背中を押されて



 私は世界が崩壊した事を認められなかった。


 だから、殻にこもった。


 皆と同じように、虚空に消えてしまったあの人達と同じように。


 世界に囚われようとした。


 でも、追いかけてたどり着いた先で。

 彼らは私の手をとってはくれなかった。


 優しく背中をおされた。


 目の前には世界の出口。


 私は涙を浮かべて「ありがとう」と「さようなら」を告げた。


 背後で、世界が崩れる音が耳に届いた。


――かつて救世主一人に「全て」を背負わせた者達がいた。


――彼らはその報いを受けて、滅びつきた。


――しかし、時を経た今。彼らは背中を押す、「救世主」と。そして「救世主を救いに来たあの人」の背中を。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

詩集 皆だけが消えた世界 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