第7話 心境の変化
それから2ヶ月ほど経った。相変わらず朝は同じように蒼とは距離を置きながらの登校、帰りも二人で帰宅……2ヶ月経つ……なのに……相変わらず蒼は道を覚えられず仕舞いだからだ。そんな日々が続き優斗は苛立っていた…。
優斗(はぁ~今日もあいつを家まで連れて帰んなきゃいけねーのかよ…)
放課後
一樹[優斗!さすがに今日は何もねーよな?久しぶりにゲーセン行こうぜ!]
優斗[…わりッ一樹今日も無理だわ…]
一樹[はぁ?お前何かやってんの?さすがにゲーム好きなお前がそんなに断るなんて、おかしいだろ?]
優斗[…わりーとにかく絶対近いうちに行くから]
優斗が両手を合わせて一樹に謝る。
一樹[……最近ノリわりーな…まぁ…いいわ。じゃーな]
一樹が不機嫌そうに帰っていった。
優斗(はぁー……俺だって…行きてーよ)
蒼が待ってる校門へ行く優斗。
蒼[優斗、帰ろ]
優斗[………]
蒼[…優斗?]
優斗が今まで我慢してきたモノが切れた…。
優斗[……あのさ!いい加減!道!覚えられねーのかよ!?毎日、毎日、毎日!同じ道通ってんのに!さすがに覚えろよ!おまえが道を覚えないせいで、帰りにゲーセンだって行けねーし!友達にはノリわりーとか言われるし!いい加減迷惑してんだよ!何にも出来ねーくせに!朝だって俺が起きるの待ってるだけで、ただ座ってるだけだしよ!…はぁ…はぁ…はぁ…]
蒼は…申し訳なさそうに下を向き、持っていたカバン抱えギュッとする…。
そして、蒼が小さな声で優斗に言った。
蒼[優斗…ごめんね………あたし…1人で帰れるから…もう、道…覚えたから大丈夫だから…優斗…友達とゲーセン行ってきて……]
優斗は苛立ちが収まらずそのまま…
優斗[あぁ!行くよ!じゃーな!]
と言って、蒼を1人置きそのまま歩いて行った。
優斗、一樹に電話をする。
優斗[あ、一樹?俺やっぱゲーセン行けるわ!今から向かおうぜ!うん!うん!いつものトコ、OKじゃまた!]
ゲーセンで優斗と一樹は…
一樹[いやー!久しぶりに楽しかったな~]
優斗[おう!まじゲーム最高!!]
一樹[うお!?てか時間ヤバくね?もう、こんな時間かよ(笑)さすがに母ちゃんに怒られるわ(笑)じゃ~またな~優斗]
優斗[おーまたな~]
時刻は20時過ぎだった。
優斗帰宅する。
優斗[ただいま~]
母[おかえりなさい、随分遅かったわね?あれ?蒼ちゃんは?]
優斗[え?帰ってねーの?]
母[帰ってねーのって…一緒じゃなかったの!?だって蒼ちゃん道ちゃんと覚えられてないんでしょ?]
優斗[いや、だって本人が覚えたからって帰りに言ってたし…だったらいいやと思って…]
母[そうだ!蒼ちゃんに電話!]
急いで母が蒼へ電話を掛ける。…が
ヴーッヴーッヴーッ
リビングのテーブルで蒼のスマホが鳴る。
母[蒼ちゃん…!スマホ忘れて行ったんだわ…!どうしよう…!]
心配して動揺する母。
優斗[どーせそのうち帰ってくるでしょ]
母[優斗!!蒼ちゃんは女の子よ!こんな遅い時間に何があるか分からないじゃない!そもそも!何で一緒に帰って来てあげなかったの!?]
うつ向いて優斗が…
優斗[…………俺だって]
母[俺だって何?]
優斗[俺だってな!帰りに友達と遊んだりしてーよ!それの何が悪いんだよ!だいたい!あいつが道を覚えねーのが悪いんじゃん!だから頭にきたから言ってやったんだよ!毎日、毎日通ってる道も覚えねーし、何にも出来ねーくせに!朝だって、俺の起きるのをただ待ってるだけで、道分かんねーから待ってるんだろ?いい加減イライラも限界だよ!]
母が、おもいきり優斗をビンタした。
優斗[なにすんだよ!]
