第8話 原因はあんた


ある日の日曜日、リビングで優斗はソファーに横になりながらスマホゲームをしていた。母はテーブルでパソコンをいじりながら仕事をしていた。そして、ふと母が優斗に言った。


母[蒼ちゃんってさーどうして、道覚えられないんだろうね?]

優斗[んーー…わからん…何でだろな?まぁ母さんが言ってた通り、新しいこと覚えるの苦手だからじゃね?]

母[いやーでも、そうは言ったけど…他のことは少しずつ覚えられてるでしょ?学校のこととか~……んーーーーー…そうだ!今日、皆、休みだし一緒に学校まで行ってあげて覚えるの手伝ってあげない?]


優斗は少しダルそうに。


優斗[え~~…まじ…]

母[だって覚えてもらったら、あんたも楽になるでしょ?]

優斗[…まぁそれはそーだけど…]

母[よし!そーと決まれば!]



母はパソコンをパタリと閉じて蒼の部屋へ行った。そして、蒼の部屋の戸をノックする。


母[蒼ちゃ~ん!ちょっといい?]


蒼が戸を、開け部屋から出てきた。


蒼[三咲、どーしたの?]

母[蒼ちゃん今暇?]

蒼[うん、料理の本観てただけだから]

母[そっか~ならさ、今から学校まで行こ!]

蒼[学校に行くの?]

母[そ!学校までの道を覚えに行くの!あたしと優斗も一緒に行くから!ね?]

蒼[うん、わかった]


そうして、三人で学校までの道のりを歩いて、蒼に覚えてもらうこととなった。母は蒼にアドバイスをしながら歩き出す。


母[あそこに、あれがあるでしょ~で、この看板が見えたら…]


優斗は少し眠そうにあくびをしながら、二人の後ろを着いていく。そんな優斗を母はチラッと見て。


母[優斗!ちょっと~あんたも少しは協力してあげなさいよ!]

優斗[協力って…母さんが説明してるんだから、俺が余計なこと言ったら、蒼が混乱するんじゃね?]

母[ぅッ……まぁ……一理ある……]


たま~に、優斗の言うことが正論だったりするので、母は返せなくなることがある。そんな、やり取りを見て、蒼が少し笑った。優斗も笑った蒼を見て少し嬉しそうだった。


母[ま、まぁいいわ、蒼ちゃん続きね、行こ]


そうこうしているうちに学校へ着いた。


母[どうかな~?蒼ちゃん少しは覚えれたかな?]

蒼[うん、三咲の説明すごく分かりやすかった]

母[本当!?良かった~じゃぁ帰り道は蒼ちゃんが先導して帰ってみてね、間違ってたら教えるから]

蒼[うん!わかった]



蒼は覚束ないながらも、なんと…一回で覚えて帰って来てしまった…。


母[蒼ちゃん!覚えれたじゃない!]


母は驚いていた。優斗もキョトンとした表情で驚いていた。


蒼[うん!覚えれた!三咲の説明のおかげ!]


蒼は嬉しそうだった。


優斗[何でだ?なんで、そんな急に覚えれたんだ?毎日俺と学校行くときは覚えれなかったのに…]

母[あんた今まで、蒼ちゃんにどうやって覚えさせようとしてたの?]

優斗[どうやってって…普通毎日ただ歩いてれば覚えるでしょ?]

母[だから、蒼ちゃんは新しいこと覚えるの苦手なんだから口で説明してあげなきゃダメじゃない!]

優斗[最初に…説明って言うか、ちゃんと俺から目を離すなよっては…言ったけど]

母[俺から目を離すな?どんな説明よ!そもそも、目を離すなは!あ・ん・た・が!でしょ!]


母は呆れてため息を着いた…。


母[え?てことは…もしかして、蒼ちゃん優斗にそれ言われて…ずっと優斗から目を離さないで歩いてた…の?]

蒼[うん…優斗が目を離すなって、言ってたからずっと優斗を見てた]


母またまた、ため息…。


母[蒼ちゃん…ホントにごめんね~~このバカ!がそんなこと言ったばっかりに…優斗、蒼ちゃんは真面目なの、そんなこと言ったら蒼ちゃんあんただけしか見ないでしょ…てことは、道も覚えられるわけないでしょ!道を覚えられなかった原因はあんたよ!ホント気が利かないんだから…]


優斗は少し気まずそうに…


優斗[ま、まぁ、道覚えられたわけだし!良かったじゃん!はは…]

母[………]

優斗[…はは]

母[…そうね……でも、まぁこれで蒼ちゃん1人で登下校出来るね!優斗も用済みね(笑)]

優斗(あ……そうか……てことは…もう、蒼は俺と一緒じゃなくてもいいのか…)


優斗の心の中で少し寂しさが出てくる。そう感じていた時。蒼が。


蒼[でも…あたしは優斗と一緒に行きたい、優斗と一緒に帰ってきたい]


蒼がそう笑顔で話す。


母[お、そっか~こんなバカで無愛想なヤツでも一緒に居たいって思ってくれるんだね!蒼ちゃんは優しいね~良かったじゃない?優斗(笑)]


母が少し、からかったように優斗に振る。


優斗[バッカじゃねーの?同じ学校に行ってるんだし、べ、別に…]


内心、優斗は蒼が、そう言ってくれたことに嬉しさと、ホッとしていた自分の心に戸惑っていた。


蒼[優斗、明日からもヨロシクね!]


優斗、少し恥ずかしそうに。


優斗[お、おう、別にいいけど…]


母はそのやり取りを見て、後ろで嬉しそうにニヤニヤしていた。


その日の夜。母が優斗に。


母[ねぇ、母さん勘違いしてたかも、蒼ちゃんって覚えるの苦手なんじゃなくて、説明不足だったから覚えられなかったのかも……あー…でもなぁ…最初に適性検査した時は、ここまで理解出来てなかったと思うの……んーー…やっぱり学校へ通うようになってから、それが刺激になって蒼ちゃん成長出来たのかな?うーん…優斗学校で、蒼ちゃんと話してあげてる?]

優斗[…いや、ほとんど話しはしてないな]

母[え?なんで?]

優斗[なんでって…俺らのことバレないように、なるべく話さないようにしてるから]

母[別にバレてもいいでしょ? ]

優斗[へ…?だって母さん最初にバレないようにって]

母[それは、蒼ちゃんが父さんだったってことをだよ、蒼ちゃんと一緒に暮らしてることとか、バレたっていいわよ、学校にも、親戚の子をウチから学校へ通わせることになったって、上手く理由付けてあるし]

優斗[そうなの?…いや、でも、クラスの奴らに一緒に暮らしてるのとかバレるのは…俺がマズイと言いますか…(とくに一樹になんてバレたら俺が殺される…)]

母[そんなこと言ってたら、蒼ちゃんのためにならないわよ、あんたが話してあげることで成長出来てる面もあるんだから、あんたから話してあげるの恥ずかしいなら、母さんが蒼ちゃんに言っててあげようか?]

優斗[いや!わかったから…俺から話し掛けるようにするよ…(蒼に学校で余計なこと言われるとマズイしな…)]

母[そぉじゃヨロシクね!]


母は嬉しそうにニコッと笑った。


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