第258話・突然現れた爽やか女の子がおんぶガールに

 春の晴れた日の日差しは明るい。夏よりもそれを感じるのは、夏よりも湿度が低いからかもしれない。そんな爽やかさを感じながら住宅街を歩いていると、春の爽やかな日差しにバッチリとマッチしたファッションの女の子が道路わきのアパートから道路上、ボクの前方5メートルくらいのところに現れた。

 女の子のファッションは、白いブラウスのような薄い半透明な涼し気な生地、その服には、肩や背中にいくつかのひらひらがついていて、これらのひらひらが、ボクに「こんな女の子のおんぶに乗りたい」という気持ちを起こさせた。白い衣装の下は、黒のミニスカート、そしてスラリと長くて白い綺麗な足。靴は黒の上げ底靴。上げ底靴の女の子に70キロのボクをおんぶさせるのは申し訳ない気もするが、ハイヒールよりはいいだろう、、と、もう乗る気でいるボクのワガママさ。

 足の長くてきれいな女性の歩く後姿は、その後ろを歩くボクにとっては「乗って乗ってぇ、私のおんぶに乗ってぇ」と誘惑してきてるようにしか思えなくなってしまうのが、おんぶフェチの病的さ。しかも、背中と肩のひらひらが、これはどう考えても、ボクのためのおんぶガールにしか見えなくなってしまうこの感性をどうしてくれよう。そのうち痴漢罪として立件されてしまうんでは、っつーうしろめたさを感じながらも、ボクは声かけすることにした。

「だって、いきなりボクの目の前5メートルにこんな絶妙なおんぶガールちゃんが

飛び出してきたんだよー、おんぶフェチのボクの目の前に・・」

「えっなに? おんぶガールって?」

「今から、キミはボクのおんぶガール」

「私がおんぶガール? 私を駅までおんぶしてくれるの?」と、はしゃぐ女の子のワイワイキャッキャッ感、春の爽やかさ。

「逆だよ、おんぶガールのキミに、ボクがおんぶしてもらうんだよ」

「えっヤダぁ、私が男の人をおんぶなんてヤダ、私をおんぶして」

「なんで、おんぶするのイヤなの?」

「重いし、疲れるー」

「それは仕方ないよ、おんぶなんだから」と言うと同時に、彼女の背中がわに回り込み、両手を女性の両肩に乗せると、肩のひらひらファッションがボクを強烈に誘惑する。女の子は

「えーっ、ホントに私がおんぶなんですか? 私がおんぶしてほしいのに・・」と不満げに言いながらも、ボクの飛び乗りに対して、身構えてくれた。彼女の身長は160くらいと思われるが、上げ底靴を履いているので、167くらいの女の子に乗る感覚で、ボクは高めにジャンプし、うまいこと、高い位置ポイントに乗れた。

「やっぱり重いよー」

「おんぶガールは、乗ってるボクの両足をちゃんと持たなきゃ」

「うん」と言いつつ、白い細腕で、ボクの太い足を支えてくれた。この態勢になってくれるってことが、女の子がおんぶを受け入れてくれたという大切なポイント。

ヤダヤダと言いつつでも、ボクの両足を両手でホールドしてくれた女の子には、ヤダけどおんぶくらいしてあげてもいいっか、という心がある。

 で今回の女の子も、ボクのおんぶガールとして歩き始めてくれている。この、なんだかんだいっても、女の子ってのは最終的にはボクをおんぶしてくれちゃう現象は何度味わっても、たまらないお得感だよね。今回のように、私のほうがおんぶしてもらいたいのに、っつー側の女の子に、70キロのボクをおんぶさせて歩かしてる優越感が、おんぶで楽させてもらってることに加えてボーナス的だ。

 このボーナスをさらに感じるためにボクは声に出して言うのも好きだ。

「あーーっ、今日はこんなにかわいいおんぶガールちゃんのおんぶで駅まで行けるから、楽ちん楽ちんでハッピーカムカム。楽ちんなだけでなく、女の子のおんぶは気持ちいいし、目線の高さがこれまた優越感なんよね。キミは上げ底靴履いてくれてるから、上に乗ってボクとしては、目線の高さがなんともお得感・・」

「なんだかそういうふうに、お得感とか言われると、ムカつくんですけど。こんな

重いのおんぶさせられてる私は苦しいだけでなにもいいことないのに・・」

「この、上は天国、下は地獄。これが女の子に乗るおんぶの至福なとこ・・」

「ますますムカつくー。なんで私こんな男おんぶなんかしてんだろ」

「それはキミが優しい女の子だからだよ」

「そんなのヤダー」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る