第13話 あたしも


ある日、蒼は部屋で一人雑誌を見ていた。最近では自分で雑誌を買い、より一層勉強するようになっていた。これも由衣のお陰だ。先日も由衣に誘われ二人で買い物に出掛けていた。由衣に色々と教えてもらいながら服やオシャレアイテムを購入していた。二人は相変わらず仲が良いようだ。部屋も前より女の子らしくなり、可愛い小物やなんかも増えていた。そして、蒼は前よりも自我に目覚めていた。少しずつではあるが、自分の思っている事や感じている事を人に伝えれるようになって来ていた。



蒼[(これ……可愛い……わぁ……これも可愛い………優斗こう言うの好きかな……?)]


蒼は無意識に優斗の事を考えながら服を見たり選んだりしていた。そんな時、母が前に言っていたことを思い出した。


蒼[(そーだ…でも…うーん)]


蒼は悩んだら行動に移すようになっていた。蒼は優斗の部屋へ行った。

部屋の戸をノックする蒼。コンコン。


蒼[優斗居る?]

優斗[ん?どーぞ]


部屋の戸を開ける蒼。

優斗はイスに座り携帯をイジっていた。


蒼[優斗……]

優斗[どうした?]

蒼[優斗……したい]

優斗[したい?]

蒼[うん、したい、あたし、優斗としたい]


イスからズリ落ちる優斗。

赤面し動揺しまくりの優斗は。


優斗[は?え?あ、蒼さん何をおっしゃられてるんですか……]

蒼[だから……あたしも……優斗とデートしたい]

優斗[な、何だよ~驚かすなよ~!したいって、デートね!あーデートか(笑)ビックリしたわ!いきなり…したいとか……なーんだデートか…ははは…………………………………えッ……デート!?]

蒼[……うん]

優斗[ど、どうしていきなりデート!?]

蒼[……だって……優斗……由衣とは……デートしてたし……]

優斗[いや……あ、あれはデートと言うか……た、ただの買い物だよ……デートではない……と……おもわれます…………たぶん……]

蒼[違うの?でも、本に書いてあった、男の人と女の人、二人で買い物するのデートって……だから、あたしも……優斗とデートしたい]

優斗[……(う~ん……蒼は俺と買い物がしたいのか?デートがしたいのか?そもそも、買い物をデートと勘違いしているのか?……でも、まぁ確かに男女二人で買い物に行くのも、デートって言えばデートだよな……)]


そんな事を色々と考え無言でいたら。


蒼[優斗…あたしとは一緒に行きたくないなら……一人で行く…]

優斗[わ、わかった!い、行くよ一緒に!デ、デート?]

蒼[本当?嬉しい!]


蒼はとても嬉しそうな笑顔を見せた。


蒼[じゃぁ準備してくるね!]

優斗[お、おう]


そして、リビングで優斗が待っていると、蒼が準備が終わりやってきた。


蒼[ごめん、優斗待たせて]

優斗[いや、別にそんな待っ……て ……]


優斗は蒼の姿に目を奪われた。上はカラーシャツを着て、下は可愛らしさもある短めなスカート、肩には小さめなショルダーバッグを掛けていた。シンプルだが今までの蒼とは、まるで違う印象で……その全てが蒼に似合っていた。


蒼[優斗?]

優斗[…………あ、わりーわりー(笑)……はは…]

蒼[あたしの服…変だった…?似合ってないかな…]

優斗[いや!い、いーんじゃないか!わ、悪くないと思うぞ、うん]

蒼[良かった、優斗にそう言ってもらえて]


そう言うと蒼はニコッと笑顔になった。


優斗[(……蒼のやつ最近、由衣とちょくちょく買い物に行ってると思ってたら……こんなにオシャレに……女らしく………てか普通に可愛いじゃねーか……でも、恥ずかしくてそんな事いえねー……)]

蒼[優斗行こ]

優斗[あ、うん、だな]


そして、二人で出かけ、歩いている途中。


優斗[あぢーー……てか、もう7月だもんな……蒼暑くねぇか………?]

