第9話 動揺


朝、ホームルーム中。

優斗は1人、悩んでいた。


優斗[(うーん……母さんに学校で蒼と話すようにするとは言ったものの…自然に話し掛けるって…どうやって…)


そんな時だった。先生が。


先生[えーそろそろ、席替えをしようと思う。]

生徒達[えー!この席がベスポジだったのに~俺だって寝やすくて最高だったのに~]


先生[お前らな~…まぁ、そう言うことも兼ねての席替えだ!それで、公平になるように先生が作ったクジで先生が引いて勝手に決めさせてもらう]

生徒達[えーまじっすか~]

先生[当たり前だ、一人一人自分が座りたい所を選んでいたら不平等だろ!という訳で今から決めるからな]


先生が次々とクジを引いていき、全員の席が決まった。優斗は…まさかの全く同じ席…一番後ろで窓側。親友の一樹は優斗の前の席。由衣は廊下側の一番後ろ。そして、蒼は廊下側の前から二番目。


先生[よーし、これで全員決まったな、今日からしばらくは、この席順で行くからな、以上! ホームルームを終わる]

生徒達[はーい]

生徒A[あーまじか…前の席の方が良かったしー]

生徒B[俺は全然こっちの方が良いけどな~]

優斗(俺…変わってねーし…まぁ何でも良いけど…)

一樹[優斗、近くなったな!授業中分かんないとこ教えてくれよな!宜しく!頼りにしてるぜ!(笑)]


実は優斗は頭が良いのだ。学年で一位、二位を争う程だ。まぁ天才的な両親の子とも言うこともあり、当然と言えば当然だろう。


優斗[はぁ~そんの時ばっか(てか、この席替えで…ますます蒼に話し掛けづらくなってしまった…)]


そして、授業中、優斗はどうやって蒼に自然に話し掛けるか考えていると、自然と蒼を見ていた。


優斗[(だめだ~考えれば考えるほど、どーしたらいいか分からなくなる…)]


そんな優斗を気にして見ていた人物がいた。

由衣だ。優斗の視線の先が気になるようだ。

休み時間、由衣は、さりげなく優斗に聞いた。


由衣[優斗~]

優斗[お、由衣どうした?]

由衣[優斗何か考え事してる?]

優斗[え…いや…別に考え事なんてしてないぞ!ど、どうしてだ?]


優斗は少し焦った様子で返答した。


由衣[ふ~ん、そう…何となくそう見えたから、まぁいいけど。そうそう!あたし蒼ちゃんのこと気になってたんだよね~仲良くなって見ようかな~?]


優斗は焦りながら。


優斗[な、なんで俺にそんなこと言うんだ?]

由衣[別に意味は無いけど~何となく~蒼ちゃんって可愛いし、綺麗だし、未知な所が気になるから、どうかな~ってね!]

優斗[あ、そう、いいんじゃないか?あんまり仲良いやつ居なそうだからな……はは…]

由衣[うん!あたし話してくる!]


そう言って由衣は蒼の所へ行った。


優斗[……(由衣のやつ昔から勘がいいからな…何か感付いたか…?)]


そして、由衣は蒼に話し掛けた。


由衣[蒼ちゃん!お話しよ?]

蒼[…えーと…]

由衣[あたしは、吉岡由衣だよ]

蒼[吉岡…さん]

由衣[由衣でいいよ!]

蒼[じゃ…由衣、あたしも蒼でいい]

由衣[わかった!ヨロシクね蒼]


こうして、二人は少しずつ話すようになっていった。

ある日。


優斗[(由衣のやつ…最近、蒼によく話し掛けてるから 俺から蒼に余計話し掛けづらくなってるな~…)]


優斗…未だに自然と話し掛けられずにいた…。

そんな中、蒼と由衣は少しずつ自然に会話が出来るようになっていた。


由衣[へー!蒼って料理好きなんだね!あたしも料理好きなんだよ~あと、お菓子作りとか!]

蒼[うん、あたし、よく本見て勉強してる]

由衣[そっか~じゃお弁当とかも自分で作ってるの?]

蒼[うん、そう]

由衣[だよね!やっぱお弁当は自分の好きなもの入れたいしね(笑)じゃぁさじゃぁさ!好きな人にとか作ってあげたりするの?]

蒼[…好きな人に?]

由衣[うん!だって~せっかく料理上手くなって作るんだったら、いつか好きな人に食べさせたいじゃん!]

蒼[ ……好きな人ってよくわかんない]

由衣[いないの?じゃぁ気になる人とか、一緒にいたいな~って思う人とか?]


そんなことを話しているウチに、チャイムが鳴ってしまった。


由衣[じゃこの話の続きはゆっくり時間がある時にね!]

蒼[うん]


そして、放課後。

由衣は部活中。


由衣[いっけなーい!部室に飲み物忘れてきたみたい!ちょっと取りに行ってくる!]


由衣が部室に飲み物を取りに行く途中、ふと校門の方を見ると、優斗が見えた。


由衣[(優斗、あいつも部活やればいいのに~運動神経いいのに勿体ないんだから~)]


そんな事を思って見ていたら、校門の陰から蒼らしき人物が出て来たように見えた…。二人は少し会話をした後、少し離れて同じ方向へ帰っていった。


由衣[(ま、まさかね……)]


次の日の昼休み。


一樹[さーー飯だ!飯だ!ん?てか、優斗って毎日手作り弁当か、いいよな~!俺なんて…ほぼ毎日コンビニ弁当だってのによー!誰か可愛い女子!恵まれない俺に!手作り弁当をくれーー!]

