第5話 TRPG初心者、魔法を使う
――さて。出現したモンスターは、以下のような構成になっております。
ゴブリン(剣):4メートル
ゴブリンメイジ(杖):↑の後方、1メートル
ゴブリンリーダー(長剣):↑の後方、1メートル
また、通路は一本道になっており、手前のモンスターを撃退しないことには、奥のモンスターに攻撃することはできないでしょう。
A「なるほど。それはもちろん、敵側もそうなんですよね?」
――そうですね。
A「ってことは、一対一の勝負を繰り返す感じ?」
――いいえ。後衛にいるものは、遠距離攻撃が可能です。
A「つまり、シュバルツが前線にいる間、ヘルディンは弓や魔法攻撃が可能……ってコト?」
――その通りです。もちろん、その逆も可能ですけど。
シュバルツ(A)「よおし、ではここは……、行け、ヘルディン!」
ヘルディン(GM)「そうね、それじゃあここは、私が前線に……って、ええ? 私?」
シュバルツ「うん。だってきみの方が体力、高いでしょ」
ヘルディン「高いって言っても、ほんのちょっとだけよ? 数字でいうと、1とか。そんくらい」
シュバルツ「とにかく、よろしく! 俺は、せっかく買った魔法の巻物が使いたいんだ!」
ヘルディン「わ……わかったわ。がんばる」
――……ええと……。
そ、それでは戦闘を開始しましょう。
行動順は、ゴブリンリーダー(長剣)⇒ゴブリンメイジ(杖)⇒ヘルディン⇒シュバルツ⇒ゴブリン(剣)ですね。
シュバルツ「うわ、出遅れた」
ヘルディン「んもー! もし死んだら、化けて出るからね!」
――まず、ゴブリンリーダーのターン。
彼はにやにやと笑いながら、仲間に指示を出しています。
A「そんだけ?」
――はい。そんだけです。
A「ゴブリンリーダーは、近接武器しか持っていないってことか……」
――次に、ゴブリンメイジのターン。ゴブリンメイジは、ブツブツと口の中で何ごとか唱えたあと、”ファイア”の呪文を使用します。
A「あ! 先に使われた!」
――はい。
ゴブリンメイジは、杖の先に火球を産みだします。彼が杖を振るうと、猛烈な勢いで火球がヘルディンに襲いかかることでしょう。
”ファイア”の命中率は、100%です。
A「なるほど100%……ひゃくぱー!? つ、強すぎませんか!?」
――ただし、魔法のダメージ算出は複雑で、その場の状況・ダメージを受けた種族などによってダメージが変動します。
また、ダメージを受けたキャラクターは、精神力によって体力のダメージの肩代わりを選択することができます。
A「ええと、つまり……?」
――ゲームを通して、プレイヤーが覚えていってください。「こういう状況でこいう魔法を喰らうと、これくらいダメージを受けるんだな」、と。
A「なるほど。おーけーです」
――今回の場合は、……そうですね。”ファイア”の魔法を受けたヘルディンは、【2D6】のダメージ。【ダイスロール:11】。おや。これはわりと、大きい出目が……。
A「あ。お助けキャラ死んだわ、これ」
――まず、これに装甲の値を引きます。”レザー・アーマー”を装備しているヘルディンは8点ダメージ。精神力で受けて、その余りを体力にダメージ。
【ヘルディン:体力5⇒3 精神力6⇒0】
シュバルツ「いやいや、もっといい防具買っとけよ! せっかく前金もらったんだぞ!」
ヘルディン「う、うるさい! 身軽な方がいいと思ったの! っていうかそもそも私、後衛だし!」
――文句を言い合いつつ、ヘルディンのターン。
彼女は素早く、精神ポーションを飲み干します。【ダイスロール:5】。お、いい回復量。
【ヘルディン:精神力0⇒5】
A「ねえGM。ちなみにこれ、体力がなくなったら……」
――気絶します。それだけで死ぬことはありませんが、その戦闘の間は戦うことができなくなります。パーティ全員が気絶状態になると、ほとんどの場合、敵にとどめを刺されてしまうでしょう。
そうなったらキャラクター
A「デスヨネー」
――さて、シュバルツのターン。
A「それなら……こちらも、やってやりましょう。ヘルディンと立ち位置を入れ替えながら、ファイアの巻物を使います!」
――はい、了解です。
シュバルツが、ヘルディンを庇うようにその場に立ち塞がり、ファイアの巻物を広げると、そこから火の球が飛び出します。
火球は、敵先頭にいるゴブリンに襲いかかるでしょう。
ダメージは、【2D6】。【ダイスロール:5】。ゴブリンは即死です。
【シュバルツ:精神力3⇒2】
シュバルツ「なるほど。どうもこいつら、体力はほとんどないみたいだ! すぐに死ぬぞ!」
ヘルディン「それ、あんたもそうだってこと、気づいてる?」
――では、ターンが巡ってゴブリンリーダー。
彼は、手下を殺されて怒り狂っていますね。ゴブリンメイジと立ち位置を入れ替え、剣を振るいます。……命中!