蒼[う、うん……暑い…]


そう言って蒼は服の胸の所を少し下にさげながらパタパタさせていた。そんな蒼を見て優斗は、暑くて赤くなっていた顔を更に赤くさせて蒼に言った。


優斗[バカッ!シャツの間から胸見えてるから!…気を付けろよ]

蒼[あ、ごめん優斗……]

優斗[(蒼のやつ、無防備すぎるだろ…てか、普段家にいる時から無防備だとは思ってたけど……外でもってことか……)]


優斗は無防備な蒼を気にしていた。


蒼[ねぇ……優斗]

優斗[ん?]

蒼[……由衣と来たときは……どこに行ったの?]

優斗[え、いやー色々だよ……一杯服を買ってたからな]

蒼[色々って?買い物だけだったの?]

優斗[えーと……買い物だけ……では……ないですけど………(なに、俺は動揺してんだ……?)]

蒼[買い物だけじゃないって?遊ぶところ?]

優斗[……お、おぅ]

蒼[あたしも同じところ行ってみたい]

優斗[……あ、あぁじゃ、行くか?]


蒼は嬉しそうに笑って。


蒼[うん!行く!ありがとう優斗]

優斗[あ、でも先に少し買い物しちゃった方がいいんじゃねーか?時間無くなったらあれだし]

蒼[あ、うん、わかった]


そして、二人は色々と見てまわった。

そんな中、蒼が。


蒼[ねぇ優斗]

優斗[ん?]

蒼[優斗は何か欲しいものないの?]

優斗[んー俺は特にないなぁ~そもそも、あんまり物欲ねーしなぁ…]


蒼が小声で。


蒼[……うーんどーしよ……]


そして、蒼が何か考えていると優斗が足を止めた。


優斗[お、コレいいな……これは……すげー綺麗だな……]


風鈴【ふうりん】が売っている所だった。

優斗は珍しく見入っていた。


優斗[これ風鈴って言うんだけど蒼知ってるか?]


蒼が目をキョトンとさせて、首を横にふった。


蒼[うぅん、知らない、な~にこれ?]

優斗[これさ、俺が小さい頃に夏になると、ばぁちゃん家に飾ってあって、風が吹くとリーンって良い音でなるんだよ~俺さずっとこれが欲しくて親にねだってたんだけど、その頃アパートだったし、近所迷惑になるからダメだって、買ってもらえなくて、結局そのままずっと買ってもらえないままで、諦めて終わったよ(笑)]


そう、言って優斗は歩き出した。


蒼[…………]

優斗[おーい何ぼーっとしてんだよぉそろそろ昼だし、腹減ってきた~飯食いに行こーぜッ]

蒼[あ、うん、ごめん]


そして、お昼になり二人はランチをした。


蒼[ここ、美味しぃね~]

優斗[だろ~]

蒼[この後、どこに行くの?]

優斗[ん~そーだな~蒼は歌とか何か歌えるのか?]

蒼[んー……歌えない……]

優斗[じゃぁカラオケは無しで、取り敢えず、ゲーセン行って、ボーリングってのはどーだ?]

蒼[うん!それでいい!優斗となら、どこでも一緒に行きたい]


そう言って蒼は笑った。

優斗は顔を少し赤くして、照れながら。


優斗[おまえな~よく平気でそう言うこと言えるよなぁ]

蒼[なんで?だって本当にそう思ったから]


蒼は、純粋な眼で真っ直ぐ優斗を見て、素直に思ったことを伝えていた。そんな蒼を見て優斗は声が小さくなり。


優斗[な、なんでって………そ、そう言うのは……す、好きなやつに言うやつ……で……(え……?蒼って俺のこと…………いやいや…………でも……あ~もぅいぃ考えないようにしよう……)蒼!食ったら行くぞ!]

蒼[うん!]


ランチが終わり、その後の二人はゲーセンへ向かった。


優斗[蒼!やるなッ!(笑)]

蒼[そーぉ?(笑)でも優斗に勝てない]

優斗[あったり前だ!やったばっかのお前に負けてらんねーよ!(笑)]


優斗は何気に楽しそうだった。

蒼もとても楽しんでいた。

その後二人はボーリングへ。


優斗[いいか、こーやって!]


優斗が投げると、全てのピンが倒れた。


優斗[ま!こんなもんかな(笑)出来るだけ一回で全部倒すんだよ、まぁ~最初からは難しいかもだけど、やってみろよ]

蒼[うん!頑張る、やってみる]


そして、蒼が初めて投げてみた。


優斗[まぁ~何本か倒れれば~上出来き……]


全て倒してしまった。


蒼[やったー!これでいいの?]

