恥ずかしくなって体温が上昇していた。


優斗[あ~~な、なんか!暑いな~今日は、ははは(笑)…………(やべー!恥ずかしくなって自分でも何言ってるかわかんねー!)]


すると蒼が。


蒼[優斗、あたしようやく分かったの]

優斗[なにが?]

蒼[好きって意味が!(笑)]

優斗[へ?なに?花火の音で聞こえなかった!何て言った?]


すると、普段あまり大きな声を出さない蒼が、大きな声で。


蒼[あたしは!優斗が好きーーーーーーー!]


その瞬間、優斗の足が止まり……一気に全身が熱くなったのが優斗自身も分かった。そして、蒼の胸の鼓動も更に早くなっていたのも感じた。


優斗[蒼……]

蒼[……言っちゃった……(笑)……でも、好きって意味が分からなかったの……今まで……由衣にも聞かれたり、教えてもらったり、本を見たり色々調べたけど……何処にも答えがなくて………でも、今はわかるよ……意味じゃないってこと……心で感じるの……それを優斗が教えてくれた!あたしは優斗の事が好き!]

優斗[…………蒼…………俺は……]

蒼[優斗…………無理に答えなくても大丈夫だよ……だって……あたしも人に聞かれても答えられなかったもん(笑)好きって分からなかったから……いつか…………優斗が……もし……あたしを……好きになってくれたら言ってね(笑)だから……約束して]

優斗[…………うん、わかった約束だ]

蒼[うん!……でもいつかは……来ないかもしれないけどね(笑)あはは]

優斗[(本当は……分かってる……答えは…俺の心は…でも……今は…………だけど……俺の気持ちが……ちゃんと蒼を受け入れられたら言うよ……蒼の事が好きだって)]

蒼[なんか~楽しい~!優斗と居ると~(笑)]

優斗[なんだそれ(笑)まぁ俺も蒼と居ると飽きねーけどな(笑)]

蒼[なんだそれ(笑)優斗の真似~フフフッ(笑)]




未来の優斗[(……この日……いや……もっと早くに……蒼にちゃんと……好きだと言う気持ちを……言葉を……伝えられていたら……もっと同じ気持ちで一秒でも一緒に居られたのかな…………。この時は……こんな幸せが……いつまでも続くと思っていた……この日が来るまでは……)]




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