第4話 TRPG初心者、策を練る
――さて。
ゴブリンたちから地図を得たあなたたちはいま、二種類の選択肢があります。
一つ。このまま、ゴブリンの巣へと突撃する。
二つ。いったんバオアー村へ向かって、体勢を立て直す。
A「うーん。……こういうのって、どうなのかしら。これが普通のRPGなら、寄り道は大正解ですけれど。ねえGM。このクエストって、制限時間があったりするの?」
――さて。それはどうでしょう。
A「まあ、当然教えてくれないですよねー。……わかった。兵は拙速を尊ぶ、と申します。あたし、すぐにゴブリンの巣を目指します」
――きみ、妙なことわざを知ってますね。了解です。
シュバルツ(A)「ヘルディン。俺、一刻も早くゴブリンの巣を攻略した方がいいと思うんだが、君はどうだ」
ヘルディン(GM)「そうね。ここに死体がないってことは、前にここを通った人たちは、連中に連れ去られたってことになるし」
シュバルツ「そうだな。そーいやそうなるか。事態は一刻を争う、か」
ヘルディン「うん」
――そうしてシュバルツたちは、獣道を進んで行くことになるでしょう。
では、シュバルツ。”五感”判定、難易度は”簡単”です。
A「【ダイスロール:12】 ……お! 最大値だ!」
――なるほど。
それでは、ここでちょっとした、ルールの補足を行う。
ダイスロールを行ったとき、6の目が同時に二つ出たときのことを、”
”
A「へー」
――それとは逆に、1の目を同時に二つ出してしまうと、”
”
A「なるほど。6の目二つで”
――うん。では、話を続けるよ。
五感が冴え渡った結果、シュバルツは、ゴブリンたちが普段出入りに使っているであろう獣道を発見する。……さらにシュバルツは、このような感想を抱くだろう。『どうも、ゴブリンにしては道を隠すのが下手くそだな』と。
A「下手くそ?」
――はい。ゴブリンは本来、もっと痕跡を消すのが巧い種族なのでしょう。
A「なるほどね」
――そうして二人、慎重に森の中を進むこと、三時間ほどでしょうか。
A「うん、……って、さ、さ、三時間!? 疲れ果てちゃうよ! そんなに歩いたらもう、丸一日くらいたっぷり休まないと元気でないよ!」
――そこはまあ、きみみたいな半分引きこもりみたいな娘と違って、シュバルツは冒険者なので。
A「おや? いまの一言、リアルファイトの気配がしましたが?」
――そこはまあ、お互い様ということで。
A「むーっ」
――ええと、話を戻すと、シュバルツとヘルディンの前に現れたのは、一つの巨大な洞穴です。そこは、自然の鍾乳洞に簡単な手を加えられた空間で、ちょっとした砦のような構造になっていることがわかります。中を覗き込むと、松明が点々と配置されていて、暗がりを照らし出していることがわかりました。
シュバルツ(A)「気をつけろ。何が潜んでいるかわからないぞ」
ヘルディン(GM)「ええ、そうね」
シュバルツ「ところでヘルディン、きみ、聞き耳を立てて敵の居場所がわかったりしないかい」
ヘルディン「そうね。いいでしょう。やってみる」
――”五感”判定。難易度は”超難しい”。出目5以上で成功するでしょう。
ここは、GMがダイスを振る。……【ダイスロール:4】 では、失敗。
ヘルディン「うーん。ここからだとちょっと、よくわからないわねぇ」
シュバルツ「はい無能。そのながーい耳は見せかけかい?」
ヘルディン「う、うるさいわね! ちょっと今日は調子が悪いのよ! ぷんぷん!」
――ヘルディンは、耳まで赤くして怒ってますね。
A「おじさんの口から、『ぷんぷん!』とかいうセリフを聞かされるこの……なんとも言えない気持ち。どう表現したらいいでしょう」
――やかましい。
シュバルツ「ここで引き下がっては冒険者の名折れ。先へ進もう」
――そうしてシュバルツたちは、ゴブリンの巣の中を進んでいきます。
洞窟の中は薄暗く、キイキイと得体の知れない夜行動物の鳴き声が響き渡り、足場も悪い。
ですが、ゴブリン特有のすえたような臭いがするので、その場所がやつらの住処であることは間違いありません。
”五感”判定。難易度は”難しい”で。出目7以上で成功です。
A「ふーむ。また、ヘルディンにやってもらうというのは? 彼女の方が数値が高いし」
――お助けキャラの行為判定は、短い時間に連続して行うことはできません。
A「はぁい。【ダイスロール:5】。うん。失敗」
――では、シュバルツは何も気づくことはありませんでした。
ただ、洞窟の奥の方から、誰かのうなり声のような音が聞こえています。
二人が先へと進んでいくと、いまいるこの洞窟は、通路に面した四つのフロアに分かれていることがわかります。
各部屋は、手前から順番に、
部屋A(木の扉)
部屋B(木の扉)
部屋C(鉄の扉)
部屋D(ひときわ大きな鉄の扉)
という感じです。
どの部屋から探索しますか?
シュバルツ「部屋Aから順番に探していこう。ヘルディンはどう思う?」
ヘルディン「そうね。それでいいんじゃないかしら」
――そうしてシュバルツが部屋Aを開けると、そこはどうやら、武器庫になっているようです。
シュバルツ「オッホ! やった!」
――とはいえ、そこにある武器は、ゴブリン用の粗末な武具ばかり。人間サイズのものは見当たりませんでした。
シュバルツ「ふーん。がっかりじゃん」
――とはいえ、……これはあなたはそこで、”治癒ポーション”入りの瓶が三つ、手に入るでしょうね。
シュバルツ「ふーん。ラッキーじゃん」
――そこでできることは、以上のようです。
シュバルツ「よし。ではこの部屋の武器を、焼き払ってしまおう」
――焼き払……えっ、武器庫を、ですか?
A「うん。邪悪な動物の武器なんて、全て燃やした方がいい。それに、”冒険者セット”には、油壺とほくち箱があったでしょ? ほくち箱ってたしか、火打ち石とかが入ってる箱、ですよね?」
――おや。よくご存じで。
A「ふふーん。さっきググったんです」
――なるほど。了解しました。
ええとでは、シュバルツが火打ち石と油で武器に火を放つと、ゴブリンたちが一生懸命集めた粗末な武具は、めらめらと燃え始めました。
A「よしよし」
――しかし、燻る煙が洞窟内に立ちこめていき、危険を察知したゴブリンたちが、ギャアギャアと叫びます。シュバルツの行動は、結果として部屋Bにいるゴブリンたちをおびき寄せる結果になったようですね。
シュバルツとゴブリンは、廊下で鉢合わせになります。戦闘です!
シュバルツ「ふん。――計画通りだ!」
ヘルディン「もー! うそばっかり!」
【To Be Continued】
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