第17話 夏祭り&花火大会【夏休み編】 【前編】


8月2日お祭り当日。今回も集合場所は優斗の家だった。


優斗[…………(俺も着るのかよ……)]


優斗は甚平を着せられていた。

先日、蒼の浴衣を買いに行った時に、母がついでに優斗の甚平も買ってきていたのだ。


優斗[(まぁ……浴衣じゃなかっただけマシか……)]


優斗は皆が来るのを待っていた。約束の時間は18時。そうこうしているウチに先に、由衣がやってきた。

優斗の家のインターホンが鳴る。


優斗[お、来たか]


優斗が玄関の戸を開ける。


由衣[お待たせ~!]


優斗は由衣の浴衣姿に一瞬見とれた。


由衣[どうかした?優斗]

優斗[あ、いや……由衣も浴衣着るんだな~って思って……ははは……]

由衣[着るよ~それだけーー?]

優斗[……似合ってます!]

由衣[それだけーー?]


優斗は顔を赤くさせながら。


優斗[…カ、カワイィです……]

由衣[合格~あはは(笑)てか!優斗も甚平いいじゃん!似合ってる!]

優斗[そ、そうか?ははは(てか、浴衣姿ってこんなにも女らしさを出すのか……お世辞じゃなくて……本当に可愛いじゃねーか…………)あ、あのさ、蒼まだ着替え中なんだ、中で待っててもらえるか?]

由衣[うん!全然大丈夫だよ!一樹は?]

優斗[一樹もまだ来てないよ]


2人はリビングで待つことになった。


優斗[飲物、麦茶でいいか?]

由衣[あ、うん、ありがとう……あ、優斗]

優斗[うん?なんだ、ほらよ麦茶]

由衣[ありがとう]


由衣が持ってきた袋を優斗に渡した。


優斗[ん?]

由衣[あ、あのね、コレ誕生日プレゼント……今日優斗の誕生日だよね?]

優斗[え、まじ?覚えてたのか?]


由衣が照れくさそうに……


由衣[う、うん、幼馴染みだもん……覚えてるよ(笑)あ!でも、大したものじゃないから!期待しないでね!(笑)]

優斗[開けてもいいか?]

由衣[うん勿論!]


優斗は由衣からのプレゼントを開けてみた。


優斗[あ、コレ俺見たかったDVDじゃん!しかも、限定版の方じゃん!……本当に貰っていいのか?]

由衣[あはは良いからあげたんでしょ(笑)]

優斗[だよな(笑)ん?あとハンカチ?]

由衣[うん、何あげたら良いか分かんなくて(笑)ハンカチなら普段でも使うでしょ?]

優斗[あぁ!ありがとな由衣スゲー嬉しいよ!ハンカチも大事に使うから]

由衣[うん!改めまして誕生日おめでとう優斗!]

優斗[あ、ありがとう]


優斗はとても嬉しそうだった。そして、由衣も優斗に喜んでもらえて、嬉しそうに微笑んでいた。

そこへ準備が終わった蒼がやってきた。


蒼[ごめーん遅くなりました~]

由衣[蒼~!めっちゃ可愛い~似合う~!女のあたしでも惚れちゃいそうだよ~~~]

蒼[由衣~来てたんだね!由衣も可愛いよ~~]

優斗[!……………………]


蒼の浴衣姿はとても女性らしく、そして何より色っぽく、とても綺麗だった。

優斗は蒼のそんな姿に見とれてしまっていた。

そこへ、母が登場した。


母[どぉ!?最高でしょ~~蒼ちゃんやっぱり可愛いくなったでしょ~~!]

由衣[あ、優斗のお母さん、お邪魔してます!]

母[あら!由衣ちゃん!由衣ちゃんも浴衣姿とても可愛いわよ!!]

由衣[ありがとうございます(笑)蒼には負けますけど(笑)]

母[そんな事ないわよ!2人とも美人だし!どっちの方がって事ないわ!]


そして、母が優斗に向かって自慢気に言った。


母[どう!?優斗!!母さんの言った通りでしょ?(笑)…………ん?ちょっとー?優斗?優斗さん?]


優斗がハッと我に返る。


優斗[え?何?]


母がニヤ~ッと笑みを浮かべ、優斗の肩に手を置き、小さな声で耳元で囁いた。


母[あんた今、完全に蒼ちゃんに見とれてたでしょ(笑)]

優斗[なッ!]

