第15話 真実のクイズ

A「では黒男は、部屋をいったん出た後、”正義”の仮面を外してから戻ってきます」


――いいでしょう。

 すると”正義”の仮面は、ぱかんと真っ二つに壊れてしまいますね。


A「ありゃ。これもう、かぶれそうにない?」


――はい。


A「もう使い道がないってことかな? ……わかんないけど、一応もっときましょう。そのまま、待合室へ戻ります」


――承知しました。


A「仮面の男の様子はどうですか?」


――なんだか少し、気まずそうにしていますね。


A「ほうほう。……それでは! さっそく彼に、新たなクイズを要求するとしましょーか!」


――いいでしょう。

 それでは仮面の男は、先ほどと同じように、こんなクイズを出してきます。


仮面の男「答えは簡単だよ。死んだ偉人と生ける愚者。敬意を払うべきなのはどちらか?」

黒男「……………………は?」

仮面の男「制限時間は、5秒! チッチッチッチッチッチ!」

黒男「あ、あ、生ける愚者!」

仮面の男「ブブー!」


――仮面の男は、へらへらと笑っていますね。


黒男「じゃ、次!」

仮面の男「答えは難しくない。イチゴが五つ載ったホールケーキを正確に三等分する方法は?」

黒男「み、ミキサーにかけてみんなにくばる!」

仮面の男「ぶぶー!」

黒男「まだまだ!」

仮面の男「答えは大したことがない。一ドル札を公平に四等分するにはどうすればいい? ちなみに小銭は一切持ち合わせがない」

黒男「コンビニで両替しろよ!」

仮面の男「ぶぶー!」


――仮面の男は遂に、高笑いを始めました。


A「はぁああああああああああああああ。キレそう。……何か条件が間違っていたのかな。それとも、”正義”の仮面をつけたままクイズに挑めば良かったのかしら?」


――では、時短のためGMからヒントを出させてもらいましょう。

 そうしたところで、まったく意味はありません。

 あくまでこの男は、”選ばれし者”にクイズを出したがっています。”正義”の仮面を付けた状態でクイズを求めても、無意味でしょう。


A「ふぅううううううううううううううううむ。……ねえ、GM。黒男の天才的な”知力”で、なにか閃きを得られませんか?」


――ほう。では、いいでしょう。

 難易度は”不可能””。出目8以上で成功します。


A「それくらいなら……期待値をちょっぴり上回る程度! どうだ! 【ダイスロール:7】 ああああああああ、1足りないタイプの妖怪!」


――では、黒男は何にも思いつきませんね。

 思ったよりもこいつ、アホなのかもしれない。


黒男「うーんうーん。……そんじゃ、もう一つだけクイズチャレンジ!」

仮面の男「答えは、深く考える必要がない。うどんとそば、どっちが人間の幸福度を上昇させる食べ物か?」

黒男「おそば! おいしいから!」

仮面の男「ブブー!」


――うどんもいいとおもうけど……。


A「これ、GMの気に入る答えをする必要があるってコト?」


――いいえ。さすがにそこまで理不尽な真似はしませんね。


A「フウイヌム……」


――(なんか、かつて聞いたことがないタイプのため息をつき始めたな)

 ……いいでしょう。では仮面の少女が、ヒントを……しゃべることをできないので、そうですね。身振り手振りで、何かを伝えようとします。それを黒男が理解できたかどうか、”五感”で判定をお願いします。難易度は、”超難しい”で。


A「ふわぁあい。……そんじゃ、今度こそ成功させたいので、《超集中》スキルを使います。


――では、難易度が”簡単”に変わったので、ファンブル以外なら成功です。


A「ほいほい。【ダイスロール:7】 今度は成功~」


――いいでしょう。それではあなたは、少女のジェスチャーから、以下のような内容を読み取ります。

 『いまのクイズは、さっき出されたクイズと明らかに変わっているところがある。きっとそこに答えがある』と。


A「え? その情報を、ジェスチャーで? 少女はパントマイマーですか?」


――なんか、いろいろと頑張ったのでしょう。あるいは黒男の察しが良かったとか。


A「それにしても、身振り手振りだけで……? いったいどういう感じ……?」


――まあ、いいじゃないか、それは!

 とにかくヒントは、そういう内容だったんです。


A「いまのクイズと、さっきのクイズ。……違い……? ……ふーむ…………」


――ちなみに最終手段として、あなたは彼に暴力を振るうこともできますよ。


A「それは、だめ! ぜったい解くのー!」


――では、待ちましょう。


A「(席を立ち、お菓子をつまみ、しばらくうろうろする)」


――………………。


A「………………」


――………………。


A「………………」


――ちょっとコンビニ行ってきていい?


A「……あ! そーだ、わかった!」


――ほほう?


黒男「おい、仮面の男! クイズをだせ!」

仮面の男「では……。答えは簡単だ。犬と猫、真に優れたペットはどちらか?」

黒男「わんこ!」


――(ぜんぜんわかってない!)


黒男「……と、言うとでも思ったか? 答えは『簡単』だ! そうだろ? あんた、さっきから必ず『答えは○○だ』って前置きの後、クイズを出すようにしてた! あとの問題は無関係で、本当はその『○○』の部分が答えだったんだ!」

仮面の男「………………………………」

黒男「………………………………」

仮面の男「………………………………ファイナルアンサー?」

黒男「………………………………? え、あ、はい」


――(いかん、滑った。世代的に知らないネタだったか)


仮面の男「正解です!」

黒男「……よぉーし!」


――すると仮面の男は、一つの鍵を、黒男に手渡すでしょう。


仮面の男「ほら。これが階段の鍵だ。これで先に進むと良いぞ」

黒男「なあ、あんた。……あんた結局、何者なんだい?」

仮面の男「私は、”魔術師”だ」

黒男「魔術師?」

仮面の男「そうとも。それがきみにくれてやれる、唯一のヒントだ。がんばりたまえ」

黒男「がんばる? ……ええっと、何をどう、がんばれというのか……。そもそも、ここはどこだ? だれがぼくを、ここに攫ったんだ?」

仮面の男「それは、自分の目で確かめることだ」


――そういって男は懐から、小瓶を一つとりだし、ぐびりと飲み干しますね。


黒男「え?」

仮面の男「それと、礼を言っておく。ありがとう、”選ばれし者”。……これでもう、デタラメなクイズを考えずに済む」


――そして”魔術師”を名乗った男は、血を吐いてその場に倒れ、息絶えます。


黒男「ばッ……! バカヤロォオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


――その、あまりにも唐突な死を目の当たりにしたあなたは、【1D6-2点】の狂気値を加算してください。


A「なんてこと……」


――ええ。残酷な展開です。

 何を隠そう、現代編のシナリオはこの手のホラー展開が多くて……、


A「こいつ、仮面つけたまま、普通に毒を飲んだ! おかしい……妙だぞ……?」


――え。そっち?


A「これ、きっと何かのトリックの伏線ですよ」


――あ、ごめんなさい。たぶんそれ、口元に穴が開いてるとか、その程度の……、


A「へ? そんな伏線、ありました?」


――………………。

 なかった、ですね。

 (あとでシナリオ、書き直しておこう)


【To Be Continued】

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