●CREAM「FRESH CREAM」(Polygram)

クリームは66年から68年にかけて活躍したグループだから、もうオールディーズみたいなものだが、そのサウンドは依然として新鮮さを失っていない。まさにこのアルバム・タイトルのように。


クリームの凄いところは上げていったらキリがないが、ブルースを型にはめず、さまざまなアレンジを加えて、革新的なポップ・ミュージックに仕上げていったところが意外に言及されていないように思う。


その到達点がアルバム「クリームの素晴らしき世界(Wheels Of Fire)」であろうが、その萌芽はすでにデビュー・アルバムである本作に見ることができる。全11曲中、5曲がスタンダード・ブルースというコテコテ状態なのだが、聴いてみるとさほどでもない。ライブとは違った、ヴァラエティ豊かな編曲の賜物であろう。


クリームの代表曲といえば、なんといっても「スプーンフル」である。ライブでも名演を残しているが、コンパクトなスタジオ録音版でも、ジャック・ブルースの熱唱とクラプトンの粘っこいソロが聴ける。


「猫とリス」は、知る人ぞ知るマルチ・ミュージシャン、ドクター・ロスのカバー。ブルースは得意のハープをご披露。


「フォー・アンティル・レイト」はかのロバート・ジョンスンの作品。シビアな歌詞の割りに妙に陽気なカントリー調の曲。あまりにも有名な「クリームの素晴らしき世界」収録の「クロスロード」とはガラッと趣きを異にして、リラックスした感じの演奏である。


「ローリン・アンド・タンブリン」はマディ・ウォーターズの代表曲。ベースレスでブルースがハープを吹きまくる、きわめつけの熱演。「ライブ・クリーム」にも収録されている。


「アイム・ソー・グラッド」はスキップ・ジェイムズの作品。ジンジャー・ベイカーを加えた三声コーラスが聴ける、珍しい曲。デビュー・シングル「包装紙」もそうだが、クリームは米国市場を相当意識しているようで、コーラスやピアノの使い方に英国のグループらしからぬアメリカンっぽさがぷんぷんと漂っている。


この66年発表の1枚が、ブルース・ブームの後押しにきわめて大きな役割を果たしたのはいうまでもない。

(2000.11、原文ママです)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る