●LED ZEPPELIN「LED ZEPPELIN」(Atlantic)

ヒンデンブルグ号炎上写真のジャケットといえば、だれでも知ってるZEPのデビューアルバム。


このアルバムから、ハード・ロックが誕生した!といっても言い過ぎではない、名盤中の名盤だが、ここには実にコテコテのシカゴ系ブルースが3曲も収録されている。「ユー・シュック・ミー」「君から離れられない」「ハウ・メニー・モア・タイムズ」がそれ。最後の一曲は一応オリジナルということになっているが、後に上げる理由により、既存ブルース曲を換骨奪胎したものといえそうである。


「ユー・シュック・ミー」「君から離れられない」は、シカゴ・ブルース界のゴッドファーザー的存在であった作曲家・ベーシスト・プロデューサー、ウィリー・ディクスンのペンによるもので、それぞれ、マディ・ウォーターズ、オーティス・ラッシュというシンガー/ギタリストによってヒットした名曲である。


ともに、頭がクラクラするような、異様に熱っぽい歌唱・演奏が印象的。ZEPのロバート・プラントも、自慢の超高音ヴォーカルで彼らにひけをとらぬ熱演を聴かせている。


残る「ハウ・メニー・モア・タイムズ」は、ZEPのオリジナルとはいえ、その執拗に繰り返されるリフは、ハウリン・ウルフの「スモーク・スタック・ライトニン」にみょうに似ているし、中間部でアルバート・キングの「ロージー」そして「ザ・ハンター」の一節が挿入されていることから見ても、既存曲の巧妙なアレンジと言えそうだ。こういう複雑な曲構成は、ZEPのお得意技である。ライブでは、「ロージー」の代わりに、ナッシュビル・ティーンズのヒット曲「タバコ・ロード」を挿入して演奏したこともある。


なお、「ユー・シュック・ミー」は第一期ジェフ・ベック・グループ(ロッド・スチュアートvo、ロン・ウッドb、ミック・ウォーラーds)もレパートリーにしており、実はベックが先にやっていたのをペイジがちゃっかりとパクったという、いかにもペイジらしいエピソードがある。自分たちよりペイジの新グループのアルバムのほうが売れ行き良好なのを見て、ベックは内心穏やかでなかったらしい。


いずれにせよ、ヤードバーズ時代の黒人ブルースの模倣から脱して、白人にしか出来ないサウンドを創り出したことでZEPはエポック・メイキングな存在となったのだが、このアルバムは彼らのルーツを知るうえで貴重な資料でもあるといえよう。

(2000.11、原文ママです)

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