母[まぁまぁ~大きい声出さないのッ由衣ちゃんも居るんだから(笑)でもね完全に惚れ顔になってたわよッ母さんの勝ちね(笑)]

優斗[はぁ~?意味わかんねーし!勝ちとかそんなの……]

由衣[……]


母は通常の声に戻り。


母[はい!はい!じゃぁ~後は皆でお祭り楽しんでらっしゃい!]

蒼[三咲は行かないの?]

三咲[あたしは~直ぐにビール飲みたいから家に居るわ(笑)それに、この家の屋上なら花火も見れるしね!だから気にしないで楽しんでらっしゃい!]

蒼[そっか、うんわかった…………あの、三咲……]

母[うん?]

蒼[……その……浴衣と髪やってくれて、ありがとう]

母[うん!]


母と蒼は互いにニコッと微笑んだ。まるで本当の親子のように。

その後、母は部屋へと行き、3人はリビングで一樹が来るのを待っていた。一樹から優斗へ連絡が入った。


優斗[あ、一樹からだ、もしもし、うん……うん……そっか、わかった、気を付けて来いよ、はーい、じゃぁ]

由衣[一樹何だって?]

優斗[ん?なんか、もう少し遅くなるから、あっちで直で合流しようって]

由衣[そっか~]

優斗[という事で行きますか!]

由衣、蒼[うん!]

優斗[あ、俺コレ部屋に持っていくわ!由衣ありがとな!]

由衣[いいえ~]

蒼[それ、どうしたの?]

優斗[あ~コレ由衣に貰ったんだよ]

由衣[うん、優斗の誕生日プレゼント(笑)蒼は何あげたの?]

蒼[……ゴメンあげてない……]

優斗[あ、別にいぃんだって!気にしなくて!(笑)]


そう言って優斗は部屋へと行った。


由衣[ゴメン!蒼!あたし……余計なこと言って……]

蒼[うぅん、本当の事だから……気にしないで!あたしがあげてなかったのが悪いんだから]

由衣[……本当にゴメンね……悪気があって言ったわけじゃないの……]

蒼[うん!わかってるよ、だから、気にしないで]

由衣[……うん]


優斗が、戻ってきた。


優斗[わりーお待たせ!行こーか!]


そして、3人はお祭り会場へと向かった。

着いて直ぐに一樹から連絡が入り、直ぐに合流することが出来た。


一樹[ホントゴメン!待たせた上に、やっぱ直でなんて言って!]

優斗[あ~そうだな!何か奢れよ(笑)]

由衣[そーね(笑)]

蒼[ありがとう~一樹君(笑)]

一樹[ははは……ですよね~(笑)もちろん!浴衣姿の美女2人を拝めさせめ頂いたので!奢らさせて頂きます!(笑)美女2人に!]

優斗[……おい、何で俺は入ってねーんだ……?]

一樹[ははは、だって男に奢っても何の特も無いじゃん(笑)]

優斗[…………プールで俺は男に奢ったけどな]

一樹[あれ?そーなんですかぁ?]

優斗[………………お調子者め]


一樹が小声で。


一樹[だって~僕~今月厳しくて~]

優斗[はいはい、まぁ~せめて、あの2人には奢ってやれよ]

一樹[優斗~やっぱお前は男気ある最高の親友だ~~(笑)ギュゥ~]

優斗[だーーわかったから!くっつくなッ!]


その後、4人は金魚すくい、水風船、輪投げ、わたアメを食べたり、かき氷、たこ焼きにりんご飴。色々と遊んだり食べたりしていた。

4人は楽しんでいた。特に蒼は、何もかもが初めてで、とても楽しそうだった。一樹は蒼を気に入ってると言うこともあり、お祭りの雰囲気も合わさって、いつも以上にテンションが高めで、ふざけた事を言っては蒼や由衣を笑かしていた。その笑ったタイミングで蒼が優斗の方を見て目が合うとニコッとしていた。余程楽しかったのであろう。だが、優斗は何故か心がモヤモヤしていた。優斗自身も何故だか分かっていないようだ。


優斗[(俺、以外と話して……蒼あんなに笑うんだな。初めて見たかも……でもなんだ……?なんかモヤモヤする……この気持ちは…………)]

由衣[優斗?ねぇ、優斗ってば]

優斗[あ、うん?どうした?]

由衣[どうしたは、こっちの台詞なんだけど~楽しくないの?]

