背中を押されて



 私は世界が崩壊した事を認められなかった。


 だから、殻にこもった。


 皆と同じように、虚空に消てしまったあの人達と同じように。


 世界に囚われようとした。


 でも、追いかけてたどり着いた先で。

 彼らは私の手をとってはくれなかった。


 優しく背中をおされた。


 目の前には世界の出口。


 私は涙を浮かべて「ありがとう」と「さようなら」を告げた。


 背後で、世界が崩れる音が耳に届いた。


――かつて救世主一人に「全て」を背負わせた者達がいた。


――彼らはその報いを受けて、滅びつきた。


――しかし、時を経た今。彼らは背中を押す、「救世主」と。そして「救世主を救いに来たあの人」の背中を。


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詩集 皆だけが消えた世界 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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