14 マリス、圧倒的な力
「ふん、よく頑張ったがとうとう終わりのようだな?」
「うるせぇ……まだ、終わっちゃいねぇ……!」
尽きぬ闘志で戦おうとするスクトであったが、スーツが先に音を上げた。
全身から火花を上げながら膝をつく彼を見据えながら、アロガはあざ笑う。
彼へ止めを刺すべく、アロガは長刀を構え力を集中。その刀身に、赤黒い稲妻が迸る。
「ならばその闘志ごと、叩き斬ってくれる!」
「死ねぇ!ブラッディクレセント!」
そしてそれを縦へ勢いよく振るい、打ち出した。
魔力を伴った真紅の衝撃波は、三日月状となって地面を抉りつつ、スクトへ迫る。
「ちっ……畜生……!」
動けない自分を呪い、吐き捨てるスクト。
もはやこれまでか?最悪の光景が広がろうとした――その瞬間であった。
「何だと……!?」
「……」
彼の眼前で爆発が起こり、煙が巻き上がる。
煙が晴れた時、彼はその目を丸くした。
そこには未知なる純白の戦士――マリスが立っていたためである。
「何だ、貴様は……!?」
突如として現れた乱入者に戸惑いを隠せず、呟くアロガ。
彼は一瞬考え込むと、言う。「まさか、あの小僧か……?」と。
さて、目の前の相手の出す答えは――?
「Arroga……」
マリスは人差し指でアロガを指差すと、機械音声のような声で呟いた。
そして――
「You will be……die」
無情な死の宣告を、彼へと下した。
「フン、笑わせる。死ぬのは……貴様だ!」
しかし彼は怯まない。標的をマリスへと変え、自慢の長刀を大きく振るう。が――
「ぐ……!」
その攻撃はやすやすと受け止められてしまった。
不動のまま左腕を軽く曲げ、長刀を防いだマリス。彼は右手でその刀身へ触れると――
「《Analyze》」
「何……!?」
すぐさま《分解》を発動した。瞬く間に長刀は粒子となって崩れ、虚空へ消えてゆく。
そんな光景を目の当たりにし、アロガの声色からは余裕が失われた。
後ずさり、距離を置こうとする彼だったが――
「が!あぁ……!」
逃がさない、とばかりに伸ばされたマリスの腕が、今度はアロガの首を掴み持ち上げた。
ジタバタともがき逃げ出そうとするも、脚はただ空を蹴るばかり。
そして、今度はマリスの腕が発光を始めた。再び《分解》を発動したのだ。
「ぐ、うおぉぉああああっ!?」
瞬間、苦悶の声を上げ始めるアロガ。
(な、何だというのだ!?意識が……遠のいていく!バラバラになりそうだ……!)
スキルの効果により、たちまち自身の意識が崩壊していくのを感じたアロガ。
「お、おのれ……っ!」
たまらず、紅い霧となって少女の肉体より逃げ出した。
それを確認したマリスは、少女を離し地面へと寝かせる。
そして――
「You‘re over……」
その言葉とともに、手のひらを開き、天へかざした。すると、
「なっ!?」
紅い霧となったアロガはたちまち動きを封じられてしまった。
そしてマリスが手のひらを力強く閉じると――
「ぐあぁぁぁぁ……あ、ぁ……!」
断末魔の叫びとともに、アロガは跡形もなく爆発四散――死亡した。
「……おいおい、マジかよ……」
一瞬のうちにしてアロガを始末してしまったマリスの姿に驚愕し、呟くスクト。
そんな彼をよそに、マリスはアロガの死を見届けると――その肉体を、ケイトとスマートフォンへと分離させた。融合を解除したのだ。
「ハァッ……ハァッ……やっ、た……」
息を荒げながらそうとだけ言うと、ケイトは地面へ倒れ込み、意識を失った。
――こうして、圧倒的な戦力差の前に傲慢なる転生者、アロガはその野望とともに消え去った。
果たしてこの覚醒がもたらすのは、幸福か、破滅か――?
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