優斗[……お、おう、そ、そーだな(苦笑)ま、マグレだとしてもスゴいな……はは……てかパンツ……見えてるし……あ、蒼……その……パンツ見てえるぞ]

蒼[……う、ごめん優斗]

優斗[(俺はいいんだけど……なんか他のやつに見られるのは……ん?べ、別に彼氏じゃねーのに何を気にしてるんだ……)あ、あぁ気を付けろよ]


その後。


蒼[やったー!また、全部倒れた~]

優斗[…………はい?……]


蒼は何気にセンスがあったようだ。

その後……結局スコアは優斗が勝ったが。


蒼[負けちゃった~やっぱ優斗はスゴいね!]

優斗[あ、あぁま~な……あ、当たり前だ何年やってると思ってんだよ……ははは……(結構ギリギリだけどな……次やったら負けそうだ……蒼のやつどんなセンスしてんだよ……次までにはもっと腕上げとかないとヤベーな……はは……)]


そして、一通り遊びは終わり買い物へ向かった。


蒼[楽しかった~ありがと優斗!]

優斗[おう、中々盛り上がったしな(笑)……そして、なんか~忘れてるような~?]

蒼[ん?なぁに?]

優斗[ん~~~なんだっけー……?……………………あ!思い出した!]

蒼[なぁに?]

優斗[あのー……さぁ、ほら、一樹いるじゃん、で、一樹が夏休みにプールに行こうって言ってて、それで……蒼も……どうかなぁ……って]

蒼[プール?]


優斗が両手を合わせて。


優斗[うん、頼む!蒼!一緒に行ってもらえねーか…?]

蒼[うん、優斗が一緒に行くなら行く!]

優斗[まじか!助かる(いやーあっぶね危ねぇ一樹に普段ウチに来ない代わりに、夏休みに蒼をプールに誘えって言われてたんだっけ……)]

蒼[優斗……でも、あたし水着無い……]

優斗[あ、そっかー……じゃぁ今から買いに行こう!]

蒼[うん、じゃぁ優斗一緒に選んでね!]

優斗[おう、わかった!]


そして、二人は水着を買いにお店に行った。


優斗[…………(わかった……とは言ったものの……一緒に選ぶってことは……蒼の水着姿見るってことだよな……)]

蒼[優斗?着替えた、どーかな?]


蒼がカーテンを開ける。

優斗は顔を赤くして。


優斗[!(うッ……やべー……やっぱ……蒼……スタイルいいよな……胸も結構あるし……)]

蒼[優斗?どぉかな……変?に、似合ってないかな?]

優斗[い、いや!に、似合ってるぞ]


そこへ店員が来て。


店員[お客様とてもお似合いですね!良かったらこれなんかもいかがですか?今年の流行りのモデルでして~彼氏さんも見てみたいですよね?]


そう言って店員は優斗にニコッと笑った。


優斗[い、いや彼氏じゃ……(いや、今、否定したら蒼に悪いか……?い、一応合わせて彼氏って事にしておくか……)そーですね!他のも良いですか?]

店員[はい!では、何着かご用意しますね!]


そして、蒼は何着か試着させてもらった。


蒼[優斗~どれがいいと思う?]

優斗[ん~そーだな~俺もよくわかんねーけど……俺的には……三着目のが良かったかな?]

蒼[じゃぁそれにする!]

優斗[え、いいのかよ?俺が決めたので]

蒼[うん!優斗が決めたのでいい!優斗に決めてもらったのがいぃの]


そう言って蒼は笑顔を見せた。

優斗はその瞬間……胸がまたギュッとなった。


優斗[そ、そか、ならこれにしよう!お、俺が買ってくるから後、蒼は着替えてろ]

蒼[え、いいの?]

優斗[いいんだよ!俺が誘ったんだし!それに、こう言うのは普通~男が出すんだよ、だから気にすんな]

蒼[うん、わかった]


そして、蒼は着替えて、二人はお店を出た。


優斗[ほらよ]

蒼[優斗、ありがと!でも買ってもらって本当いいの?]

優斗[おう!いぃんだよ!]

