第259話・おんぶガールの才能ある女の子に乗って指導
上げ底靴でゆっくりとした歩調で歩いてくれてる春の爽やかおんぶガール。とはいえ、自分がおんぶガールをさせられてることに対する文句を言いながらのおんぶってところが、上に乗って、楽ちん楽ちんさせてもらってるボクとしては、女の子のそれらの言葉に、言葉萌えしてしまう。
「こんなの重いし疲れるだけだから、もうおんぶは終わりにして。。降りてよー」
「ヤダよ。女の子のおんぶに乗ってんのって気持ちいいし幸せなんだから、その幸せを手に入れてるボクの・・、ボクの幸せを奪わないでっ」
「なによその幸せって。私のこの重労働の苦痛の上に成り立ってる幸せじゃないですか。自分の幸せのために女の子を犠牲にしないでくださいよ」
「犠牲になんかしてないよ。キミからなにかを奪ってるわけではないでしょ。逆に、ボクのすべてをキミにあげちゃう。ボクはキミのものだから、キミの好きなところへ持ってっちゃっていいよ」
「いらないよー、こんな重いの」
「あげるー」
「いらないー」
「ボクのすべてをあげる」
「いらないよー」
こんな感じでボクたちは、仲良しのバカップルっぽくなってきた。よし、この流れでいけば、この明るいノリの爽やかな女の子を、今後の長い期間にわたってつきあえるボク専用のおんぶガールに育て上げられるかもしれないな、と彼女の背中の上で、ほくそ笑んで、にんまり。
「ボクの身体がズリオチしてるから、一度、腰を使って、ボクの乗り位置をポンっと跳ね上げてみてよ」
「うん」と言うと、ポンっと跳ね上げてくれ、ボクの乗り位置は、乗り心地のよい高い位置に収まった。ボクの両足も女の子の腰クビレを挟めるところに。
「そうそう。これが、イイおんぶというヤツなんだよ」
「イイおんぶってなんなのよ」
「乗ってるボクにとって乗り心地がよくて、楽に乗ってられるおんぶだよ。上に乗ってる者の身体がズリオチすると、乗ってる側は両手でぶらさがる感じになるんで、
疲れるんだよ」
「おんぶさせられてる私はその何十倍も疲れることさせられてんのに、乗ってる人が、疲れるんだよ、ってなんなのよ・・もう」
「おんぶの目的は、上に乗ってる人を楽させることだろ。だから、上に乗ってるボクを疲れさせるのはダメなおんぶだってのはわかるよね。だから、おんぶしてる女の子は、上に乗ってる男が楽に乗れてるかを常に第一に配慮してくくれなきゃ。おんぶしてる側が疲れるのなんかはあたりまえのことだから、おんぶガールちゃんは、自分が疲れるかどうかなんかは二の次にだよ」
「なんかヘン。なんで私がそのおんぶガールとやらをやんなきゃなんないのよ」
「それは、キミの身体やファッションや性格などすべてが、ボクに、こんなステキな女の子のおんぶに乗りたいって刺激しまくりしたからだね。しかも今のこのおんぶのごとく、キミにはイイおんぶをする才能がある。才能を活かそうよ」
「なんか、言いくるめられてるような・・」
「名前なんてゆーの? ボクはクロ」
「ミキよ、なんで名前なんかいきなり」
「おんぶしてくれてる女の子名前も知らないままなんて失礼になるし」
「それよりも、そろそろ交代して、私をおんぶしてよ」
「えーっ交代はやだなあ、ボクはずーっと乗る側でいたいよー」
「なによそのワガママ。女の子が男の人をおんぶして歩くって、どれほど大変なことかわかってないから、そんなこと言う。しかもこの上げ底靴だから、荷物なくても
ヒザの裏側の筋肉がふつうのペッタンシューズよりすごく疲れるのとか、わかってないんでしょ、男の人ってぇぇぇ、もうイヤ」
「わかったよ、あそこのコンビニの駐車場にベンチあるから、そこまでおんぶしてくれたら降りるよ、休ませてあげる」
爽やかな衣装だったミキは、気づいたらもう、汗でびしょ濡れになっていて、ボクを誘惑した肩のひらひらファッションとかもかなりぐっしょりだ。ミキ自身は、
おんぶで必死だから、自分がこんなに汗まみれになっちゃってることに気づいてない。そういうとこが、女の子のかわいい一生懸命さでもあって、キュンとしちゃう。
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