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膝丈のスカートが風でフワリとなびく。


寒いし歩きづらい、と何度目かのため息をつきながら、ユーキは上り坂を睨みあげた。


目的地の〝学校〟は、高台に建っている。


本日は入学日で、同じような新入生がたくさん周りを歩いている。


クリーム色のシャツにボルドー色のベスト。同色のプリーツスカート。


上着はフード付きの、茶色いマント。


膝丈までの編上げブーツ。


これは女子生徒の服装で。


「──ユーキ、一人で行くなって」


後ろから走って追い付いたのは、焦げ茶色のシャツにズボン、ボルドー色のベストを身につけた茶髪の男子。


そっちが良かった、と恨めしげに見返すユーキを、彼は苦笑で受け止める。


マントは脱いで片手に持ち、周りから注目が集まるのを感じつつ、ユーキと並んで歩き出す。


「──レ……レイ、学生寮の方は、もう見た?」


言いにくそうに名前を口にして、ユーキは坂の上に見えてきた建物を見上げる。



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