蒼[…うん………ねぇ優斗、帰る前にちょっと見に行きたい所あるんだけど……ちょっとだけ待っててもらえるかな?直ぐに戻ってくるから]

優斗[ん、そーなのか?俺行かなくて大丈夫か?]

蒼[うん、あたし一人で大丈夫だから、優斗は、ここでちょっと待ってて!ね?]

優斗[……お、おう、わかった]


そして、蒼は行った。ところが……。


優斗[(蒼のやつ直ぐに戻ってくるって言ってたのにおせーな?)]


優斗は蒼の戻りが遅かったため、蒼を探しに行った。


優斗[(ったく~蒼のやつ何してんだよ~)]


優斗が探しに出て直ぐに蒼を見つけた。直ぐに遅かった理由がわかった優斗。蒼は見知らぬ男性に声を掛けられ困っていた。


男性[ね?いいじゃん?(笑)ちょっとだけ?てかメッチャ美人だね!肌も白くて綺麗だし!]

蒼[すいません……人待たせてるので……]

男性[えー良いじゃん?ちょっとだけだから……]


そこへ優斗が現れた。


優斗[おい……お前……なに人の女に馴れ馴れしく声掛けてんだよ。]


優斗は静かにキレていた。そのキレ具合は相手に直ぐ様伝わるほどだった。


男性[あ……彼氏居たのね……そっか……ごめんねーじゃぁー……]


男性は直ぐに撤退していった。


蒼[優斗!ごめんなさい……あたし……怖くて]

優斗[いや、俺も悪かった……もっと気に掛けてれば良かったな……もしかして……いつもなのか?]

蒼[……うん……いつもだと由衣が色々言ってくれて終わるんだけど……あたし一人だと上手く言えなくて……]

優斗[そか……悪かった……行くぞ]

蒼[うん]


二人は歩き出した。


優斗[(……そう…か……そうだよな……よく考えたら……蒼は世間から見たら、とびきりの美人だ……声掛けられないわけないよな……)]

蒼[……ウト、優斗、優斗?]

優斗[あ、うん?わりー、なんだ?]

蒼[あ、あの……ありがと優斗、助けてくれて……]

優斗[当たり前だろ、礼なんて言わなくていいぞ]

蒼[うん……その……それだけじゃなくて……その…優斗が……俺の女に……って言ってくれて……嬉しかった]


そう言って蒼は顔を赤くしながら下を向き、優斗の袖を少しだけ掴み、恥ずかしそうに、ちょっとだけ優斗の方をチラッと見て笑顔を見せた。

優斗は慌てながら。


優斗[あ!あ、あれは!な、なんて言うか勢いでと言うか、アレだ!アレ……]


などと言い訳していた優斗であったが、その時、袖越しに蒼の手の震えが伝わってきた。


優斗[!]


その瞬間、胸がグッと苦しくなり、蒼がとても愛おしく思えた。蒼はとても怖かったのだろ、優斗に気を遣い我慢して、大丈夫なフリをしていたが、その手の震えで分かった。優斗は蒼を抱き締めそうになった自分を抑え蒼の手を握った。


蒼[優斗?]

優斗[大丈夫だ、俺が居るから安心しろ!]

蒼[うん!]

優斗[それと……今日、楽しかった誘ってくれてありがとな!蒼と居ると退屈しなくていいしな(笑)はは]

蒼[うん!あたしも優斗と一緒に居れて楽しかった!また、一緒にデートしてくれる?]

優斗[あ……あぁいいぞ、べ、別に……]


蒼は嬉しすぎて胸がキュッとなり言葉が出せなかったので、優斗の手をギュッと握り返した。

そのまま二人は帰っていった。

その日の夜。


優斗[(そー言えば……俺、蒼が他の男に話し掛けられてた時……何であんなに怒ってたんだ…………蒼の事が……好き……だから……?……いやいや!いやいや!そんなわけあるか!…………わかんねー考えるのやめよう…………。てか……蒼のやつ水着以外何も買ってないんじゃないか?あれ?買い物行きたいって言ってたのに……まぁ……いぃかぁ…………にしても…………蒼の水着姿が頭から離れん…)]


また……鼻の下を伸ばしていた優斗であった。


優斗[(べ、別に俺が見たくて着せた訳じゃねーし!ふ、不可抗力!不可抗力!)]


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