第31話 殺戮後の世界

――では、物語の導入から始めましょう。

 あなたたちがいるのは、……いまから十年前、魔神フォルターによる大量虐殺が行われた世界です。

 魔神の力によりヒューマンは絶滅し、現在ではその穴を埋めるように、その他の種族の活動が活発になってきていました。

 そんな最中、女神の導きにより”異世界転移者”と呼ばれる人々が世界各地に現れるようになっています。


A「ほうほう。……ちなみにその”異世界転移者”とやらは要するに、我々の世界の住人、という考え方でよろしくて?」


――そうですね。おおよそその発想で間違いありません。


A「言葉は? 異世界なら、言語も違うはずでは?」


――一応、それに関する設定は用意されています。

 とはいえまあ今回は、「細かいことは気にしなくて大丈夫」でいいでしょう。”転移者”たちは、自由に異世界の言語を使うことができます。


A「……ふむ。あと気になるのは……喧嘩慣れしていない現代人が、剣と魔法の世界に迷い込んだら……すぐに死んじゃうのではないのでしょうか。その辺は大丈夫なのですか?」


――ところが、そうでもありません。

 ”転移者”たちは、かつての生活の知識と経験を活かして、この世界でも粘り強く生きているようです。


B「”転移者”って、この世界ではたくさんいるんですよね?」


――そうですね。大きな街を歩けば数十人規模の”転移者”グループがいる程度にはたくさんいます。


B「なるほど。それほどオンリーワンの存在やない、っちゅうことですね」


――その通りです。とはいえ、珍しいことには変わりないでしょうが……。

 さて。そんな情勢下において、シュリヒトと超勇者正義は、つい最近、冒険者ギルドに登録したばかりの新米冒険者です。

 二人が今いるのは、”ミッテ”という港町でした。

 隙間なく建物がひしめき合っているその町の一角に、”丸焼き亭”と呼ばれる、”冒険者”や船乗りたちが出入りする酒場が存在しています。


A「”丸焼き亭”……ああ、以前にも来たことがある、ここ」


――そうですね。”ファンタジー編”の冒険はこの、”丸焼き亭”から始まることが多いです。


A「ふーん」


――そんな”丸焼き亭”で、シュリヒトと正義は、のんびり昼食を食べていました。

 ここで暇そうにしていると、依頼の方が向こうから舞い込んでくる……そんな情報を耳にしたためです。


A「らくちん!」

B「……まあ要するに、ウチらは仕事を選り好みできる身分やないっちゅーこっちゃな」


――そうですね。Bさんの言うとおりです。

 さて、そんな時です。【シークレットダイス:??】 ……おや。

 真っ昼間から酔っ払っている船乗りの一人が、こんなことを言い出したようです。


船乗り(GM)「おい、そこの新入り冒険者! 暇してるなら、どうだ? 俺といっちょう、飲み比べしないか?」


――掛け金は100ゴールド。勝てば200ゴールドもらえます。足りない分は、今回の報酬から差し引かれてしまうことにしましょう。

 また、勝負に負けると、”体力”にペナルティのダメージを受けてしまいます。


A「ふーむ。……ちなみに、参照するステータスは?」


――今回の場合は、”体力”ですね。

 判定は”難しい”。ステータス合計が15以上で成功とします。


A「成功率は……私もBちゃんも変わらないか」

B「ほな、うちがやる。男の子キャラやし!」

A「おっけー、よろしく!」

B「でも正義、二十歳になったばかりやからなあ。お酒にはまだ慣れてへんかも。……さぁて、どうかな? 【ダイスロール:10+7】 はい、成功!」


――おみごと。フラグを打ち払いましたね。

 では正義は、屈強な船乗りとの飲み比べに、あっさりと勝って見せました。


正義(B)「……ふん。出直してくることやな」


――しかも勝負に勝ったことにより、正義の精神力を少し回復させましょう。【1D6-3】でどうぞ。


B「おおきに。【ダイスロール:4】。……ほな、1だけ回復します」

A「幸先がいいですねえ!」


――……という感じで二人が過ごしていると、店の女主人にして、”冒険者ギルド”の依頼の仲介人でもあるホビット族、クナイペが声をかけてきます。


クナイペ(GM)「やあ、二人とも。冒険者成り立てのあんたらに、さっそく仕事を依頼してもいいかい?」

シュリヒト(A)「おっけ。わたし、いつでも、がんばる。まかせて。だいじょぶ、にゃ」

クナイペ「……えっ。……あ、ああ」

シュリヒト「どうした?」

クナイペ「ああいや、あんた、そういう感じのしゃべり方なんだ、と思って」

正義「またまたぁ。クナ姐さんったら、今さらやないですか。シュリヒトはずっとこうですよ」

クナイペ「あ、そっか。なるほどね」

シュリヒト「それで? けっきょく、どーいう、依頼にゃん?」


――それは、新米冒険者にぴったりの、簡単な仕事……とあるもめ事の解決を依頼したものでした。

 ここから馬車で三日ほど東に進んだ場所に、オスト村というところがあります。

 そのオスト村で最近、”異世界転移者”が現れたようです。

 普段ならそうした場合、この世界の”転移者”グループに連絡を取って保護をお願いするのが常なのですが、その”転移者”はグループの保護を断り、オスト村でもめ事を起こす始末だとか。


クナイペ「すっかり困り果てたオスト村村長からの依頼だ。”転移者”の問題は、”転移者”に解決してもらうに限る。あんたらにぴったりの仕事だろ?」

正義「……姐さんのいうとおりやね。同じ”転移者”として、不埒な同胞を放っておく訳にはいかん」

クナイペ「そんじゃーいっちょう、やるかにゃ」


――では、二人は依頼を受ける、ということでよろしいですね。


A「ああいや、ちょいまち! その前に、報酬の確認を!」


――ああ、そうでしたね。報酬は後払いで1000G。馬車代と食事代、それと宿泊代は必要経費として落としてもらって大丈夫だそうです。


シュリヒト「おめー、アシモト、みてねーよにゃ?」

クナイペ「見てない、見てない。相場だよ」


――実際、彼女の言葉通りですね。

 それにこれは、この店に出入りする客ならみんな知っていることですが、クナイペは元冒険者で、後輩の面倒見が良いことで有名です。


シュリヒト「おーけー、のった!」

クナイペ「よし。それじゃあ頼んだよ。酒場の外に、ギルド管理下にある辻馬車が待ってる。準備ができ次第、出発しておくれ」

シュリヒト「りょーかーい!

正義「ちなみに、準備は必要ない。俺たち、いつでも冒険に出られるようにしてたからね」

クナイペ「そうかい。そりゃーまた、優秀なこって」


――それでは、二人は依頼書を握りしめ、移動を始めることでしょう。


正義「ついに、ぼくたちの冒険が始まる! ……ってとこやね」

シュレヒト「わたし、ヒューマン、よみがえらせる!」

正義「ぼくは、元の世界へ帰還する」

シュレヒト「それまで、なかよくして、にゃ!」

正義「こちらこそ。よろしゅうにな」


――そうして二人は、馬車に揺られつつ、オスト村への道を行くのでした。


【To Be Continued】

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