優斗[え?いやいや!楽しいに決まってるじゃん!]

由衣[いや……だってボーーッとしてたし……]

優斗[あー……アレだ…………由衣に貰ったDVDが気になってさ~ははは]

由衣[そーなの!?(笑)なーんだ(笑)そっかそっか~!でも、それは家に帰ったら見れるんだから!今のこの時間は、今しかないんだから!今を楽しもうよ~!ね?]

優斗[……確かにな……あーー……そうだよな!由衣ありがとな!(笑)]

由衣[あはは、何それ(笑)でも優斗が元気になって良かった!早く行こう~蒼と一樹先に行ってるよ~]

優斗[あぁ!わかった!]


由衣が優斗の腕を掴んで引っ張る。


優斗[わッ!引っ張るなよ由衣~]

由衣[優斗が遅いから~(笑)]


由衣は何だか嬉しそうだった。

優斗も少し照れていた。

2人が蒼と一樹を見つけ合流した。


一樹[何してたんだよ~優斗]

優斗[わりー人混みに酔ってたわ(笑)]

一樹[なんだそれ(笑)他も見に行こうぜ!まぁ~こんだけ多いと全部は無理そうだけどな(笑)]

由衣[さすがに全部は無理でしょ(笑)]


しばらく歩いていると蒼がソワソワし始めた。チラチラと一樹を見ていた。

そんな様子を優斗が気付いた。


優斗[……(なんか……蒼……さっきから一樹の事チラチラ見てるような……)]


そうこうしていると、蒼が一樹の方に近付き、皆にバレないようにコソコソと一樹に何かを話していた。そんな様子を優斗は気付かないフリをしていた。


優斗[……(蒼……何話してたんだ……?)]


優斗の鼓動が早くなる。


優斗[……(意味わかんねーし俺……何ドキドキしてんだ……別に蒼が誰と話そうがいぃじゃねーか…………)]


すると一樹が突然。


一樹[あー!あのさ~ちょっと2人で見に行きたい所あるんだけど~少しだけ行ってきて良いかな~?……ははは]

由衣[2人でって蒼と?]

一樹[あ、うん]

由衣[ふーん、2人が良いんだったら~ねぇ?優斗]


優斗は一樹がそんな事を言った瞬間、ある会話を思い出していた。ある日の母との会話だ。


【母[優斗~あんた蒼ちゃんの事どう思ってんの?]

優斗[はぁ?どうって……別にどうとも……]

母[はぁ~……あんたね~蒼ちゃんは美人で絶対にモテるんだから、そのうちどっかの男に取られちゃうわよ~それに、凄く蒼ちゃんに優しく良くしてくれる人が現れたら、蒼ちゃん自身が好きになっちゃうかもよ~?]

優斗[べ、別にそれなら、それでいぃんじゃねー…………]

母[ふーん……後悔しても知らないんだからね!まぁ母さんは蒼ちゃんの味方だから(笑)まぁ一応忠告まで!]】


由衣[ねぇ、優斗、優斗ってば!]

優斗[…………あ、あぁ悪い……え?]

由衣[聞いてた?一樹と蒼がちょっと2人で見に行きたい所あるから少しだけ行ってきて良いかな~だって!]

優斗[……あぁ、別にいいんじゃね……]

由衣[だって!]

蒼[………]

一樹[そっか!悪いな!(笑)じゃ~後から!]

由衣[OK後からね!あ、花火始まる前に来てよ!]

一樹[OK!!!]

蒼[うん]


こうして、花火が始まる前まで別々に行動することとなった。


由衣[(やった~!優斗と、2人きりだぁ~)ねぇ!優斗!どこ行くぅ?]

優斗[あーーどこでも良いよ]

由衣[なにそれ~せっかく昔みたいに2人でお祭り楽しめるのに~!]

優斗[(……あ……そうだ……小さい頃は由衣と2人で毎年来てたっけ)…………由衣]

由衣[うん?]

優斗[コルク銃やろう!何か取ってやるよ]

由衣[うん!!優斗昔から得意だもんね!]