母が涙を流しながら…優斗に言った。
母[蒼ちゃんはね!何にも出来ない子なんかじゃない!蒼ちゃんはね!あんたの知らない所で一生懸命努力してる子なの!知ってた!?あんたが、毎朝ギリギリまで寝てる間、朝早くから起きて、あんたの朝ごはんと!お昼のお弁当を!毎日、毎日、作ってたのは蒼ちゃんなんだからね!毎日だと大変だから、母さんが代わろうか?って言っても、あたしは優斗にご飯作る事ぐらいしか出来ないからって…道…覚えられなくて、毎日優斗に迷惑掛けてるからって……。蒼ちゃんは毎日、無愛想に行き帰りを、ただ連れていってくれるだけのあんたにも感謝してたんだよ……今日の帰りだって…道も覚えてないのにあんたに、気を使って覚えたって言ったに決まってるでしょ!そんなことも分からの!?]
優斗[………]
母[………]
母は涙をふき。
母[………蒼ちゃん探してくる]
母が蒼を探しに家を出る。
優斗[……………]
母が必死に蒼の名前を呼んで探す。
母[蒼ちゃーん!蒼ちゃーん!]
探しても探しても蒼は見つからない。
優斗[ハァッハァッハァッ母さん!蒼は!?]
優斗が探しに来た。
母[…優斗…まだ、見つからない…]
優斗[反対方向…手分けして探そう!]
母[えぇわかったわ!]
二人は別々に別れ探し始めた。が、探しても探しても蒼は見つからなく…時折聞こえる救急車の音が気にかかった…。
優斗[ハァッハァッハァッどこだ!?くそッ蒼ーー!蒼ーー!]
母[蒼ちゃーん!蒼ちゃーん!]
優斗[ハァッハァッハァッ………もしかして…]
優斗は学校の方へと走って行った。
優斗[蒼ーー!蒼ーー!蒼ーー!ハァッハァッハァッ]
蒼[………優斗?]
優斗[蒼ーー!]
蒼[優斗!!]
優斗[ハァッハァッハァッやっぱりここに…ハァッ居たのかハァッハァッ]
蒼は校門の前でしゃがんでいた…1人ずっとその場に居たのだ。
普段あまり表情を変えない蒼が…泣いた…泣きながら…
蒼[優斗!ごめんなさい!ぅ…あたし…道…覚えたって言ったのに…本当はまだ、覚えてなくて…でも、優斗に迷惑掛けたくなくて…それで…]
その瞬間…気持ちより先に身体が動いた…優斗が蒼を抱き締めた…。
恥ずかしそうに優斗がボソッと言った
優斗[…俺も…悪かった…ごめん]
蒼は抱き締められた優斗の胸で、泣きながら小さくうなずいた。
優斗[蒼、帰るぞ…]
蒼[…うん]
携帯を見ながら優斗が
優斗[母さんに電話しなきゃな、心配してるからな…]
片方の手にスマホ、もう片方の手には蒼の手を引いていた。
優斗[もしもし、母さん、蒼見つけたから、うん、今から帰る、うん、じゃぁ]
蒼[優斗…あたしの名前初めて呼んでくれた…]
優斗は焦り照れながら。
優斗[いや、そ、そりゃー名前呼ばなきゃ探せねーだろ!]
ふと、手を繋いだ蒼の方を見ると、初めて蒼の嬉しそうに微笑んだ顔を見た。
その瞬間、優斗の胸の鼓動が早くなり、今まで蒼へ感じたことが無い胸の異変を感じていた…。
そして、二人は家に戻ってきた。
家の戸を開けると…。
母[蒼ちゃん!]
母が蒼を泣きながら抱き締めた!
母[ごめんね!ごめんね!]
優斗[……(苦笑)]
そして、蒼が寝た後、少し母と話をした。
母[さっきね蒼ちゃんがあんたのお弁当作ってるって話したでしょ?でね、言ってなかった事があるの。あんたがお弁当食べた後、嫌いなもの残してくるでしょ?それを蒼ちゃんはちゃんと見てて覚えてたの。それで、あんたが食べれるように工夫して入れていたの。その後にお弁当見たら残さず食べてきてたの(笑)凄いわよね~それに、あんたが飽きないように新しい食材もよく入れてたわ。蒼ちゃんは本当に良い子よ。もっとちゃんと見てあげてね!
母は優斗に微笑み掛けた。
優斗[……わかった]
次の日の朝、優斗はいつものように、したくしてリビングへ行った。
蒼がいつものように、座って待っていた。
蒼[優斗、おはよう]
優斗[お、おはよう…蒼]
少し恥ずかしそうに、名前を呼んで返した優斗。すると蒼が嬉しそうに微笑んだ。
優斗の胸の、鼓動が早くなるのをまた、感じた時だった…。優斗にとって昨日の全ての出来事が心境の変化を確実にもたらしていた。
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