シュバルツ「ぎゃふん」
――ダメージは【1D6+2】。……8。最大値ですね。
【シュバルツ:体力4⇒2】。
シュバルツ「あっ。死ぬ死ぬ。はんぶんくらい霊魂がでている」
――きみ、どんどんキャラ崩壊していってないか。
シュバルツ「だ、だが……俺は、死ぬその瞬間まで、誇り高く生きていく!」
――さらにゴブリンメイジのターン。
ゴブリンメイジは、攻撃対象をシュバルツに切り替えて、再び”ファイア”。
シュバルツ「もはやこれまでか」
――しかし、種族がヒューマンであるシュバルツに対しては、”ファイア”はそれほど有効ではない。【1D6】のダメージです。
A「1D6? それ、シュバルツの装甲の値以下では?」
――そうですね。どの出目がでてもダメージが入らないので、自動失敗です。
シュバルツは、盾で敵の攻撃を防ぎきることでしょう。
A「おやおやおやおや。舐めプか、こいつ?」
――どうやら、ゴブリンメイジはヒューマンと対峙するのが初めてだったようです。『やべえ、なにこいつ……』みたいな顔をしていますね。
シュバルツ「よし! 相手はこれ、かなりの馬鹿だ! ヘルディン! やってくれ!」
ヘルディン「任せて!」
――ヘルディンの攻撃です。まず命中判定。……あ。はずれ。
どうやらヘルディンは、慣れない室内戦のためか、攻撃を外してしまったようです。
シュバルツ「はい無能」
ヘルディン「……う、うるさーい!」
――シュバルツの攻撃。
A「ほいっと。【ダイスロール:3】」
――出目は悪いですが、成功ですね。恐るべき馬鹿力です。
シュバルツ「まあ、こんなもんよ。ダメージは……【ダイスロール:5】。くたばれー!」
――シュバルツがゴブリンリーダーに一撃!
しかしゴブリンリーダーは、樹の盾と鎧で、そこそこ強力な装甲を持っているようです。まだ元気そうです。
A「なるほど」
――ターンは巡って、ゴブリンリーダー。攻撃は……命中!
A「やば、これ、終わる」
――(滅多なことじゃあ、ここで負けないバランスなんだけど)
【1D6+2】のダメージ。【ダイスロール:4】。装甲で防ぎきります。
シュバルツ「へへ………あんた、なかなかやるじゃないか」
――たぶん、リーダーもにやっと笑っているでしょうね。「おまえもな!」みたいに。
ゴブリンメイジのターン。ゴブリンメイジは、”アイス”の呪文を詠唱し、シュバルツに使用します。この場合は……【1D6+2】ですね。【ダイスロール:4】。ダメージは6。ノーダメージです。
シュバルツ「いえーい! 盾買ってきて良かったー!!」
――それでは、ヘルディンの攻撃! ……命中判定……失敗! ヘルディンの矢は、明後日の方向に飛んでいきました。
ヘルディン「あれー?」
シュバルツ「もう実家帰ったら? きみ」
ヘルディン「ぐぬぬ」
――それでは、シュバルツのターン。
シュバルツ「【ダイスロール:9】。はい命中。ダメージは……【ダイスロール:6】。ほい、最大値!」
――……はい。それではゴブリンリーダーは、シュバルツの華麗な攻撃を受けて、その場に倒れ伏します。同時に、勝ち目なしとみたゴブリンメイジは杖を捨て、降参するでしょう。
A「はい! だいしょーり!! クリアー!」
――いえ。まだ続きます。
【To Be Continued】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます