第4話 第七魔術研究室
「流石にこれは困ったよなぁ……。これからどうするかな」
先程ラウスから投げ渡された解雇通知書を眺めながら、俺は他の扉と違ってボロボロな木の扉の前にやってきた。
この扉の奥こそ、ある意味問題児達の集まりであり、俺が室長を務めている第七魔術研究室なのである。
「おーい、戻ったよー」
「センパイ、おかえりなさーい。今日はいつもより遅かったですね」
通知書をしまいながら部屋に入ると、大人1人が余裕で寝転がれるくらい大きな黒のソファに寝転がったウェーブのかかった茶髪の美少女に出迎えられた。
彼女の名前はカティア。2人しかいない俺の部下の1人である。
「……って、どうしたんですかセンパイ。なんかとっても疲れた表情してますけど」
「あれ、そんなに顔に出てた? まぁ、お城に行ったら色々とあってねー……」
思っていたよりもひどい顔をしていたのか、ソファから体を起こしたカティアに心配をされる。
エレオノーラ様にも心配されたし、そんなに今の俺は分かりやすいくらい酷い表情をしているのだろうか。
大量の書類の山が置かれた自分のデスクにのろのろと座ると、そのすぐ近くでコーヒーを淹れていた緑髪の少女からも声を掛けられた。
「呼び出しはいつもの苦情ではなかったのですか? 室長のその酷い表情を見ると、いつもと違ったというのは一目瞭然ですけど」
クールな雰囲気を放っている彼女の名前はリサラ・グラスフィール。
明るい緑色の髪を腰付近まで伸ばした美少女で、俺やカティアと違ってとっても真面目な俺の部下その2である。
「いやぁ、それがさ〜。この研究室、明日で解散だぞって宰相から言われちゃってねー……」
「ふーん、解散ですか」
「はぁ。解散ですか」
イスの背もたれに寄りかかりながら軽い感じで2人に伝えると、あまりよく分かってないのか2人からはポカンとした反応が返ってくる。
「……へっ?」
「……はい?」
それからほんの少し間を置いてから、言葉の意味を理解したのか2人は可愛らしい声を漏らし、俺の方に慌てて駆け寄ってきた。
「ちょ、ちょ、ちょっとどういう事ですか室長!?」
「そーですよセンパイ! 解散ってどういう事ですか!」
クールな雰囲気を投げ捨てたリサラにガッと胸ぐらを掴まれて、ぐわんぐわんと視界が回るほど思い切り揺さぶられる。
「ま、待って! ちゃんと説明するからちょっと落ち着いてリサ……るぁっ!?」
「これが、落ち着けるわけ、ないじゃないですか! 早く、早く納得のいく説明をしてください!」
しかし、俺の言葉など全く聞こえていないのか、リサラは俺の体をガクンガクンと揺らすのを止める気配がない。
「うっ! ぶえっ! ちょ、ぐるし……!」
「だいたい、いつもいつも室長は大事な事は黙ってて──!」
く、首が絞まって息が……!
あっ、ヤバイ。世界がぐるぐるして意識が遠のいてく。あ、もう、何も考えられな……。
そして、プツンと糸が切れたように俺はカクンと意識を手放したのだった。
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