12
乾と心君と話せないまま1週間が過ぎた。
乾は朝学校に来ると、いつも通り教科書を開いて読んでいた。
今は音楽の教科書を読んでいるみたいだった。
乾に構ってほしくて、乾が読んでいる本を盗み見している自分が嫌になって、俺も習ったかのように教科書を読み始めるが、大して内容は入ってこないし、それに面白くなかった。メモ帳には書く事がなく、心君はいつの間にか乾にすり寄っていて、乾はそれを邪険に扱いながらも話していた。
俺はそれを休み時間の度に見るのが嫌になって、教室をこっそり抜け出して、トイレに何度も言った。一人になった途端、クラス連中の視線が刺さって来るようで体育の時間はペアが余った奴を見つけて、なんとか耐えていた。毎回嫌そうな目で見られるのが嫌だった。
一週間が途端に辛くなっていった。乾と話していたあの一週間が長く感じた。
どうしてだろう。どうして。。。
家に帰ると、俺の顔を見て心配した母親が気を聞かせてくれた。
そうだ、初めて学校の友達が出来て、一緒に遊びに行く約束をした事を話していたから。それから週があけて、俺が落ち込んでいるのをみて、何も思わないはずがないよなと思った。そんな思いに気が付いていながら俺は、何もできなかった。
あっという間に自分が勝手に傷ついて、落ち込んでいるだけで、誰も何も悪くないのに、なんで、こんなに振り回されているんだろうと、枕を自分のベッドに投げつけた。情緒が不安定すぎる。本当にこんなんでいいのだろうか。と思いながら自分の顔を鏡で見ると、くまがひどかった。
2回目の週末が終わり、3週目の学校生活が始まった。
土日は何もする事がなく、あんなにうきうきしていた俺の思考は全てマイナス思考に傾いた。こんなに、自分が経った一言で揺さぶられる人間であることを知ら閉められるとは思わなかった。自分を客観視して、自分がした行いや、過去自分がなぜ友達を作ってこなかったのか、過去、心君に乾との関係について打ち明けられた後に、なぜ言い返さなかったのか、乾の行動に対してなぜ拒絶したのか、あの時どうすればよかったのか、一人で問答を繰り返していた。
ガラスのハートという言葉を馬鹿にしていた自分を恨んだ。
朝学校に行くと、心君が俺の隣に座っていて、「そろそろだな」と声を掛けてきた。
俺は何も答える気力がなく、不気味な心君の予言の意味に恐怖を感じて、朝のHRが始まる前だというのに、保健室に向かおうとした。
そのときに、lineがなった。誰も交換先のないlineの通知が乾からのlineを教えてくれた。スマートフォンを開いて、俺は見てしまった。
「今週末、あなたの事を教えて下さい」
俺はその場で固まった。廊下の真ん中で、遅刻寸前の他のクラスメイトが俺を邪魔そうに避けていった。そんなのがどうでもよくなるくらいに、俺は乾のlineに心が奪われていた。
心君の予言の言葉など、どこかに飛んで行っていていた。
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