第14話 正義

A「【ダイスロール:6】 これにマイナス2するから、4点の狂気度加算、と。結構大きいなあ」


――はい。ではあなたは、どうしますか?


黒男(A)「うーん。……たしかに凄惨な死体だけど、これをチェックしないわけにはいかないな。調べよう」


――では黒男は、”五感”で判定をお願いします。

 難易度は”普通”。出目3以上で成功します。


A「ほいほい。まあ、”五感”には自信があるので! 【ダイスロール:7】 はい、よゆー! 一生失敗しなーい!」


――はいはい。

 ではあなたは死体の懐に、くしゃくしゃに握りつぶされた遺書を発見するでしょう。遺書の内容は、以下のようなものでした。



『あらゆる不正と戦ってきたが、もう限界だ。

 この世界は不公平に満ちあふれている。

 こんなところで、私は生きていくことはできない。』



A「ふーむ。男言葉のクール系女子……あたしの好きなタイプのキャラ……おそらく美少女……もったいない……」


――さらに、彼女の手元にはあなたたちが付けているものに似た仮面が転がっています。


A「仮面。……フーム。その仮面をチェックします」


――では、落ちている仮面を調べます。

 表面は、精悍な顔つきをした女性のデザインでした。

 その裏面には、”正義”という二文字がうっすらと刻印されていますね。


A「ホホー。なるほど。じゃすてぃーす……。他に調べられそうなところは?」


――特にありません。


A「この仮面は、持っていってもいいですか?」


――もちろん、構いません。


A「では、それをゲットして次の場所へ向かいます」


――はい。

 では、8番の病室を出たあなたは、残りの9~12番病室を調べます。

 しかし、どの部屋もどうやら、全く開きそうにありませんね。


A「ではなんとなく、12番の扉をキック!」


――足が痛いだけでした。

 しかも、ついてきていた女の子がびっくりしていますね。


A「あー! ごめんごめん! よーしよしよし……って頭をなでなでします」


――少女は黙って、それを受け入れるでしょう。


A「ちょっぴり頭の匂いを嗅いでみたりしていい?」


――えっ。……ええと。……まあ。構いませんよ。

 たぶんなんだか、良い匂いがするでしょうね。


黒男「ふかふか。くんかくんか。ふかふか」


――言っておきますけどそれ、いい歳した男が出会ったばかりの女の子にしていることを考慮にいれておいてください。


A「では、満足したので離れます」


――少女は顔を真っ赤にしてますね。


A「えっ。仮面してるのに、顔色がわかるんですか?」


――あっ、そっか。忘れてた。


A「しっかりしてくださいよ、”造物主”さま?」


――ふふふっ。そうだね。

 ええとじゃあ、耳まで赤くなっているので照れていることがわかった、ってことにしようか。


A「はぁい。……では次に、……ここに散らばっていたっていう書類を、まとめてゲットしちゃいましょうか」


――承知いたしました。

 黒男と少女が協力して書類を集めたところ、その内容は以下のようなものです。



『患者7番:傍若無人。死亡。

 患者8番:不正を正す才能。自殺。

 患者9番:陰湿な性格。死亡。

 患者10番:■■■■(かすれていて読めない)

 患者11番:無気力。死亡。』



A「フ――――――ム。なんなんだろ、これ? まったくわけがわからん」


――情報は、以上です。


A「それ以外、調べられそうもないしなあ。……うーん? 他に出来そうなことは……」


――……………………。


A「……………………(チラチラ)」


――……………………。


A「……………………(チラリ) うーん。わかんないなぁー?」


――…………………ええと。

 そうですね。ではあなたは、”知力”判定をお願いします。

 難易度は、”難しい”で。出目3以上で成功。


A「はいはい、よゆー。【ダイスロール:2】 ……あっ。1の目が二つ……」


――おや。ファンブルですね。黒男はなんかボンヤリしていたので、強制失敗です。


黒男「ほぇー。ぼくって案外、頭が良くないのかも知れない」


――えーっと。それでは、ですね。

 あなたは気づきませんでしたが、仮面の少女の方は、何かに気づいたようです。


A「ほう」


――彼女は、あなたがいま持っている仮面のことが気になるようですね。


黒男「”正義”という文字が刻印された仮面。……きみ、これが気になるのかい?」

仮面の少女「……………(こくこく)」

黒男「わかった。もうちょっとよく調べてみよう」


――とはいえまあ、先ほど出した以上の情報はありません。


A「仮面の材質は?」


――ちょっとよくわかりません。最初に説明したように、『現実味がないほどに軽く、装着感がない』ようです。


A「自分のと比べて、違いはありますか?」


――……。

 ではあなたは、自分の仮面をよく調べる、ということですね?


A「あれ? 調べてなかったっけ」


――いえ。これも既出情報の繰り返しです。『仮面の表面はつるつるしていて凹凸もなく、手触りだけではどういうデザインかわかりません』。


A「ふーむ。それでは、自分の仮面の上に、”正義”の仮面を被ってみましょうか」


――ほう。

 ではその仮面は、ぴったりとあなたの仮面に嵌まることでしょう。


A「おや。ひょっとして、ビンゴ?」


――そうかも知れませんね。


黒男「……うん。この状態なら、何かが起こるかも知れない。さっそくあの嘘吐きクイズ野郎のところに行ってみよう!」


――はい。それでは黒男は、廊下を通って受付へ戻ります。

 すると仮面の男はギョッとして、こう言うでしょう。


仮面の男「お、おやおや! ”正義”さん! どうもお疲れ様です。本日はどうして、こんなところにいらっしゃるんで?」


――仮面の男はひどく恐縮しています。


A「ええと、……仮面を付けただけで、彼はすっかり騙されているんですか?」


――はい。


A「死んだ人、女性だって言ってましたよね? 黒男とその女性は、体格まで似ているんですか?」


――いいところに気づきましたね。男と女ですので、ぜんぜん似てはいません。

 しかし、どうも彼にとって、そのような些細なことは全く意味を持たないようです。


A「……声を発しても、”正義”の人だと思ったままってこと?」


――はい。


黒男「おい、インチキ野郎。あんたさっき、適当な内容のクイズを出したな?」

仮面の男「え、あ、はい……」

黒男「そういう真似はもう、金輪際止めるんだ。そしてぼくに協力しろ。いいな?」

仮面の男「そ、そ、そんなことを言われましてもぉ。自分にも、お役目がございますし」

黒男「お役目、とは?」

仮面の男「ここで、”選ばれし者”にクイズを出すんです。クイズに答えていただかないと、階段の鍵を渡すわけにはいかんのですよ」

黒男「え。おまえ、階段の鍵なんて持ってたの?」

仮面の男「はあ」


――えーっと。

 そうですね。手間を省きましょう。この待合室には、あなたが探索した廊下二つと、通電していないエレベーター、非常階段の扉があるのですが、このうち非常階段の扉は施錠されているようです。


黒男「……なるほど。ではこの後”選ばれし者”がやってくるが、今度は正しいクイズを出すんだぞ。いいな?」

仮面の男「へ、へ、へい!」


――仮面の男はへーこらと頭を下げていますねぇ。


A「うーん。なんだか良い気分。このままずーっと、卑屈にしてるGMのロールプレイを見ていても良いですけど……ここは、次のステップに移るとしましょっか!」


――はいはい。


【To Be Continued】

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