第260話・女の子のおんぶに乗った後おんぶ交代しない理由

 コンビニ駐車場に着くと、ミキはベンチのとこまでボクをおんぶで運んでくれると、ベンチ前にしゃがんで、ボクをそのままベンチにそっと座らせるように置いてくれた。この優しい気遣いの降ろし方に、ボクはジーンときてしまった。

「私がおんぶするなんてヤダ。私のほうがおんぶしてほしい」と、どちらかというとワガママギャル系なこと言っていた女の子に、こんなに優しく尽くしてくれる面があるなんて。。この面を育てるためには、ボクがこのあともどんどん彼女のおんぶに乗ってゆくことだよね、などと都合の良いことを考えてみたりする。

 ベンチでボクの隣に座ったミキの肩に触れてみると、爽やかだったひらひら衣装は、汗でかなりぐっしょりになっていて、そのことにミキ自身も気づくと

「あーーっ、こんな汗まみれになっちゃってて、どうしてくれんのよー」と。

「ボクをおんぶしてくれたために、ミキが流してくれてる汗。この汗は、ミキがボクを楽ちん楽ちんさせてくれた証だから、愛おしいよー」と言いながら、汗でびしょ濡れのミキの首筋に軽くキスをした。

「あっ、勝手にキスしたわね」

「ごめん、つい。。ミキの味がしたよ、塩味ぃぃ」

「キスしたのは許すから、ここから先は、私をおんぶしてよ、もう疲れたから」

「いや、おんぶは交代しないほうがいいよ」

「なによ、その自分勝手な論理」

「ここでおんぶ交代したら、ボクとミキは、対等な交代おんぶごっこしただけになっちゃう。でも実際には、ミキは70キロのボクをおんぶ。ミキは48キロくらいかな? だとしたらボクは48キロをおんぶと、大きな差がある。なのに交代すると、対等になっちゃうよ。それはイヤでしょ?」

「なんだかよくわかんないけど、交代したからって対等はへんよ」

「だから交代はしないでいこう。この先もボクが乘る、ミキはおんぶして歩いて」

「もうやだー」

「やだーって言う女の子のおんぶに乗りたくなっちゃった。お願い。。どうしても

イヤだったらすぐに降ろしてもいいから、ちょっとだけでもいいから、もう一回だけ、おんぶして、、、お願いですぅぅぅぅ」

「まったくもう、すぐ降ろすからね」と言いながら、ミキは身構えてくれた。女の子って、なんでこんなに優しいんだろ。これだからボクは女の子大好き・・。

 ボクはやや高めにジャンプして、ミキの腰ラインより上の高い位置に飛び乗ると、なんとも安定した良い位置に乗れたではないか。

「さっきよりも、良いおんぶだね」

「良いおんぶって、なんなのよ」

「乗ってるボクが疲れない、乗り心地のいいおんぶ」

「まったく、どこまでも自分勝手な価値観の人よねー」

「でも、おんぶしてるミキにとっても、さっきのおんぶよりも楽なんでは?」

「そういわれればそうかも」

「初回よりも二度目のほうが疲れてるはずなのに楽になってる。これは、ミキの身体が、おんぶという運動を習得して、おんぶしてる側にとっても、良いおんぶを身体で

覚えつつあるという・・」

「なにがいいたいのよー、もう降ろすよ。うんちく言ったって重いことには変わりないんだからー」

「えっちょっと待って。。せっかくミキの身体が今、良いおんぶをインプットされてるんだから、このまましばらくおんぶして歩いて、良いおんぶガールとしての姿勢や力の入れ方を完璧に身体に覚え込ますチャンスなんだし」

「私、クロさんのおんぶガールになりたいわけじゃないし、こんな重労働もうイヤ」

「重労働イヤって気持ちはわかるよ。でもこんな重労働をできる女の子っていう、

能力としてみると、ステキな女性なんだから、能力開発って観点から、70キロの

ボクを駅までおんぶして歩こうよ」

「歩こうよじゃないわよ。クロさんは能天気に乗っかってるだけでいいけど、歩かされてる女の子は大変なんだから」と言いつつも、ミキは歩き始めてくれている。これは、お願いされたら断れないおんぶガールとしての本能が開花したか、そう思うと

ボクはおんぶ上でニンマリ。

「おんぶするんてイヤ。私のほうがおんぶしてもらいたい」という女の子のこの開花だとしたら、この悦楽度合い、ニンマリ度合いは、なんとも最高すぎて、今こうしてミキのおんぶに乗ってることの幸せ指数も急上昇だよ、ありがとね。

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