第16話 一時的狂気の発症

A「ではまず、狂気値の加算から。【ダイスロール:4】 2点ですね」


――はい。


黒男(A)「くそっ、まともなやつじゃないとは思ってたけど。いったいここ、どういうところなんだ?」


――ついてきている少女は、困ったように首を傾げるばかりです。


黒男「だがこうなったからには、なんとしてもこの場所を抜け出してやる……! もちろん、きみも一緒にね!」


――と、黒男が善人アピールをしたところ、少女は嬉しそうに寄り添ってくるでしょう。


A「よーし。ばっちり好感度を稼いだところで、まだ調べていないエレベーターと非常階段口を調べます」


――承知しました。

 エレベーターは電気が通じていないらしく、うんともすんともいいません。

 非常階段口は、鍵できっちりと施錠されているようです。


A「ほな、さっき”魔術師”からもらった鍵をかちゃり」


――無事、扉は開きます。


A「ではでは、レッツ下の階へ!」


――黒男が下の階に向かったところ……、2~1階間の階段が、完全に塞がれていることがわかるでしょう。


A「塞がれてるって、どういう風に?」


――不要な棚や、椅子などによってです。


A「それくらいなら、頑張れば退かせるのでは?」


――退かすことができないくらい、たくさん積まれているようです。


A「でも、一回積み上げられたものなら、人間の手で退かすことができるのでは? せっかくだし、”筋力”で判定を……」


――各棚はそれぞれ溶接されていて、「絶対にこの先は通さないぞ」という強い意志を感じます。


A「でも、一応判定します」


――(さすがの頑固さだ)

 いいでしょう。あなたは奇跡を起こす人。

 ”筋力”判定。難易度は”ほぼ不可能”。クリティカルで成功です。


A「よしきた。……【ダイスロール:2】 ……いええええええええいやったあああああああああああ!」


――声の感じで誤魔化さないでください。ファンブルですね。


A「……はい」


――では、黒男はがんばって障害物を取り除こうとしましたが、倒れてきた棚に下敷きになってしまいます。体力に1点のダメージ。


A「あ、死ぬ死ぬ。あと2点で死ぬ」


――それでは、虚弱体質の黒男くんは、次にどうしますか。


A「えっと。塞がれてるのが二階から下ということは、二階には行けるんですよね」


――はい。


A「では、そうします」


――それでは黒男は、二階へ通じる扉を押し開けます。

 重みのある鉄扉がゆっくりと開くと、まず、つんと血の臭いが鼻につきました。

 恐る恐る室内に目を向けると、……ああ、なんということでしょう。そこにあったのは、死体の山でした!


A「まーた死体かぁ。このへんよく落ちてるなあ」


――死体は折り重なるような格好で、待合室の中央に倒れ伏しています。

 死因は恐らく、失血死。というかそれ以外に考えようがありません。

 彼らは皆、喉を切られて死んでいるのですから。

 こんな恐ろしい光景を目の当たりにしたあなたは、【1D6-1】の狂気値を加算してください。


A「はいはい。【ダイスロール:6】。5点加算します。……それで、――」


――あ、ちょっと待って下さい。その前にあなた、十点以上の狂気値を獲得しましたね。


A「はあ」


――では黒男は、精神的苦痛が積み重なった結果、”一時的狂気”が発動してしまいます。


A「なにそれー」


――まず、【1D6えんぴつ1本】を二回、振っていただきます。


A「【ダイスロール:3】、【ダイスロール:5】……はい、振りました」


――最初のロールは、

 『狂気の時間』

  次のロールは、

 『狂気の種類』

  を現します。

  それでは、楽しい楽しい、”一時的狂気”の発表タイムですね。

 

A「言うほどたのしいか? それ」


――黒男に発現したのは……『5)幼児退行』です。

 黒男はこれを、”3回ダイスを振るまで”続けていただきましょう。


A「ほう……。いいでしょう! あたしは、ロールプレイの天才……を、自称するもの! どんなことでも、やってみせますとも!」


――では、ロールプレイを再開して下さい。


黒男「ふにゃああああああああああああああ。もうヤーなの! くろちゃん元気なくなっちゃのお!」

仮面の少女(GM)「!?」

黒男「だってこんなのありえにゃいんだもん! ぷりぷり! くろちゃんもう、おうちかえるから!」


――仮面の少女は、黒男の変貌にびっくりしてますね。


黒男「まーま、まーま! ぼくちゃん、おうちにかえりたいの! だからおうちかえしてほしいのー!」


――いい歳した男がだだをこねて、自分より一回り小さな女の子に絡んでいます。


黒男「まーま、はぁー! ぼくちんつれて、おそとにいくの! ぶーぶー!」


――では、少女は困惑して、黒男からすこし距離を取るでしょう。


A「ちなみにこれ、どっかで行為判定しないと永遠にこのまま?」


――はい。このままです。


黒男「で、で、でもぉ。……ぼくちゃんもちょっぴり元気ださなきゃだからー。……ちょっとあちこち、調べてみようかしらん?」


――では黒男は、最後の一欠片の理性で、探索を再開するでしょう。


A「うんと、うんとぉ……それじゃ、死体を調べよっかな?」


――あなたが死体の山を調べると、以下のようなことがわかりました。

 死体の数は、全部で8人。

 彼らはそれぞれ、あなたたちと同じ入院着を身に纏っていて、

 聖職者と思しき、気品のある女の仮面。

 車輪を模したと思われる仮面。

 王冠を被った初老の男の仮面。

 十字架の帽子を被った男の仮面。

 鉄兜を被った精悍な男の仮面。

 王冠を被った女の仮面。

 口を開けたライオンを模した仮面。

 白髭生やした、思慮深そうな老人の仮面。

 ……を、顔に嵌めています。


A「車輪……老人……ライオン……となると……ふむ」


――死体を調べてわかったのは、その程度のことでしょうか。


A「ちなみにこの死体は、自殺ですか、他殺ですか?」


――では、”知力”判定。難易度は”すごく難しい”。出目5以上で成功します


A「【ダイスロール:4】 ちくちょー!」


――それでは、あなたには死因がわかりませんでした。自分で首を切ったのかも知れないし、何者かにそのように見せかけられたのかも。いずれにせよ、凶器は見つかっていません。


黒男「くちょぉ。……どーちたらいいんだ」


――いったん、ここで調べられそうな場所を挙げておきましょうか。

 死体(探索済み)

 向かって右側、東側廊下へ続く扉。

 向かって左側、西側廊下へ続く扉。

 電気の通じていないエレベーター。

 これくらいですね。


A「部屋の間取りは、上の階と変わらない?」


――そうですね。ほとんど変わりません。


A「なるほど。……それではまず、右の廊下から調べましゅので」


――調べ……ましゅ?


A「……ごほん。調べますので。……いちいち引っかからないでください」


――承知いたしました。


【To Be Continued】

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