由衣はとても嬉しそうだった。

その後、見事に優斗は由衣が欲しいと言ったウサギのぬいぐるみを取ってあげた。


由衣[優斗~ありがとう~さすが優斗(笑)]

優斗[別に大した事じゃないよ、でも、こんなんで良かったのか?ウサギのぬいぐるみって(笑)小学生じゃねーんだから(笑)]

由衣[いいの!だって……小学生の時に優斗が初めて取ってくれたのも……ウサギのぬいぐるみだったから……だから、どうしても……また優斗に取って欲しかったの……あたしの大事な思い出]


そう言って由衣はぬいぐるみをギュッとしながら笑顔を見せた。

優斗はそんな由衣を見て胸がキュッとなり顔を赤くした。

優斗は少し照れながら。


優斗[よ、良く覚えてたな、そんな昔の事]

由衣[忘れないよ、だって……あたしは……優斗の事…その時か………]


由衣が続きの言葉を言おうとした瞬間、歩いていた由衣の足が縺れ転びそうになった。

その瞬間、優斗が瞬時に気付き由衣を抱き抱えた。


優斗[おい、大丈夫かよ]

由衣[う、うん、ゴメン、ありがとう……下駄なれなくて(笑)]

優斗[だろーな(笑)なぁ景品クジやってるみたいだから行ってみよか]

由衣[う、うん(…………また、言えなかったぁ)]


クジをやる優斗。


優斗[くそーガラクタじゃん……おっちゃん……何だよ……この景品]

おっちゃん[景品は景品だろ!(笑)]

優斗[景品って…………こんな親指ぐらいしかない小さいコルクのガラス瓶何に使うんだよ……]

おっちゃん[砂……でも入れたらどーだ?(笑)]

優斗[バカにしすぎだろ……]

おっちゃん[まぁ100均だけどな(笑)]

優斗[100均かよ!……そのネタ言うか?クジ1回500円なのに……ボロ儲けだな……]

由衣[あはは(笑)さすが~優斗~昔からクジ運ないもんね~]

優斗[まぁ……それは自分でも分かる……]


その頃……蒼と一樹は。

優斗達とは反対の方向へ向かって歩いていた。


一樹[(なんだ~!?蒼ちゃんから俺を誘うなんて……こ、コレってやっぱり!蒼ちゃん俺の事!?て、手でも握った方がいいかな?やっぱココは男らしく……)蒼ちゃん!]


一樹は蒼の手を握った。


蒼[え?一樹君?]

一樹[蒼ちゃん!あの、誘ってくれて嬉しかった!あの、俺、こう言うのは本当は男の俺から言うべきだったのに……ゴメン!]

蒼[あ、え、あの…一樹君]

一樹[良いんだ!蒼ちゃん何も言わなくて!俺、これから蒼ちゃんの事大事にするから!だから]

蒼[……あ、あの!一樹君!]

一樹[え?あ、はい]

蒼[ごめんなさい……]

一樹[なにが?]

蒼[……あの、あたし……これから行かなきゃいけない所があって……それで……優斗に分かんないようにしたくて……それで……その……あたし1人だと無理だと思って一樹君に頼んだの……]

一樹[え?]

蒼[……だから、ありがとう]

一樹[え?]

蒼[……あたし、ちょっと行ってくるね]

一樹[あ……俺は…………え……なら……俺も……]

蒼[ゴメンね、一樹君、あたし1人で行かないと意味がないの]


そう言って蒼は1人何処かへ行ってしまった。


一樹[……あれ?……勘違い……だったのかーーー!!]


蒼は急いである所へむかっていた。


蒼[ハァハァハァ(急がないと!!)]


しばらく、大分しばらく……一樹は、1人ボーッとした後、優斗達の元へ戻っていった。


由衣[あれ~?一樹戻ってきた~……あれ?蒼は?]


一樹が小さな声で。


一樹[……俺の勘違いだった……]

優斗[はぁ?なんて言ってるかわかんねーよ]

一樹[俺の!勘違いだったー!!]


一樹が優斗に抱きつく。


優斗[だーーー!意味わかんねーよ!そして、抱きつくな!]

由衣[ねぇ、蒼は?]

一樹[……蒼ちゃんなら……ちょっと行く所あるって行っちゃった……]

由衣[え?どこに行ったんだろう……蒼……]

優斗[……電話してみる]


優斗が蒼に電話をかけたが……電源が切れていたため繋がらなかった。


優斗[蒼のやつ、また充電切れか……?最近携帯ばっかイジってるから多いんだよな……]

由衣[花火まで戻ってくるかな……?]

優斗[……取り敢えず少し待ってみるか……]

由衣[取り敢えず……だね…]


その頃、蒼は。


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