11 黒幕、現る

「おい、ホントにここで合ってんのか?」

「そのはずですけど……マリス、どうなんだ?」

『付近に反応があります。十分に警戒してください』

「だ、そうです」


それから。俺たちは互いに周囲を見張りつつ行動していた。

スマホのナビ機能を頼りにしながら、森の奥へ奥へと進んでゆく。

「随分開けた場所に出たな」

幾度か草をかき分けて進むと、そこには大きな荒れ地が広がっていた。

画面をもう一度覗くと、赤い点は目と鼻の先だ。

この近くに、奴がいる――そう思うと、身体は自然につばを飲み込んでいた。

スクトさんが先行し、俺は背後を警戒する。


「ここにいやがるのはわかってんだ!さっさと出てこい!」

スクトさんが叫んだ、その時。


「!」

「そこか!」

近くの岩の陰から、人影が飛び出すのが見えた。俺たちは一斉にそちらを向く。

スクトさんが銃を構えた、その先には――


「何……?」


7、8歳ほどの少女がいた。


「え、君は……」

俺にもスクトさんにも、この少女に見覚えがあった。

先日、俺に父親を捜してほしいと依頼してきた彼女だったのだ。

しかし、どうも様子がおかしい。

服もボロボロで、歩き方はたどたどしい。今にも倒れそうなぐらい、弱々しい様子であったのだ。

彼女はあの事件の後、無事帰ってきた父親のもとへと戻って行ったはず――それなのになぜ、こんなところに?

もしかして、暴徒騒ぎの中ここまで逃げてきたのか?

けれど、あの年であんな状態のままここまで来れるものだろうか?


「おい大丈夫か!」

俺があれこれ考えているうち、スクトさんが少女へと駆け寄っていく。


そんな時。ふと、俺の脳裏にある可能性が過った。

俺たちはこの場所へ何を捜しに、何を頼りにやってきた?

本体を捜すため、あの鎧の男と同じ魔力を持った反応を追ってきたのだ。

マップの点は奴がこの近辺にいるということを警告している。

そして、俺たちを含めこの場にいる人間は3人――まさか。


「ッ……!スクトさん!近寄っちゃいけない!罠です!」

「何!?」

一瞬の思考ののち、俺は叫ぶ。しかし――僅かに遅かった。

しゃがみ込んだスクトさんを見る少女の口元が、醜くゆがむ。

そしてその手を突き出し、


「ぐあぁっ!」


衝撃波を放って、スクトさんを大きく吹き飛ばした!


「ああ、ぐ……!」

「大丈夫ですか!」

勢いよく木へと打ち付けられ、悶えるスクトさん。

俺は急いで彼の側へ駆け寄り、盾を生成して追撃へと備える。


「ククク、惜しいな。死ななかったか。だがこうも上手く騙されてくれるとは」

醜悪な表情を浮かべながら語るその声は、明らかに少女のものではなかった。

30代ぐらいだろうか――低い男の声。それはあの時の鎧の男とよく似ていた。

間違いない。あれが本体だ。


「まさか私の《支配》から、人々を解放するとはな。《この世界》の技術も、案外侮れん」

「はぁ……!?何訳の分かんねぇこと言ってやがる!」

「お前には聞いていない。だが貴様にはわかるはずだろう?」

激昂するスクトさんをよそに、そう言って男が指差したのは――俺。

「貴様も私と同じ存在、《こちら側》の人間なのだからな……」












「なぁ?《転生者》?」

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