第11話 計画は…


由衣[……あのさ……蒼、ちょっと話しは変わるんだけど……]

蒼[うん?なに?]

由衣[蒼ってさ…………]


由衣が少し黙ってから言葉を切り出す。


由衣[……好きな人いる?……]

蒼[好きな人……?]

由衣[うん…前にも聞いたと思うけど…どうなのかぁって思って………本当は、いたりするんじゃないかな~って]

蒼[……好きな人って……よく分からないんだ…好きな人って、どう言うことが好きなのかも、よく分からなくて……]

由衣[……そう……なんだー……]


由衣が、また少し黙ってから。


由衣[……じゃぁさー……蒼って毎日、自分でお弁当作ってるんだよね……?]

蒼[うん、そうだよ]

由衣[それって……他の人にも作ってたり……してない?蒼とまったく同じお弁当だった人見ちゃって…]


そう言われた蒼は、どう答えたら良いか分からなくなった。蒼が優斗の弁当を作ってると言えば、色々な事がボロが出て最終的に優斗との約束(秘密)を果たせなくなる、そんな事を考えているうちに……。


由衣[……やっぱり作ってるんだね……それってさ優……]


由衣が名前を言い掛けたその時。

玄関のドアが開く音が聞こえた、そして。


母[ただいま~]


なんと母が帰ってきたのだ!

そして、母がリビングの戸を開ける。


母[蒼ちゃ~んただいま~]

蒼[!]

蒼[三咲…!夜にしか帰ってこないんじゃなかったの?]


蒼は焦っていた。


母[そーそれなんだけど~あたし予定、来週と間違えてたみたいなの(笑)ドジよね!あ、お友達来てたのね!ごめんなさいね!お邪魔して]


そして、母が荷物を置いて顔を見上げると…


母[あれ?もしかして…由衣ちゃんじゃない?]


由衣がキョトンとした表情で話す。


由衣[……はい…そうです…優…斗のお母さんですよね…?]

母[えぇそうよ、久しぶりね~ずいぶん大人っぽくなって~]

由衣[いえ…そんな………。え?どうして、優斗のお母さんが蒼の家に居るんですか?]

母[ん?あれ?説明されてないの?]

蒼[…………優斗が取り敢えず秘密にしろって…]

由衣[秘密!?優斗!?え?え?どう言うこと?]


由衣は混乱していた。


母[はぁ~だから先に言っとけば良かったのに~ごめんなさいね、由衣ちゃん、ちゃんと説明するね。実はね蒼ちゃんは、うちの親戚の子で、今、両親が仕事で海外に行ってて、それで一人だと大変だから、うちで蒼ちゃんを預かってるの。優斗がちゃんと説明しとけば良かったのにね!ごめんなさいね]


因みに、母は蒼にも同じ説明をしてある。


由衣[あ、そう言うことだったんですね!あたしびっくりしちゃって~そっかー……じゃぁさ、蒼帰りに優斗と一緒に帰ってたの見かけたんだけど、それも一緒の家に住んでたからって事だったんだね!]

蒼[……うん、黙っててごめんね由衣]

由衣[うぅん!いいの、いいの!あたしも何か色々誤解してたから…]

蒼[誤解?]

母[(…………由衣ちゃんって……もしかして優斗のこと~(ニヤ)ふ~ん優斗モテモテね(笑))]

由衣[うぅん!なんでもない!こっちの話!(笑)え?てことは、もしかして、お弁当も蒼が優斗に作ってあげてるの?]

蒼[うん、そう]

由衣[そっかー……そうなんだね…そう言うことか…]

蒼[ん?なにが?]

由衣[うぅん!何でもない]

由衣[……ところで……優斗は?]

蒼[……優斗、漫画喫茶、由衣が帰ったあと連絡よこせって言われてた]

由衣[あのやろ~蒼に、ここまでさせて~自分は身を潜めてたってことか~!]

母[自業自得ね(笑)お仕置きしましょ(笑)蒼ちゃん優斗に電話してもらえる?由衣ちゃんは帰ったってことにして]

蒼[…うん、わかった]


蒼が優斗に電話を掛ける。

優斗の電話が鳴る。


優斗[ん?蒼からだ、もしもし、由衣のやつ帰ったか、うん、わかった、今から帰る]


そして、優斗が帰宅した。

もちろん由衣の靴は隠してある。

何も知らず知らない優斗は。


優斗[ただいま~いやー意外と早かったな(笑)ガチャ]


リビングの戸を開けると……。


優斗[へ?…………どういう……こと……ですか?]

母[どういう事じゃないわよ。あんたがちゃんと説明してなかったせいで、由衣ちゃんと蒼ちゃんがスゴく迷惑したの!]

優斗[……いやーこれには色々と事情がありまして…………。ってか!なんで母さんが居るの!?夜まで帰らないんじゃなかったの!?]

母[あたしは~ちょっと予定間違っただけよ(笑)だから早く帰って来たの、そしたら、こんな事になっててね、だから、あんたに説教しようと思って]

由衣[ちょっと!優斗!ちゃんとあんたの口から説明しなさいよ!蒼だって、大変だったと思うよ!あたしにバレないように、色々気を使ってたと思うし!何でこんなことしたの?]

優斗[いや……だってさ、由衣にバレたら皆にもバレるじゃん……そしたら、ほら……一樹にバレたら……あいつさ、分かりやすいぐらいに蒼のこと気に入ってるじゃん、そーすると面倒なことになると思ってさ…………はは……]


そう言って苦笑いする優斗。


由衣[ハァ~……あたしが蒼を売るようなことすると思う?別にあたしは言わないけど~でも、皆とか、一樹に言ってた方が、後々面倒にならないんじゃない?今のままだったら、もし誰か見たときに付き合ってるって思われるじゃん]

優斗[そーか?]

由衣[そーだよ!皆そー思っちゃうでしょ!]

優斗[そうか…………てか、なんでそんなにムキになってんだ由衣?]

由衣[べ、別に!ムキになんてなってないし!……とにかく、一樹には言ってた方がいぃと思うよ!]

優斗[……そうか、わかったよ…]


こうして、優斗の計画は…敢えなくバレ、今まで秘密にしていた蒼との事を一樹に言うことになった。

そして、由衣が帰る。


由衣[お邪魔しました~!]

母[は~い、由衣ちゃん、また遊びに来てね!]


由衣が笑顔で。


由衣[はい!また来ます!]

優斗[じゃーなー]

由衣[優斗!あ・し・た絶対に言うんだよ!]

優斗[ヘイヘイ、わーったよ]

蒼[外まで送るよ]

由衣[うん、ありがと]


蒼が由衣を門まで送った。


由衣[あ……そうだ、蒼]

蒼[うん?なぁに?]

由衣[蒼さ、毎日優斗のお弁当作ってたんだよね?]

蒼[うん]

由衣[蒼さ、毎日じゃ大変だろうから、あたし明日優斗のお弁当作るよ]

蒼[……え……でも……]

由衣[大丈夫!あたしは全然問題ないから!ね?]

蒼[……う、うん]

由衣[よし!じゃ優斗に言っといて!今日はありがとうね!楽しかった~また、明日ね!]

蒼[うん、あたしも楽しかった、また、明日……]

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