優斗[お前うるせーよ…ホントいつでもテンションたけーよな…]

一樹[だってさ~~~……あ~~ぁ蒼ちゃん俺に手作り弁当くれねーかな~]


優斗は少しビクッとして。


優斗[はぁ?な、何言ってんのおまえ…]

一樹[だってさ~あんな美人が毎日俺のために手作り弁当なんて作ってくれたら最高に幸せじゃん!]

優斗[あぁ…そうか…]

一樹[まぁ!いつか!そんな夢が叶う日が来ることを願って………今は俺はコンビニ弁当!おまえは母親の手作り弁当で我慢しようや!はははッ(笑)…でもさ~優斗の弁当ってスゲーよなぁ毎日違うバリエーションで、しかも、ちょー旨そうだし、そして何か前よりパワーアップしてね?母ちゃんスゲーな!俺のコンビニ弁当と交換してくれよ~!]

優斗[しね~よ!いいから早く自分の弁当食えよ!]


そんなやり取りをしている所へ由衣がやってきた。


由衣[ちょっと~何二人で盛り上がってんの~?(笑)あ、そう、優斗この前借りてたDVD返すね!面白かったありがとう!]

優斗[あ、おぅ]

一樹[由衣ちゃ~ん、いやね、優斗の弁当が毎日バリエーション半端なくて旨そうだから、俺のコンビニ弁当と交換してくれって言ってたの(笑)]


由衣は優斗のお弁当を見て。


由衣[ホントだ~スゴいね!優斗のお母さんやるね!]

優斗[いや…べ、別に普通だろ…てか!一樹余計なこと言ってないで自分の食えよ]

一樹[へいへい]

由衣[じゃぁ、あたしも、蒼とお弁当た~べよっと!ありがとうね、優斗]


そう言って由衣は蒼の方へ行った。


由衣[蒼~ごめんねお待たせ!]

蒼[うぅん、大丈夫]

由衣[いや、優斗に借りてたDVDあってね!返しに行ってたの~それでね~…………]


次の言葉を言い掛けた由衣が一瞬止まった……。

由衣は気付いてしまった……。

蒼の弁当の中身が……優斗の弁当の中身と全く同じであることに。


蒼[由衣…?どうかした?]

由衣[……ん?あ、ごめーんごめん、何でもない、ちょっと急に思い出しちゃったことがあって(笑)気にしないで!]


由衣は動揺していた。色々な事が頭を駆け巡る……蒼は自分のお弁当を自分で作っていると言っていた……でも、優斗のお弁当の中身も蒼とまったく同じ……そして、昨日の放課後の出来事……見間違いだと思っていたが……あれはやはり優斗と蒼だったのかもしれないと疑った。二人は学校では、ほとんど話もしていない……でも……。由衣は二人には何か繋がりがあると思い、探るためにある行動に出る。それは…


由衣[……ねぇ、今度の日曜日に蒼の家に行ってもいい?]

蒼[え?]

由衣[あたしさ、日曜日、部活休みなんだけど、蒼の家に行ってみたくて…二人でお菓子とか作ってみたいし、それに……二人でもっとお話ししたいな~って……ダメかな?]

蒼[…うーん…]

由衣[あたし…いつも部活で…休みが有ったり無かったりだから……]


由衣が両手を合わせて蒼に言った。


由衣[ねぇ?お願い!]


蒼[…うん、わかった]

由衣[いいの!?良かった~!じゃぁあたし料理本色々あるから、持っていくね!]

蒼[うん!ありがとう]



蒼は由衣が料理の本を持ってきてくれると言うこともあり、少し嬉しかったようだ。

こうして、二人は日曜日に家で会うことを約束した。

その日の夜、蒼は優斗に由衣がうちに家に来ることを告げる。


優斗[え?由衣がウチに来る?]

蒼[うん…本当は優斗や三咲に相談してから…と思ったんだけど…由衣に部活の休みが、有ったり無かったりだからってお願いされちゃって……あと、一緒に料理もしたいって言ってたから]

優斗[か、母さんには言ったのか…?]

蒼[三咲には、まだ言ってない]

優斗[……ちょ、ちょっと蒼俺の部屋に行こう…]

蒼[うん]


優斗は蒼を自分部屋へ連れていった。

優斗は動揺していた。


優斗[(何を俺は動揺してるんだ…??母さんが隠さなくて良いって言ってたし………だから、別に良いわけで…でも、一緒に住んでる事が由衣にバレたら………。由衣にバレたら?何なんだ?何で俺はそんな事気にしてるんだ?幼馴染みだから?……いや!違うそうだ!由衣にバレたら一樹にバレる…あいつにバレたら厄介なことになる…一樹のやつ…蒼のこと相当気に入ってるからな…まじでバレたらどうなるか…)]


優斗[蒼、とにかく…今回は一緒に住んでることを由衣にバレないようにしようと思う。]

蒼[何で?]

優斗[…………とにかく!いや、取り敢えず……面倒になるかもしれないってことだからです!]

蒼[そっか…うん、わかった]

優斗[ちょっと待ってろ]


優斗が急いでリビングへ行き、そして、部屋へ戻ってきた。


優斗[今、母さんの予定表見てきたら、日曜日は夜にしか帰ってこないから、その辺は大丈夫だ!そして、幸いなことに由衣は俺が中学の時に引っ越したから、俺の新しい家は分かっていない。あとは、俺は由衣がこの家に来ている間、漫画喫茶にでも行ってるから、由衣が帰ったら俺に連絡くれ!いいな!?]

蒼[う、うん、わかった]

優斗[(あとは……表札をバレないように細工しておくか…)]


念入りな計画を立てる優斗であった。


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